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ジャブラニも関係ない、遠藤が芸術FKで"二刀流"をアピール

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[6.24 W杯グループリーグE組 日本3-1デンマーク ロイヤル・バフォケング]

 完全に裏をかいた。前半30分、ゴールほぼ正面の位置で獲得したFK。ポイントに立ったのはMF遠藤保仁とMF本田圭佑の2人。遠藤の右足か、本田の左足か。角度的にはどちらが蹴ってもおかしくない。しかし、相手GKは明らかに本田の左足を警戒していた。

 13分前に本田に決められた弾丸FKが脳裏に焼き付いていたのだろう。GKのポジションは日本から見て明らかに左寄りだった。ガラ空きの右サイド。遠藤が右足で狙うには絶好の“穴”だった。

 「(本田)圭祐を警戒していたと思うし、分析でそんなに動かないGKということだった。壁も甘かったので、ある程度スピードがあって、壁さえ越えれば入ると思っていた」

 きれいなカーブを描いたボールはゴール右隅に吸い込まれた。投げキスをし、右手人差し指を天に向けた。ベンチ前で待つ控え選手の輪の中へ飛び込み、チーム全員で喜びを分かち合った。

 どちらが蹴るか。2人の意見はすぐに一致した。本田は「蹴っていいかヤットさん(遠藤)に確認したら、ヤットさんも蹴りたいということだった。僕が1点取ってなかったらケンカになっていたかもしれません」と冗談めかしながらも、「試合が終わって、味方は全員、俺が蹴らないと分かっていた。相手も俺を警戒していたから」と狙い通りだったことを明かした。遠藤も「圭祐は1本目決めていたので。自分はまだ直接蹴ってなかったので1本蹴りたかった。圭祐もすんなり譲ってくれたので、お互い決められてよかった」と話していた。

 世界の名だたるFKの名手たちが苦しんできた。軽量化されて開発されたW杯公式球「ジャブラニ」。特に高地の試合では、直接FKもミドルシュートもボールが伸びすぎてゴール上に外す場面が何度も見られた。そんな“難球”を見事にコントロールしての鮮やかな一撃。「昨日の練習で遊び半分でやっていたときは、ちょっと伸びるという感触があった。極力抑えて蹴ろうかなと思っていたし、そんなに曲がらないので、外れてもいいのでギリギリを狙おうと思っていた。良いコースに飛んだ」と自画自賛だった。

 日本は本田だけじゃない。左の本田、右の遠藤。“二刀流”の武器を世界中にアピールした。「危険なエリアでファールは犯せないと相手の頭に入れておけば、向こうも激しく来れない。相手が脅威に感じてくれれば、そういう意味でも武器になると思う」。この一戦を勝利に導いただけではない。次のパラグアイ戦に向けても重要な布石となる、価値あるFK2発だった。

<写真>華麗なFKを決めた遠藤。こんなに喜ぶヤットも珍しい!

(取材・文 西山紘平)

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