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有終の美を飾る2発、日韓対決制し寿人「Jのプライドもあった」

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[12.12 クラブW杯5位決定戦 蔚山現代2-3広島 豊田]

 エースの2発で有終の美を飾った。サンフレッチェ広島は3-2の逆転勝利でアジア王者の蔚山現代(韓国)を下し、初参戦のクラブW杯を5位で終えた。9日の準々決勝・アルアハリ戦(1-2)に続く2戦連発で大会通算3ゴールとなったFW佐藤寿人は、今季最終戦で今季初の逆転勝利をおさめたことを喜んだ。

「これまでも逆転するチャンスはあったのに、モノにできていなかった。逆転勝利が一度もないままシーズンを終えるわけにはいかないという意地もあった」

 19勝7分8敗の勝ち点64でJリーグ初優勝を果たした広島だが、19勝はいずれも自分たちが先制した試合。先制を許した9試合の成績は3分6敗と、一度も逆転勝利がなかった。ナビスコ杯、天皇杯、そしてクラブW杯でも先制された6試合は1分5敗。Jリーグ王者でありながら屈辱的な数字だった。

 この日は前半17分にオウンゴールで先制を許す展開。それでも同35分にMF山岸智のゴールで追いつくと、後半に佐藤が2得点を決めた。同点ゴールはMF森崎浩司のFKに佐藤が頭で合わせ、GKが弾いたボールに山岸が詰めた形。「頭も決めたかった」と悔やんだ佐藤だが、全3得点に絡む活躍でチームを今季公式戦初の逆転勝利に導いた。

 勝ち越しゴールは後半11分。山岸の左クロスにニアへ走り込み、左足ワンタッチでゴール右隅に流し込んだ。「一番危険なところに入って行って、少し触って、(シュートも)一番いいところに行ってくれた」。そう振り返ると、アシストの山岸とのコンビネーションについても「タイミングが最高だった。ヤマ(山岸)とは中学、高校とジェフのアカデミーから一緒にやっていて、お互いの良さが分かっている」と胸を張った。

 得点後はベンチ前にフィールド選手が集まり、四股を踏んで突っ張りを見せる「相撲パフォーマンス」を披露。「最後に日本らしいパフォーマンスができてよかったけど、もっともっと注目される準決勝とかでやれればよかった」。勝利を喜びながらも悔やまれるのは、やはり準々決勝・アルアハリ戦(1-2)での敗戦だった。

 1ゴールを挙げながら、1-2で迎えた後半36分にシュートを外した決定機。試合直後にも「決めたところより、外したところが悔しい」と唇をかんだJリーグ得点王はこの日も、アルアハリ戦のミスを悔やんでいた。

「リーグ戦は34試合あって、一つのチャンスを逃しても次の試合で挽回するチャンスがある。でも一発勝負で、しかもこういう世界の舞台では、一つのチャンスを逃すことで結果が大きく変わる。(準々決勝に)勝っていればもっと注目された準決勝で試合ができたのに、それができなかった」

 悔しさを押し殺しながら、切り替えて臨んだ5位決定戦。相手は今季のACLを制した蔚山現代だった。ACLではグループリーグで同組だったF東京が1分1敗と勝てず、決勝トーナメント1回戦では柏が2-3で敗れていた。「日本でやる以上、相手がアジア王者だろうが、負けられない。Jリーグの2チームがACLで負けていたし、Jリーグのプライドもあった。ここで勝てたことは、来季のACLに向けてもよかった」と、日本勢として意地の1勝でもあった。

 すでに天皇杯で敗退している広島はこの試合が2012シーズンの最終戦。「このメンバーで戦う最後の試合に勝ててよかった」と胸をなで下ろす寿人は、Jリーグの優勝争いからクラブW杯と続いたプレッシャーのかかるシーズン終盤を振り返り、「クラブW杯ではリーグとは違うプレッシャーもあった。うれしかったし、疲れた部分もある。とにかくゆっくり休みたい」と、率直な思いを吐露した。

「今日は子供がサンフレッチェのスクールに行っていたので、試合は見てないと思うけど、いい報告ができます。久々に家に帰れるので、帰って父親らしいことをしたいですね」。JリーグMVP、得点王、ベストイレブン、フェアプレー個人賞。タイトルを総なめにし、初参戦のクラブW杯では3ゴールを積み上げた。激動の2012シーズン。そのすべてを終えた寿人は、最後にパパの顔になっていた。

(取材・文 西山紘平)

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