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香川「2試合ともFWが点を取ったのが、何より僕たちには大きい」

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[11.19 国際親善試合 日本3-2ベルギー ブリュッセル]

 2試合を通じて自身は得点を挙げることができなかった。前半30分にはショートコーナーから左足でシュートを打ったが、左ポストを叩く惜しい場面もあった。だが、10月に見せていた険しい表情はほとんど消えた。

 FW香川真司(マンチェスター・U)は「失点を最初に、それもミスからの失点だったけど、チームとしてブレずに、やることをハッキリやったのが良かった。その結果、あの1点(同点弾)が生まれた」と胸を張った。日本代表がもう1ランク上に行くための手応えをつかみ取ったような口ぶりだった。

 チームとして良かったと振り返ったのは、前線からの守備と、攻守の切り替えだ。「みんなが攻守の切り替えを素早くやっていたし、チームとしてうまく守備をする時間帯をつくれたのが良かったと思う」。その言葉どおり、ボールを奪われたあとの守備への切り替えは素晴らしく早く、香川自身も時には自陣の低い位置まで戻り、ボールを奪い返すこともあった。

 危機感もバネになった。「先月に2連敗して、危機感であったり、悔しさであったりというのを一人ひとりが感じていた」。そこで話し合ったのが「前線からプレッシャーをかけていくという自分たちのスタイルを、もう一度やろう」ということだった。

 1トップのFW柿谷曜一朗、FW大迫勇也がプレッシャーをかける。2列目はこぼれ球を拾いに全力で走る。そして奪い、あるいはコースを限定する。個の能力ではオランダ以上とみられたベルギーの選手たちが、日本の鋭い出足に圧力を感じている様子が手に取るように伝わってきた。

 90分間をコントロールすることにも成功した。追いつきながらも最後に突き放されて3-4で敗れたコンフェデレーションズ杯のイタリア戦。0-2から2-2と追いつきながら、勝ち越しの絶好機を決められず引き分けに終わった16日のオランダ戦。常勝軍団のマンチェスター・Uで培った勝者のメンタリティーを持つ香川は「勝ちきる力を付けないといけない」と人一倍繰り返してきた。「90分間、精神的にもしっかりコントロールできたから勝てのだと思う」。これこそチームの成長だ。

 オランダ戦で大迫が、ベルギー戦で柿谷がゴールを決めたことにはさらに大きな手応えを感じ取っている。「2試合でFWが点を取ったことが何より僕たちにとって大きい。ただ、もっともっとFWにボールが入らないと怖くない。そこの連係を上げていきたい」

 W杯へ向けて、できた部分、これから突き詰めていかなければいけない部分もハッキリしてきたようだ。「課題は前半のミスからの失点。結果的には今日は勝ったけど、オランダ戦に関してはそれが響いたと感じている。そういうミスからの失点は、こういう舞台では特になくさなければいけない。攻撃に関しては、もう1点、2点と突き放せる強さを求めていきたい」

 モイーズ新体制下のマンUでは開幕から出番のない時期が続いたが、10月からは出場機会が大幅に増え、コンディションも上がっている。能力に疑いのない香川の場合、何より大切なのがコンディション。その部分の憂いをなくしていくことがW杯のカギを握る。

「3月まで試合がないので、所属クラブでそれぞれがやっていくことが必要」。プレミアリーグ勢のそろうベルギー代表を撃破した男には、胸を張って所属クラブに戻ってもらいたい。

(取材・文 矢内由美子)

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