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[選手権]守備+攻撃の初V、攻撃偏重の大会で際立った広島皆実の総合力(鹿児島城西vs広島皆実)

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[1.12 第87回全国高校サッカー選手権決勝 鹿児島城西(鹿児島) 2-3 広島皆実(広島) 国立]

 緑と黒の縦じまのユニホームが、選手権の歴史に新たな1ページを刻んだ。雄たけびを上げながらピッチ上で飛び跳ねるイレブンに、交代で下がっていたFW金島悠太(3年)や控え選手が次々とベンチから飛び出してはチームメイトに抱きついていく。広島皆実(広島)が初の栄誉に輝き、広島県勢としても41大会ぶりとなる優勝を成し遂げた。

 広島皆実と言えば、守備。そんなイメージを吹き飛ばした。スーパーエースFW大迫勇也(3年)を擁し、準決勝までの5試合で27得点という爆発的な攻撃力を誇る鹿児島城西(鹿児島)に真っ向勝負を挑み、3-2と打ち勝った。ボール支配率でも上回り、シュート数も13対11。MF谷本泰基(3年)は「攻撃が強い相手に打ち勝ったのはうれしい。守備だけじゃないところを見せられた。“攻撃の城西対守備の皆実”と言われていたのは知っているけど、そうじゃないことを試合で見せればいいと思っていた。俺らの方が上だったことを証明できたと思う」と胸を張った。

 もちろん、ベースには伝統の堅守がある。3ラインをコンパクトに保ち、ボール保持者には複数の選手でプレッシャーをかける。大迫勇に入る前にボールを奪うという狙いは、ある程度果たせていた。それでも大迫勇には、皆実の組織的な守備を独力で打開できるだけの力があった。前半20分には4人がかりで止めに行きながら先制のゴールを破られた。2-1の後半17分には再び大迫勇が起点となり、同点ゴールを許した。だが、DF松岡祐介主将(3年)は「点を取れる自信があったから、焦らなかった」と力を込める。「正直、失点は覚悟していた。でも、2失点までなら勝てると思っていた」。攻撃陣への信頼。点の取り合いになっても勝てるだけの目算があった。

 1年時からレギュラーの松岡は3年連続で全国選手権に出場し、全試合のピッチに立ってきた。この日の決勝が実に14試合目。選手権の酸いも甘いも知り尽くした男が「本当の力があるチームだけが勝てる大会。攻撃だけでもダメ。守備だけでもダメ。総合力が上のチームが勝つ」と力説する言葉には重みがある。

 「皆実は守りだけでなく、攻撃もあるということを示したいと思ってやってきた。この国立でそれを発揮できた。広島皆実というチームがあることを全国に示せたと思う」と松岡。この決勝は「攻撃」vs「守備」という構図の対戦ではなく、「個」vs「組織」の対決だった。攻撃偏重のチームが多い中、最もチームとしての完成度が高く、攻守のバランスが取れていた広島皆実。最も優勝にふさわしいチームが栄冠を勝ち取った。

(取材・文 西山紘平)

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