beacon

岡田ジャパンの限界を感じさせたスコアレスドロー

このエントリーをはてなブックマークに追加

[2.11 W杯アジア最終予選 日本0-0オーストラリア 日産ス]

 「素晴らしい試合をしてくれた」。岡田武史監督は試合後のロッカールームで選手にそう語りかけた。勝てばA組首位に立つ最大のライバルとの直接対決。勝ち点3が求められたホーム決戦でスコアレスドローに終わったが、監督も選手もあくまで前向きだった。

 圧倒的にゲームを支配できた。ピンチらしいピンチはなかった。オーストラリアに守備しかさせなかった。それが手応えの根拠だったが、あまりにも楽観的すぎるのではないだろうか。

 「W杯予選では負けないことが大事。負けなかったことに価値があると僕は信じている」。左MFで先発した松井大輔はそう語ったが、負けないことが使命だったのはオーストラリアの方だったはずだ。試合前日に全選手がそろい、十分な調整ができなかったオーストラリアはとにかく負けないサッカーに徹した。コンディションが悪かったのは、運動量が少なく、攻守の切り替えも遅かったのを見ても明らかだった。だからこそ、しっかり守りを固め、守備に全精力を傾けてきた。

 MF中村俊輔は「ほぼ90分、向こうを守らせたのは、先が見えたというか、明るい内容」と収穫を口にしたが、「守らせた」のではなく、「守り切られた」と言う方が正確だろう。アウェーで0-0の引き分けは、オーストラリア側からすれば狙い通りの結果だった。昨年10月15日のウズベキスタン戦(1-1)に続いてホームで勝ち点1しか挙げられなかった事実を、もっと重く受け止めるべきだ。

 ボール支配率は日本の62.4%。圧倒的に支配したのは事実だが、シュート数は11本と支配率の割には少ない。ゴール前に再三飛び出してチャンスに顔を出していたFW田中達也はシュートを打てなかった。最後のゴール前で体を張る巨人軍団に対し、日本の小兵アタッカー陣は崩し切れなかった。FW玉田圭司は「攻めてはいたけど、決定機はそんなになかった」と認め、「攻撃に迫力がなかった。スピードを上げるとか、そういう緩急がなかった。外からの攻撃はできていたけど、相手を崩すまでにはいかなかった」と反省点を挙げた。

 その玉田も「やろうとしているコンセプトを変える必要はない。日本の特徴を生かせる戦術だし、これを深めていけば、(W杯)ベスト4も夢じゃない」と言った。速いパス回しと、ボールも人も動くサッカー。俊敏性を生かした日本特有の戦い方は、確かに日本が世界で勝ち抜いていくための唯一の道だろう。だが、それだけでは欧州レベルの相手に勝ち切れないという現実も見せつけられた。

 このまま行けば、W杯予選は突破できるだろう。だが、来年の本大会で結果を出せるのか。オーストラリアのコンディションが悪かったおかげで終始日本ペースで試合が進んだだけに、逆に岡田ジャパンの限界も際立たせる一戦だった。

<写真>試合終了後、握手をする日本代表MF中村とオーストラリア代表GKマーク・シュウォーツァー
(取材・文 西山紘平)

TOP