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[選手権]ヒデ同期の指揮官率いる北杜、涙の第3シード撃破!:山梨

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[10.24 全国高校選手権山梨県大会2回戦 甲府東 1-2 北杜 山梨学院G]
 
 第89回全国高校サッカー選手権山梨県大会は24日、2回戦が行われ、第3シードの甲府東が北杜との初戦で敗れる波乱が起こった。

 夏の全国総体山梨県予選3位で、5年ぶりの全国出場を目指しながら敗れた甲府東だけでなく、勝った北杜イレブンも全員泣いていた。1-1で突入した延長前半2分、PAで仕掛けたFWカルデロン・マサシ(3年)がPKを獲得。韮崎高時代、元日本代表MF中田英寿と同期でチームの主将だったという小泉圭二監督(元ヴァンフォーレ甲府)からキッカーに指名されたFW武藤吉哉主将(3年)は「(この場面で)『オレかぁ』と緊張したけれど、決めた方向に思い切り蹴りました」と左足を振りぬく。すると決勝点となるシュートがゴール右上へと突き刺さった。

 ここからの約20分間は甲府東の怒涛の攻撃。中盤に下がった武藤主将、そして最終ラインで必死のディフェンスを見せるCB渡辺俊樹(3年)らが甲府東の青い波を体を投げ出すようにして防ぎ続ける。一瞬でも気を緩めれば、追いつかれてしまっていたかもしれない。だが、ビッグセーブを連発した2年生GK川口晃弘らが見せ続けた「魂の守備」に最後まで穴は開かず。試合終了を告げる笛が鳴り響くと、プレッシャーから開放された北杜イレブンは顔を真っ赤にしたまま涙を流し続けた。
 
 長野県との県境に位置する北杜市の北杜は今年県内大会全てで2回戦敗退。パススタイルのサッカーには定評があったが、それだけでは強豪の壁を突破することはできなかった。9月の組み合わせ抽選会で決まった初戦の対戦校は小泉監督の前任校でもある甲府東。勝つために選択したのは「相手のストロングポイントを消すこと」だった。指揮官は言う。「これまではやることを全部やってきて負けていた。いい内容のサッカーでも負けていた。3年間一緒にやってきた選手たちと何とか勝ちたいと」。それからは甲府東の武器であるクロスとロングボール対策を徹底し、耐えることを強いたトレーニングばかり。だが選手たちは反発することなく甲府東に勝つことだけを考えてきた。

 先に点をとられる訳にはいかなかった。前半からともにビッグチャンスをつかみ合う展開。両守護神の好守もあり、0-0で突入した後半の18分に甲府東FW金森悠多(2年)が右足シュートでついにスコアを動かす。その瞬間、会場の多くは「北杜は健闘で終わった」と考えたかもしれない。
 だが北杜は22分、渡辺の縦パスに反応したカルデロンが強靭なフィジカルを生かしてDFを外すと公式戦初ゴールとなる同点弾。蘇ったチームはFW田邉裕也(3年)のドリブル突破や1年生DF村松大地のロングスローから長身選手がゴールへなだれ込もうとする甲府東の猛攻にさらされながらも、もう得点を許さなかった。

 「ベストゲームをやらないと勝てないと思っていました」という小泉監督。勝ったことで選手たちが満足しても仕方ない、燃え尽きて次戦で負けてもいいと全てを尽くしてきただけに喜びは格別だった。山梨学院や大学生に胸を借りながら取り組んできた1ヵ月半間の成果。まだ次の目標を考えられないという選手たちだが、北杜にとっての財産をひとつでも多く残すためにまた闘志を振り絞って次の戦いへ挑む。

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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