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U-19落選の悔しさ胸に、横浜FM・小野が意地のゴール。木村監督は“ある度胸”を大絶賛

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[10.9 天皇杯3回戦 横浜FM2-1鳥栖 ニッパ球]

 横浜F・マリノスの17歳FW小野裕二が鳥栖戦で値千金の決勝弾を決めた。後半14分、ゴールから約35mの地点で、横浜FMの大先輩でもある鳥栖FW山瀬幸宏からパスカットして一気にPA左にドリブル突進。角度のないところから右足を振り抜き、ファーサイドに突き刺した。

 小野は「フリーだったので、ゴールしか見てなかった」とゴールへの執念をのぞかせた。そして「角度がなかったので、サイドを狙った。速いシュートでうまく決められたけど、本当はもっとサイドを狙った」と17歳とは思えない高き志が感じられるコメントを残した。

 ただのドリブルからのゴールではなかった。フリーだった大先輩にパスをせず、自ら仕掛けてゴールを奪った。「結果がだめだったら怒られとるのー。俊輔がフリーじゃったのに、たいしなものだ。普通(若い選手はパスを)出すもんじゃが、あのへんがたいしたものだ」と木村和司監督が絶賛したが、実はゴールのとき、PA正面には俊輔がドフリーで構えていた。

 小野は「ゴールしか見てなくて(俊輔が)見えなかったです」と言っているが、展開的にパスをしようと顔を上げてもおかしくない状況だった。日本サッカー界の顔とも言える俊輔に、17歳ならおどおどしてもおかしくない。それでも気にすることなくシュートまで言った。この度胸、ストライカーとしての習性を絶賛したのだ。もちろん俊輔も「高校生にしては凄い」といい、ゴールの瞬間は駆け寄って褒め称えた。

 期する思いがあった。同世代のU-19日本代表が、U-20W杯をかけてアジアの舞台で戦っている。小野は選出されず悔しかったという。今では試合結果をインターネットなどでチェック。「悔しいというより、何とか勝ってほしいと思ってます。ワールドカップに出てくれたら、自分もまた、選ばれるチャンスが出てくるので。今はチームで頑張りたい」。

 素材は一級品で、今のU-19代表に負けないものを持っている。事実、メンバーの一部選手は大学やJ2からだったり、J1・J2問わずクラブでレギュラーを奪えていない選手もいる。しかし、小野は名門マリノスでレギュラーを奪っている。特に昨季のJ新人王・渡邉千真を抑えてスタメン出場しているところは並みの高校3年生ではない。今は悔しさは胸にしまい、クラブで牙を研ぐ。そしてヨコハマから世界舞台を目指す。

(取材・文 近藤安弘)

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