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速攻か遅攻か、パスの出し手と受け手で意識のズレ

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[5.24 キリンチャレンジ杯 日本0-2韓国 埼玉]

 0-1の後半18分、MF中村俊輔に代えてFW森本貴幸を投入したのが、最初の交代カードだった。後半27分にMF本田圭佑、同34分にはMF遠藤保仁もベンチに下がった。中盤の要であり、攻撃の起点となる3人の交代が、試合内容の悪さを象徴していた。

 岡田武史監督は「俊輔、本田、遠藤については、みんなコンディションの問題で代えた。万全のコンディションではなく、途中でかなり落ちてきたという判断で代えた」と説明した。

 左足首痛が完治しない中村俊は体のバランスが悪いのか、キープ中に簡単にボールを奪われ、キックの精度も低かった。本田も守備で奔走するシーンが目立ち、攻撃ではFW岡崎慎司との距離が遠く、相手の脅威になれなかった。遠藤も簡単なパスミスが多かった。

 とはいえ、3人のコンディションが上がってくれば、解決する問題とも思えない。どうやって点を取るのか。その道筋が見えてこなかった。

 MF長谷部誠は「マイボールからの攻撃がうまくいかなかった」と厳しい表情だった。「ボールを奪ってからテンポダウンすることが多かった。ボールを奪ったら早く行かないと。スピードで行ける選手がまだまだ必要かなと思った」。速攻の重要性を説く長谷部の言葉に同調するように、DF中澤佑二も「セカンドボールを拾ってからの早い攻撃が日本の良さ。きれいにつなぐだけがサッカーじゃない。相手陣地に行くまで時間がかかった」と話していた。

 裏を取る動きが武器のFW岡崎慎司、何度かスピードに乗ったドリブル突破を見せたMF大久保嘉人。アタッカー2人の意見も一致している。

 「自分は裏を狙っていたけど、もう少し出してほしかった。無理かなというところでも、出してもらえれば攻撃につながることもある」(岡崎)

 「前にもっと出してほしい。1回ボランチを経由するから、相手はもうDFが整っている。手数をかけすぎ。引いて守られたら日本はそう点を取れるチームじゃない。武器はスピードとカウンター。自分としてはスピードが武器だと思っている」(大久保)

 手数をかけずにシンプルに速攻を仕掛ける。これまでのパスサッカーを根底からひっくり返すことにもなるが、今の日本が世界で勝とうと思ったら、それが現実的なのかもしれない。

 ところが、パスの出し手の意見は違った。遠藤は「ボールを持っていない選手の動きが大事。ひとりひとりの距離が遠くて、出せるところで出せなかった。相手を疲れさせるようなパス回しが必要」と言い、中村俊は「回せることが自分たちの強み。サイドの連動、FWとの連動とか。今まで積み上げてきたものがちょっとずつ消えて、サイドハーフとサイドバックが連動して上がるという今までのスタイルがまったくなくなってしまった」と、あくまでパスをつないで崩す遅攻にこだわりを見せた。

 中村俊は1トップにも限界を感じているようだった。「2トップだったら1人が引いてという感じで、タマ(玉田)とかすごい引いてきて組み立てに参加するというのがあったけど、それができなくなっている」。さらにトップ下に入った本田についても「(本田)個人としてはあそこ(トップ下)が一番やりやすいんだろうけど、ボールの回りは前より消えている。見ないでもボール回しができる感じがないし、消え始めている」と疑問を投げかけていた。

 速攻か、遅攻か。結果が出ないことで、選手間の意識にもズレが生じてきている。

<写真>精彩を欠き後半途中で交代となったMF中村
(取材・文 西山紘平)

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