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[戦評]勝点1獲得も、攻撃は主力任せ

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[2.11 W杯アジア最終予選A組 日本0-0オーストラリア 日産ス]

田村修一の「視点」

 内容はともかく、「負けなかった」ということが大きい。W杯予選は、内容よりも結果が第一。アフリカ大会に半歩近づいたという印象がある。
 オーストラリアの試合運びは予想通り、守備をかためてカウンターで裏を狙ってくる戦い方だった。日本はそれを如何に崩していくか、そこが問われた。相手ほどではなかったが、日本も主力の海外組が直前に集結して、コンビネーションを高めるトレーニングがさほど出来なかったという点は否めない。しかし、攻撃に関していうと、やはりMF中村俊輔(セルティック)ら主力頼りという印象が強い。今日のチャンスも、中村俊が作ったものがほとんど。1に中村俊、2に遠藤保仁(G大阪)、3に長谷部誠(ボルフスブルク)、これが岡田ジャパンのオフェンスの実態だ。果たして、「チーム全体」でどれだけ相手を崩していたのか。特に今日の試合は、点と点が繋がって「線」になっているだけ。中村俊から誰か、遠藤から誰かというようにパスを繋げても厚みがない。岡田武史監督が標榜するように「パスの連動によりチーム全体で崩す」ならば、もっと攻撃に厚みを加えて、「線」ではなく「面」を作る必要がある。
 岡田監督は会見で、「今日のような攻撃の精度を更に高め、回数を増やしていくことで良いと確信した」と言っていた。アジアを勝ち抜くならば、このやり方を突き詰めて行けば良いと思うし、オーストラリア以外には通用するだろう。最終予選の最後の試合となる6月のオーストラリア戦(アウェー)の前には、恐らく日本のW杯出場は決まっているだろう。しかし、このスタイルではW杯本戦で上位を狙うのは厳しい。そもそも、岡田体制になってから、監督がずっと言ってきている「日本らしいサッカー」というものを具体的に説明できる人間はいないと思う。コンパクトにパスを繋げて、持ち前の運動量で相手の裏を突き、サイドを突く云々…。チームには目指すコンセプトが浸透していると話していても、観ている人間はそれをどれだけ理解し、明確に説明できるだろうか。そんな人はいないと思う。
 恐らく、日本はW杯本選に進出する。しかし、予選が終わってからの約1年間が本当の勝負だ。まず求めたいのは、日本代表が目指す、W杯で勝ち進むために実践するべき「具体的」な完成形を明確に示すこと。青写真を超具体的に描き、それを達成するために必要なプロセスを作り、一つひとつ潰していく必要がある。全体的なプレーのクオリティを上げるならば、まずは選手個人のクオリティを上げなければならない。そのために、まずどうするか。そのプロセスを明確に、粘り強く考え、実践していかなければならないと思う。これは重要なことである。

<写真>日本代表MF中村
(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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