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[総理大臣杯]90分同点弾に延長勝ち越し!中京大を逆転した駒澤大が劇的V!

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[7.10 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント決勝 中京大 2-3 駒澤大 長居]

 第34回総理大臣杯全日本大学決勝が10日、大阪長居スタジアムで行われ、初優勝を目指す中京大(東海)と6度目の日本一を狙う駒澤大(関東2)が激突。2-2でもつれ込んだ延長後半4分に途中出場のMF湯澤洋介(2年=矢板中央高)が決めた決勝ゴールにより、3-2で勝った駒大が6年ぶり6回目の優勝を果たした。

 どちらも守備の堅さに定評のあるチーム同士の対戦となった総理大臣杯決勝戦。だが、得点は思ったよりも早い時間に動いた。16分、駒大のスローインからボールがゴール近くで混戦となったところを、内田渉(4年=八千代高)がクリア。それを拾った佐藤和弘(2年=磐田ユース)は、前線に残る1トップ・齋藤和樹(4年=清水商高)にロングパスを送る。ボールを受けた齋藤は、DFと競り合いながらもドリブルで突破。GKをかわすとそのままゴールにシュートを押し込んだ。

 これまで、前半は徹底的に守るというスタイルを貫いてきた中京大。この日も、開始直後は自陣深く守る布陣を敷いていたが、「いつもより相手が引いていたので、間にスペースができた」(ゲームキャプテン・森本良、4年=名古屋U18)ことで早い時間からチャンスをうかがい、先制点の奪取に成功する。一方の駒大は「相手の10番(齊藤)のスピードを警戒しすぎて、安全策のロングボールばかりに頼ってしまった」(主将・金正也、4年=神戸科学技術高)。
 だが、過去5回の優勝経験を持つ駒大が簡単に引き下がるはずはない。長身FW・棗佑喜(4年=丸岡高)の出場停止の影響で不安定だった前線が、失点を喫したことで活性化。1年生FW・山本大貴(ルーテル学院高)がPA内で抜け出そうとしたところを、中京大・森本が止めるがこれはファウルの判定。中京大は駒大にPKを与えてしまう。このPKをMF金久保彩(4年=花咲徳栄高)が左スミにきっちりと決めて、スコアは1-1。試合は振り出しに戻る。

 その後は両チームとも、ロングボールでの攻撃を中心とした激しいボールの奪いあいが続くが、後半13分に中京大が2試合連続ゴールの“スーパーサブ”中村亮太(2年=中京大中京高)を投入。その5分後には、FWの藤牧祥吾(3年=清水ユース)をピッチに送り出し、4-4-2の攻撃シフトに切り替える。その効果が出たのは2分後の20分だった。中盤での厳しい競り合いの中で得たFKを、中村が直接ゴール左スミに決めてスコアは2-1に。準々決勝の福岡大戦でも直接FKを決めた中村の右足で、中京大が再びリードに成功する。

 再度追う立場になった駒大は突破力のある湯澤を投入。彼のドリブルに期待して局面を打開しようとするがうまくいかない。そこで、前線に「高さとスピードはあるが90分は持たない。これがギリギリの時間」というタイミングでFW大塚涼太(4年=花咲徳栄高)を投入。さらにはセンターバックの金正也をトップに上げるなど、猛烈なパワープレーで中京大ゴールを狙う。

 しばらくは駒大のパワープレーもしっかりとブロックしていた中京大だが、駒大の走力とフィジカルの強さがボディーブローのように利いてきたのか、チャンスを作られるシーンが多くなる。そして終了間際の45分、GKからのロングキックをゴール前にあがっていた右SBの酒井隆介(4年=名古屋U18)が競り、落としたボールを大塚が蹴り込んで2点目をゲット。ロスタイム突入寸前の劇的な駒大のゴールで、勝負は延長戦へと持ち越されることになった。

 延長戦に入ると、中京大は交代出場の藤牧、中村にボールを集めゴールを狙うが、正確性に欠きゴールまでは至らない。逆に駒大は「湯澤が全然生きていなかったので、足元にボールを入れろと話した」(秋田浩一監督)との指示が功を奏し、左サイドの湯澤のドリブルを生かした攻撃が爆発。足の止まってきた中京大は、このスピードになかなか対応できない。そして延長後半4分、左SB・濱田宙(3年=市立船橋高)からのボールをドリブルで持ち込んだ湯澤が、そのままゴールをマーク。3-2と逆転に成功すると残り時間を守り切り、駒大が6年ぶり6度目の優勝を手にした。

 あと一歩のところで初優勝を逃した中京大の西ヶ谷隆之監督は「最後の40分くらいのところで、駒大の勝負強さ、フィジカルの強さに勝つことができなかった」とコメント。早い時間に先制点をあげ、優勢な状態で試合を進めるという、これまでない展開にとまどったこともあるが「フィジカル的にもまだまだ。走り負けないこと。そして技術の面でももっとサッカーの質をあげなければ、全国レベルで戦っていけないことを、選手たちも認識できた」。
 一方、常にリードされる展開ながら、劇的な逆転劇で優勝をはたした駒大。秋田浩一監督は「02年~04年に三連覇したときには巻兄弟や深井正樹、赤嶺真吾のような選手がいたが、今年はそこまでの攻撃力はないことがわかっていた」と、この大会を戦い抜いたチームを振り返る。それでも、主将・金を中心としたディフェンスラインの粘り強い守りを武器に、一気に展開をひっくり返す勝負強さを見せた。スター選手がいない分「戦う気持ちが強かった」と秋田監督。ここしばらくは関東リーグでも下位に甘んじていたが、久々の全国タイトル奪還で“関東の強豪“の面目躍如となった。

(取材・文 飯嶋玲子)

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