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本田はゴール奪取も「個人的には不完全燃焼」

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[10.10 キリンチャレンジ杯 日本2-0スコットランド 日産ス]

 高々と横浜の夜空に右こぶしを突き上げた。MF本田圭佑が有言実行のゴールを決めた。後半44分だった。FW森本貴幸のシュートのこぼれ球を左足でしっかりとゴールネットに突き刺した。前日練習後、ゲームメイクよりもゴールに絡む動きを誓っていたが、しっかりと結果を残した。

 「いいところに転がってきたんで、空いたコースに蹴るだけだった。おいしいところにきた。9割がラッキー。でも、点に絡む仕事をしたいと思っていたので、とりあえず良かった」

 本田は照れ笑いを浮かべながら代表通算2得点目を振り返った。8日の香港戦に岡田武史監督が考える現状のベストメンバーが出場し、この日のスコットランド戦は、新戦力、控え組のテストの位置づけだった。まして右MFのライバル、MF中村俊輔が不出場。結果を残してアピールしたかった。たしかに、ラッキーな形でのゴールだったが、指揮官、6万超の観衆に存在感を見せ付けた。

 FKでも魅せた。後半19分、ゴール中央やや右の位置。本田は短いステップから左足を振り抜いた。得意の低くて鋭いブレ球を蹴り込み、相手GKがファンブル。こぼれ球に内田が反応した。内田はシュートを外したが、決定機を演出。持てる武器をいかんなく発揮した。

 この日は前半の序盤は右MFを務め、途中から岡田監督の指示でトップ下に入った。オランダ遠征の時と比べ、周囲との連携も向上。守備面も改善されていた。しかし、本人は満足していない。

 「個人的には不完全燃焼。きょうはリスクを冒すプレーが少なかった。リスクを冒す形をもっともっと取りたかったのが本音。貪欲にいく必要がある。相手が(守備的に)下がっていたのもあるけど、(ゴール前の)5m、10mのところで仕掛けが少なかった」。スコットランドが引いて守り、ゴール前のスペースが狭かったこともあるが、本田は自身の持ち味と自負する積極的なドリブル突破があまり出せず、不満を口にした。調子が悪かったわけではない。そこには“ジレンマ”が隠されている。

 オランダ遠征で、本田はまだ“岡田サッカー”に慣れていないことが浮き彫りになった。本田がまだチーム戦術に合致していない部分と、岡田監督をはじめ、周囲が本田のプレーを活かすことができなかった両面に問題があった。本田は今回の3連戦で、チーム戦術になじみながら、自身の良さを出すことを課題に挙げていたが、思うようにはいかなかった。イメージしている自身の「理想」とはギャップがあり、納得がいかないという。

 「結果を残し代表での地位も上がった? 1試合で上がるもんではない。20試合、30試合と長い時間を積み重ねて、そういうのが得られる。自分は1戦1戦、目の前の試合をやっていくだけ」。天才レフティーはこんなところでは満足しない。もっと貪欲にゴールを狙う-。本田のジレンマが解消され、理想のプレーができるようになったとき、本田の日本代表での立場はもちろん、日本の力も新たなステップに進む。

<写真>日本代表MF本田
(取材・文 近藤安弘)

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