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ルーカスが復帰ゴール、「FC東京に恩返しがしたかった」

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[7.24 J2第22節 F東京5-0熊本 国立]

 「シャー! シャー!! シャー!!!」。気持よく右腕を天に突き上げた。ファンも本人も、この瞬間を待っていた。復帰後初ゴールを決めたFC東京のFWルーカスは、試合後にサポーター席の前に登場し、歓喜のパフォーマンスを繰り出した。

 今季最多得点となる5-0快勝を導いたのは、一時は引退しながらFC東京のためにこの7月に復帰した男だった。後半27分から途中出場し、4-0の同42分だった。右サイドからMF梶山陽平のクロスに合わせるべく、ルーカスはゴール前に飛び込んだ。右足でうまくトラップして進入し、右足で丁寧に蹴り込んだ。前節の岐阜戦で途中出場でJ復帰を果たし、出場2戦目でサポーターの期待に応えた。

「戻ってきて2試合目と、早いうちにゴールが取れて良かった。自分もゴールを決めたかったし、サポーターも自分のゴールを早く見たいと思っていてくれたと思うので、それが果たせて良かったです。ヨウヘイ(梶山)とは以前やっていた。3年半ぶりくらいだけど、コンビプレーで取れて嬉しい。私たちは息があっていると思う」

 2007年までの4シーズン、FC東京でプレーしたあと、G大阪に移籍。昨季限りでブラジルに戻り、アトレチコ・パラナエンセでプレーしていた。16試合4得点と結果は出していたが、指揮官との意見の違いなどもあり、5月に引退を表明した。そん中、FW平山相太など攻撃陣が相次いで故障したうえ、調子も上がってこない古巣からオファーを受けた。

 もともとG大阪を退団しブラジルに戻ることを決めたのも、子供の進学のことなど家庭の事情があったためで、かなり悩んだが「自分もFC東京に恩返しがしたかった。チームをJ1に戻すことに協力したかった」との思いから現役復帰を決断。東日本大震災の影響で一部の外国人選手は帰国することを選ぶ中、ルーカスは単身で再び日本にやってきた。

 この日のゴールはサポーターだけでなく、家族に捧げるゴールでもあった。「家族の前でゴールを決められたことも良かったです」。2週間ほど前にブラジルに残していた家族が来日してくれた。現役復帰、日本復帰を許してくれた愛する家族の前でゴールを決められ、試合後は父親の表情も見せた。家族は8月下旬には再びブラジルに戻る予定で、再び単身となるが、それまでに、さらに活躍する姿を見せる意気込みだ。

 今後は先発での活躍も期待される。体力面は戻ってきたが、ただまだ、試合勘が完全に戻りきっていないことや、チームが負けなしと絶好調のため、ベンチスタートになっている。「チームは調子がいいので、このリズムは変えないほうがいい。出られるチャンスが来たら、自分のプレーをするだけです」とルーカスはフォア・ザ・チームを強調した。J1で優勝争いする強豪チームでも助っ人になれる実力を持つ男が、ベンチに控えているのは頼もしい限り。ルーカスがFC東京の“首位ロード”を支える。

[写真]駄目押し点を決めたルーカス

(取材・文 近藤安弘)

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