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最少失点を牽引する茂庭、最終節の戦友・前田封じに意欲

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[11.28 J1第33節 湘南0-4C大阪 平塚]

 表情に何ともいえない充実感があった。4得点とゴールラッシュの中、守備陣も集中を切らさずに2試合ぶりの完封をつかんだセレッソ大阪。ACLに望みを残し、4位以上も確定とJ1復帰初年度としては最高の結果を残したが、守備の中心である元日本代表DF茂庭照幸は喜びをかみしめた。

 「この時期にこの順位にいられるのは初めてのこと。最高です。楽しみながらやれてるし、アジアも狙える位置にいる。いい経験ができてますね。ほんと、チームメートや監督に恵まれたと思う。セレッソ大阪に来て良かったと思える1年ですね」

 前FC東京所属の茂庭はドイツW杯にも出場したCBだが、2007年に右肩脱臼で長期離脱。2008年には復活するかに見えたが、コンディション不良や怪我の再発の恐怖心でパフォーマンスを崩し、レギュラーをはく奪された。CBにビルドアップ能力を求める当時の城福浩監督とのスタイルの違いも影響した。2009年には左足底腱の負傷や顔面骨折もあって出番を失い、昨季限りでFC東京から戦力外通告を受けた。

 心機一転、復活を期す思いでC大阪に移籍した。開幕当初こそ3バックシステムに戸惑っていたが、4バックになって復活した。ここまで鹿島と並ぶリーグ最少の30失点と、堅守を発揮するチームの牽引役となっている。完全復活を果たしたといっていい。

 きっかけは、何なのか-。茂庭は「自分が変わらなきゃいけない中で、今年に入って気付いたことがあるんです。前は高くて強い選手と組むスタイルで、自分もそうかなと思ってたけど、今は逆をやっている。オレがアタックに行って、スピードがある上本がカバーをやってくれている。練習の中でそうなったけど、それが良かった。オレが変わらないといけない年に、本当にいい相棒に巡り合えた」と分析する。

 FC東京時代は主に高さのあるジャーンと組み、茂庭がカバーリングをやっていた。今でもスピードはある方だが、肉離れの多い体質で全盛期よりは劣る。C大阪で、フィジカルが強くスピードもあるDF上本大海と組むことで、茂庭は“モデルチェンジ”を図った。もともと身長181cmで体も強い方だったため、これがハマった。何より「前は体をぶつけると、これで3カ月かなとビビって行けなかった。今はもう、それがなくなった」と右肩脱臼の後遺症が消え、持ち味のアグレッシブな守備が復活したという。

 今季、残りあと1試合。最終節・磐田戦に勝てば逆転でのACL出場も見えてくる。相手のエースは前田遼一だが、アテネ五輪予選などアンダー世代の日本代表の戦友だ。ポジションが違うため単純比較はできないが、茂庭の方が五輪本戦、ドイツW杯と順調なキャリアを積んだが、近年は前田の方が脚光を浴びている。

 「最後勝ちたいですね。前田? 絶対に抑えたいです。挑戦したい。いいFWとやるのは、今のオレにはいい経験になる。刺激を受けたい」と茂庭は挑戦状を叩きつけた。光り輝く同世代を封じて逆転ACLを、そして自分の存在を再び世間に知らしめる-。地獄を味わった男が、その“復活ロード”の最後に、得点王を封じて有終の美を飾る。

[写真]C大阪DF茂庭

(取材・文 近藤安弘)

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