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[選手権]「きょう負けて引退」力認めた駒場が徹底戦術で王者撃破!:東京B

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[11.8 全国高校選手権東京B大会準決勝 都・東久留米総合 1-2(延長)都・駒場 西が丘]

 都立勢頂上決戦は都・駒場に軍配! 第89回全国高校選手権東京都Bブロック大会準決勝で昨年全国大会出場の都・東久留米総合と今夏の全国高校総体に出場した都・駒場が激突。延長戦の末、2-1で制した駒場が13日に國學院久我山と対戦する決勝へ進出した。

 駒場特有の独特のリズムがこの結果をもたらしたのかもしれない。主将の右SB原玄(3年)曰く「ネガティブでポジティブなチーム」。その駒場が昨年王者を撃破した。東京都選抜として国体日本一に輝いているMF佐々木翼(2年)をはじめ技巧派ドリブラーのFW上村将仁、FW徳嶽裕太、MF宗像奎介(全て3年)ら実力者揃う東久留米総合は強敵。対して「自分たちは上手くない。インハイ出場は奇跡」と夏に勝ち取った栄光について笑い飛ばす駒場には失うものも何もなかった。

 相手の方が実力があることを確信しているから迷いはなかった。徹底したのは守ること。サイドを取られてCKを献上しても中央だけは譲らない。「ブロックつくるのはできる。(東久留米総合のように)後ろから飛び出してくるチームとも戦っていた。それでも、いつもならオフサイドが取れるんだけど久留米は上手くて取らせてくれなかった」と山下正人監督が語ったように、東久留米総合は駒場の網をかいくぐってゴールへと迫ろうとする。

 だが相手に長い距離を走らせず、スピードを消した駒場は崩れなかった。「1-0で勝てるか0-0で延長になるか、それともボコボコにやられるか」と指揮官は振り返ったが、逆に後半からは徐々に前へ出た駒場が流れをつかむ。12分に原の右クロスからFW畠中潤(2年)がクロスバー直撃のシュート。その後も全国高校総体優秀選手のMF菅佑也(2年)を起点に畠中の思い切った仕掛けで相手に失点の恐怖を植えつけた。

 対する東久留米総合も上村の右クロスから徳嶽がGKとの1対1を迎えるなどビッグチャンスがあったが、スコアを動かすことができないまま試合は延長戦へ突入。その開始に2枚のカードを切った駒場の策が成功した。前半8分、右サイドからPAへ猛然と走りこんだ途中出場のMF藤原裕太(3年)の足元へ菅がスルーパスを通す。これが必死に戻ってきた東久留米総合DFのオウンゴールを誘った。さらに1分後、クリアボールを拾った菅がセンターサークルのやや外から右足を振りぬくと、ボールはGKの頭上を射抜いてゴールへと突き刺さるスーパーゴールとなった。

 技術で劣っているのは分かっていた。ただ「一番理不尽な走りを耐えてきたのはオレら(笑)」という自負もあった。粘る東久留米総合は後半2分、徳嶽のスルーパスからSB多田和明(3年)が追撃ゴールを突き刺すが、運動量の落ちない駒場からはこの1点がやっと。1点リードを守りきった駒場が2-1で勝利した。

 毎試合前のミーティングで原主将は「あと数時間後には(試合に負けて)引退だから」とほぼ本心の「あきらめモード」で試合に臨みながら勝ち続けてきたという。この日強敵を前に口にしたことはやはり同じ。ただ「きょうはいっぱいの人が見に来てくれている。いっぱい点を取られても下向かないでやることが恩返し」と加えていた。決勝へ向けてもチームからは「絶対優勝」「3点取る」のような威勢のいい言葉は聞こえてこない。ただ自分たちの力を認め、相手に立ち向かうことを徹底したチームは強い。

(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2010

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