[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]

[6.7 JFAプリンスリーグ北海道第4節 北海高 2-0 旭川実高 室蘭市入江運動公園]

　北海高・島谷制勝監督の檄が彼を生まれ変わらせた。昨年、高校選手権のメンバー選考の際、リストには『松井渉』の名前があった。彼は視野が広く、抜群のキープ力とパスセンスを誇る、島谷監督が大きく期待を寄せる選手だった。しかし、選手権直前の彼のパフォーマンスは、どこかパッとせず、低調していた。
　プレーに気持ちが乗っていない。悩んだ結果、指揮官はパフォーマンスの上がらない彼を断腸の思いでメンバーから外した。非情な決断ではあったが、「這い上がってこい」と、この決断の裏には、彼への力強いエールが込められていた。
　この厳しくも温かいエールに、彼は見事に応えた。新チームになると、攻守の要として献身的な守備と、正確なパスでゲームをコントロール。「あの経験でようやく肝が座って一気に成長した。やっぱり人間はきっかけが大事だね」。そう目を細める島谷監督の視線の先には、今日も安定感抜群のプレーでチームを鼓舞する松井の姿があった。

(取材・文　安藤隆人)