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[選手権]観衆12,000人超の名門対決、圧倒的テクの静岡学園が快勝V!:静岡

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[11.14 全国高校選手権静岡県大会決勝 静岡学園 3-1 清水商 エコパ]

 第89回全国高校サッカー選手権静岡県大会は14日、静岡スタジアムエコパで決勝を行い、静岡学園が3-1で清水商に勝利。4年ぶり10回目の全国大会出場を決めた。

 ともに全国優勝経験を持つ名門同士の決勝対決は、川崎フロンターレ加入内定の静岡学園MF大島僚太(3年)や元日本代表MF風間八宏氏の二男でU-17日本代表の清水商FW風間宏矢(2年)といった注目選手たちが競演。好ゲームを期待する12,143人の観衆が会場へ詰め寄せた中で熱戦が繰り広げられた。

 ブラスバンドが奏でるメロディーに合わせて「キヨショー頑張れ!」「宏矢頑張れ!」といった声が飛ぶ伝統の「清商サンバ」に後押しされた清水商が、10年ぶりの全国へ向けて立ち上がりからリズムをつかむ。だが、その声援は静岡学園のゴールが生まれた際の恒例となっている「VI!VA! SHIZUGAKU!」の大合唱にかき消されてしまった。

 前半25分、静岡学園は160cmの“トリックスター”、MF長谷川竜也(2年)が個人技で左サイドをえぐって折り返す。逆サイドから走りこんだMF大橋玄季(3年)が左足ダイレクトでゴールへと流し込んで先制点を奪った。ボウリングのピンに見立てたイレブンを得点者の大橋が倒すという、ゴールパフォーマンスで笑いも誘った静学イレブン。プレーにも余裕の見られる静岡学園は、その後も全日本ユース(U-18)選手権で高校チーム勢トップの4強へ進出させた技で清水商を凌駕した。

 負傷の10番MF前澤甲気主将(3年)がベンチスタートとなった清水商は立ち上がりこそサイド後方のスペースへシンプルにボールを送り、それを拾った風間や1年生FW佐野翼が思い切った仕掛けを見せていたが、2列目の飛び出しなどからサイドまで簡単にボールを運び、そこから徹底したドリブルで仕掛けてくる静岡学園の攻撃の前にDF陣の対応が追いつかなくなった。

 迎えた33分、右サイドでFKを獲得した静岡学園は大島のキックにエースストライカーのFW鈴木健太(3年)が頭で合わせて2-0。前半シュートゼロに終わった清水商は後半開始から前澤主将を投入し、その突破やヘディングシュートで巻き返そうとした。だが勢いの衰える気配を見せずに一方的に攻め続ける静岡学園は後半12分、右FKのこぼれ球を拾ったSB片井拓己(3年)が中央へ切れ込んで右足ミドル。GKが弾いたこぼれ球をCB松本翼(3年)が押し込んで3-0とした。

 川口修監督が「どこからでも点を取る。それが理想のサッカー」と語る静岡学園は前線の選手だけでなくボランチ、SBまでもが次々とドリブルで仕掛けて堅守の清水商を攻略。圧倒的な技術の差を示した。まだまだ点差が開きそうなほど静岡学園の一方的な展開。だが清水商はワンプレーで息を吹き返す。17分だ。スピードに乗った状態で右サイドを突いた前澤主将から風間へパス。PAへ走りこんだ風間のシュートは静岡学園GK一ノ宮聖(3年)が飛び出してパンチするが、セカンドボールに突っ込んできた清水商MF青木翼(2年)とディフェンスに入った静岡学園の大島が交錯。微妙な判定だったが主審はPKスポットを指差し、大島にこの日2枚目となるイエローカードを提示した。

 このPKを前澤が決めて2点差とした清水商はこの後、大きな展開から前澤主将や風間、佐野がドリブルで突進。10人となった静岡学園はそれまでの攻勢がピタッと止まり、清水商の攻撃を受け止める形となった。全日本ユース選手権準決勝(対サンフレッチェ広島ユース)で2-0リードから退場者を出してひっくり返された経験を持つ静岡学園はやや意識が過剰になり過ぎている感があったが、それでも「繰り返さないようにチームとして意識して守った」と振り返るMF星野有亮(3年)や金大貴主将(3年)と松本の両CBら人数をかけて確実に相手アタッカーの突破を防ぐなど、追撃を許さず。3-1で4年ぶりの栄冠を獲得した。

 全国選手権優勝3回を経験している清水商の大瀧雅良監督をして「全国でトップを狙えるチーム」という今年の静岡学園。全日本ユース選手権で存在感を放ったMF篠原研吾やMF廣渡剛太(ともに3年)を故障で欠きながらも10人になるまでは完全に試合を支配していた。総体予選決勝では1-0と辛勝だった清水商との再戦で、自分たちが全国トップレベルにあることを強く印象付けた。
 
 全日本ユース選手権では日本一を獲得するチャンスもあった。ただ準決勝では優勝した広島ユースから2点リードを奪いながらも後半の4失点で逆転負け。金主将は「サッカーの神様が『もっと努力しないといけない』と言ってくれたのだと思う」と振り返っていたが、この悔しさを選手たちは忘れていない。広島ユース戦を負傷欠場したSB伊東幸敏(2年)は「サンフレ戦を取り戻すことしか考えていない。全国優勝しか見ていない」。目標は悔し涙ではなく国立でうれし涙を流すこと。試合後、インタビューを受けた金主将は1万2,000人を超える観衆の前で「目標は日本一」と高らかに宣言した。

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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