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元U-17代表・幸野がプロデビュー、「今日の試合に賭けていた」

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[11.17 天皇杯4回戦 F東京2-0千葉 味スタ]

 待ちに待ったプロのピッチに勢い良く飛び出した。JFAアカデミー福島の男子1期生で、同アカデミー出身初のJリーガーとして3月にFC東京に入団したMF幸野志有人が後半43分、MF田邉草民に代わって待望のプロデビューを果たした。

 「思った以上に緊張した。ああいう時間帯に交代で出る経験はあまりなかったので、不安な部分もあったけど、みんなが声をかけてくれて集中して入れた」。ボールタッチは1回。しかし、その1回が幸野らしかった。

 中盤で激しく体をぶつけ、ボールを奪取。シンプルに味方につなぎ、ピンチを未然に防いだ。「監督には、僕のいい部分のボールを奪うところと、早くボールを動かすところを言われた」と、まさに指示通りのプレー。「次にボールがどこに来るかを読んだり、そこが自分の得意なところだし、1回だけだけど、自分の良さを出せたのかなと思う」とはにかんだ。

 近いようで遠いピッチだった。リーグ戦はベンチ入りなし。ナビスコ杯では5月22日の新潟戦、天皇杯では9月5日の2回戦・駒澤大戦、10月11日の3回戦・北九州戦でベンチに入ったものの、出場機会はなかった。

 “4度目の正直”でのプロデビュー。「長かったなと感じている。今までこんなに試合に出られないことがなかったので、どうしたら出られるんだろうとサッカー人生で初めて考えたし、自分と向き合って、模索してきた」と振り返る。各年代のユース代表でも活躍し、昨年のU-17W杯にも出場。幸野にとっては初めての挫折とも言えた。

 「でも足りない部分は自分でも分かっていたし、コーチにどこが足りないのか聞いたりもした。やっちゃいけない場面での細かいミスも多かったし、戦術もまだ理解できていなかった。守備の出足とか取りどころとか、そういう自分の長所も最近やっと出せるようになってきていた」

 熾烈な残留争いが続くリーグ戦では、なかなかデビューのチャンスが来ないのは自分でも分かっていた。だからこそ、この天皇杯への思いは特別だった。「今日の試合は視野に入れていた。ここで出なきゃ今年はないというぐらい賭けていた」と言う。

 「試合に出ないとプロ選手じゃないというか、試合に出てナンボだと思うし、今日出れたことは大きな一歩。でも、ほんの少しの一歩を踏み出したばかりだと思うし、これからという感じです」。念願のデビュー戦にも表情を引き締める幸野だったが、「率直な感想としては、もっと出たかったです」と笑うと、17歳の少年らしい素顔ものぞかせていた。

[写真]F東京MF幸野

(取材・文 西山紘平)

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