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湘南が3885日ぶりのJ1勝利。反町監督は古巣からの白星に「新聞ネタになった」

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[3.27 J1第4節 湘南2-0新潟 平塚]

 長かったトンネルを抜け出した。湘南ベルマーレは1999年8月7日の名古屋戦(平塚、4-2)以来、足かけ約11年8カ月、3885日ぶりのJ1勝利をつかんだ。平塚競技場がサポーターの大歓声に包まれる中、選手たちは手を振りながら“ウイニングウォーク”した。

 「粘り勝ちという感じかもしれない。J1でやっていくには、こういう勝ち方のほうがあっている。古巣から初勝利? 新聞ネタになったな。ガッツポーズ? たいしたガッツポーズじゃないよ。無意識に出たかな」

 反町康治監督が安堵の表情をみせた。開幕戦の山形戦には引き分けたが、続く横浜FM戦、広島戦といずれも3失点で完敗。「3月は我慢の月になると思っていた」。戦力を考えると、ある程度の予想をしていた結果だったが、ズルズルいくとJ1初体験ばかりの選手が自信を失う危険性があった。

 それでも、これまで貫いてきた前へ前へ、そして泥臭く走り抜くのスタイルを継続。この試合に向けた週の最初の練習でも、選手を叱責するのではなく、「そろそろJ1に慣れただろ」などと鼓舞した。

 前半20分にはFW中村祐也が縦パスに向け出して先制弾を決めると、後半31分のFW田原豊の追加点もカウンターの流れから。継続してきた前の姿勢が活かされたゴールだった。反町監督も「粘り強くやった結果、足が止まらなかった。これが好機をものにした理由」と選手たちをたたえた。

 指揮官にとっては新潟を率いていた2005年11月27日の名古屋戦(瑞穂陸、1-0)以来のJ1勝利となった。そして湘南のJ1復帰後初勝利が、因縁深い古巣・新潟となった。昨年の11月にもオフを利用して新潟を訪れるなど、いまでも愛着を持つ街。だが、初勝利は因縁や愛着だけでつかんだものではない。

 今の新潟・黒崎久志監督は、2001年に反町監督の下でプレーした経験を持つが、黒崎監督は「はまってしまった」と話した。指揮官の性格だけでなく、MF本間やDF千葉などは自身が発掘した選手で特徴を知っているほか、綿密なスカウティングも敢行した。相手のチョ、矢野の両翼がカギと分析。特にチョの突破を警戒し、左SBだけでなく、左FWの阿部にもチェックさせるなど策略を練っていた。

 「ひとつ勝ったことで、選手に少しでも自信が出てくるのかなと。これを勢いというか自信というか、やってきたことに間違いはないという信頼感とか、そうしたものをこれからのマネジメントにうまく生かしていければいいかなと思う。来週はウィークデーにナビスコ、そのあと埼スタ。浦和のサポーターはみんな勝点3を獲ったと思っていると思うが、そうはさせないように頑張ってきたい」

 順位は最下位18位から12位に浮上。反町監督は今後の上昇を期待した。たしかに、これまでは慣れない“J1の質のサッカー”に戸惑うところがあったは事実。だが、この1勝で“乗る”可能性はある。そこに向けて指揮官は、タクトを振るだけだ。『湘南の暴れん坊』の完全復活に向け、これから勝利を重ねていく。

<写真>湘南の反町監督
(取材・文 近藤安弘)

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