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[選手権]「サッカーの神様がもっと努力を、と言っている」高円宮杯全国4強の静岡学園、再び国立へ静岡8強進出

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[10.23 全国高校選手権静岡県大会2次L最終戦 静岡学園 3-1 加藤暁秀 浜松海浜]

 高円宮杯第21回全日本ユース(U-18)選手権4強の静岡学園が23日、全国高校選手権静岡県大会2次リーグ最終戦で加藤暁秀と対戦。MF星野有亮(3年)の決勝ゴールなどにより3-1で勝ち、2勝1分のBブロック首位で決勝トーナメント(8強)進出を決めた。

 2次リーグ突破をかけた一戦で静岡学園は、ベガルタ仙台が注目しているFW鈴木健太(3年)ら主力4人を先発から外し、昨年の全国中学校大会優勝メンバーの1年生MF渡辺準、DF望月大知ら4人を今大会初先発で起用。前半4分にはその渡辺の右FKからDF松本翼(3年)がヘディングシュートを叩き込み幸先良く先制する。

 ただ15分、自陣でのミスでボールを失うと、加藤暁秀FW鈴木涼平(3年)に豪快な右足シュートを決められてしまう。新人戦静岡県大会で初優勝している加藤暁秀はここまで1分1敗。自力で決勝トーナメント進出を決めるためには4点差での白星が必要だっただけに、試合開始から見せていた猛烈なプッシュをさらに加速させてきた。

 「今大会ウチらしさがなかった」(加藤暁秀・野村真司監督)というチームだったが、この日は静岡のライバルたちが怖れる激しい守備が復活。対して、川崎Fへの練習参加が決まったゲームメーカー、MF大島僚太(3年)が「ボールを失う場面が多かったし、簡単に蹴ってしまう場面もあった」と振り返ったように静岡学園は攻撃のテンポが悪く、攻めあぐねてしまう。23分には大島の鮮やかなループパスからFW中西倫也(3年)が決定的なシュートを放つ場面もあったが、リードを奪うことができない。
 逆にボールを奪うと、間髪入れずに一気に縦への攻撃を繰り出してくる加藤暁秀のダイナミックな攻撃の前に、静岡学園は自陣でファウルを犯す場面が増えていった。25分にはMF堀江啓介(3年)の右足FKがゴールを捉え、33分には鈴木の弾丸FKがゴールポストをかすめる。優勝候補にとってあわやの場面が続いた。

 ただ、リズムの悪い展開でも全く慌てる素振りを見せず、実際にその中でゴールも奪ってしまうのが今年の静岡学園。「いつでも取れる」という余裕を含んだ雰囲気が逆に不安でもあったが36分、星野が一撃でその不安を払拭した。渡辺の左FKを加藤暁秀DF陣が中央で弾き返すが、こぼれ球を右足ダイレクトシュート。これがゴール右隅へと突き刺さるスーパーゴールとなった。

 加藤暁秀は球際でのプレーに迫力があったが、静岡学園は決して怯まない。金大貴主将(3年)と松本のCBコンビ、初の右SBで奮闘する望月らが真っ向から対抗。激しさがウリの相手を押し返していく。ミスからDFの背後を取られてFW伊藤憲拓(2年)やFW竹内義能(3年)に決定的なシュートを放たれる場面があったものの、大島、MF廣渡剛太(3年)、2年生MF長谷川竜也らが前に出てくる相手を個人技で難なくいなしてゴールへ接近し続けると、34分に廣渡のドリブル突破から途中出場の1年生MF大村颯士がゴールへと押し込みダメ押した。

 U-18日本代表DF加藤大介(現国士舘大)らを擁し大型チームとして注目を集めていた昨年は、ケガや大学受験などで主力6人が欠場した準決勝で敗退。その反省を生かし、今大会では3試合ですでに20名ものメンバーを起用するなど、川口修監督の勇気を持った選手起用が目立つ。ゴール前での貪欲さに欠くなど決して最高のパフォーマンスではなかったが、それでも苦戦承知の選手起用で堂々のブロック首位突破。指揮官は「物足りなさはあったけれど、『決勝トーナメントでもっと行こう』というものは出せたし、課題を出したかった。2次リーグは非常によかった」と満足げな表情だった。

 準決勝でサンフレッチェ広島ユースに逆転負けした全日本ユース選手権。全国4強へ勝ち上がった余韻からかまだ練習中にスイッチが入りきれてない場面があるという。モチベーションが上がりきれていないのは確かだ。ただ、金主将は「サンフレッチェは優勝したし、自分たちも上取れると思ったけれど、(広島ユースから2点リードしながら)負けたのはまだ甘さがあったから。監督も言っていましたけれど『サッカーの神様がもっと努力しないといけないと言ってくれた』のだと思います」。

 新たな戦いで多くの選手が起用され、競争によってさらに高められてきた部分もある。全国で静学サッカーが通用するという自信を得た一方で、日本一に立てなかった悔しさもある。「自分たちはまだまだこんなもんじゃない」。全日本ユース選手権で敗れた国立への再挑戦。静岡学園はJユース勢から3勝するなど全国を驚かせた全日本ユース選手権以上のサッカーで、再び全国へ舞い戻る。

<写真>前半36分、MF星野(左)のゴールで静岡学園が勝ち越す
(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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