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[高校MOM_30]武南高MF成田悠人(3年)_残り3分に懸けた司令塔

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]

[7.5 JFAプリンスリーグ関東2部6位決定戦 武南高 2-1 佐野日大高 小平]

 ゲームメーカーの強い願いが奇跡的な勝利をもたらした。佐野日大高(栃木)と戦った武南高(埼玉)は後半ロスタイムまでリードを許す苦しい展開。だが足を攣らせるまで戦いぬいた司令塔・MF成田悠人の奮闘もあり、奇跡的な逆転勝ちをおさめた。

 後半29分の被弾により0-1で終盤を迎えた試合。だが、武南の選手は誰一人あきらめなかった。特にその思いをピッチで表現していたのが成田だった。ボールを受けると相手の厳しいマークを物ともせずに前進し、決定的なパスを繰り出す。そして「体力を残すために『残り3分』、と決めていた」という背番号8は、後半終了間際にさらにその攻撃をペースアップ。するとチームは後半ロスタイム、MF野溝怜央の起死回生の同点ゴールで試合を振り出しに戻した。
 そして延長前半9分には成田が右サイドを走る右SB和氣健二へ出した好パスを起点に1年生MF斉藤燿が決勝ゴール。劇的な勝利を飾った。

 成田は豊富な運動量と高いテクニック、そしてピッチの“指揮者”として声でもチームを引っ張るMF。だが、勝利への思いが強すぎるためか、その気持ちの強さが逆にチームに悪い雰囲気をつくり出すこともあったという。だが、総体埼玉県予選でのまさかの初戦敗退後は大山照人監督との対話でチームを励ますことを意識。この日は、リードされていてもチームが冷静にプレーできるような雰囲気をつくり出した。その司令塔に指揮官も「(精神面でも)仕事をしてくれたと思う。期待に応えてくれた」と賞賛していた。

 高校総体は県予選で敗退してしまったため、残された全国のチャンスは冬の選手権だけ。成田は「自分は恩返しがしたい。サッカーをやらせてもらっている親や、時間をいっぱい費やしてくれているマネージャー、そして試合に出られない3年生のためにも選手権に出て国立へ行きたい」と誓う。その前にまずはプリンスリーグ関東1部復帰。「迷惑をかけた2年生や後輩に残したい」と話す成田が、日本航空高(山梨)との1部復帰を懸けた一戦(12日)でも、プレと精神面でも勝利をもたらす存在となる。

(取材・文 吉田太郎)

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