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Jを目指せ! by 木次成夫

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第43回 九州リーグ「ニューウェーブ北九州」初優勝!
by 木次成夫

 九州リーグ最終週(21、22週)はニューウェーブ北九州(以下、NW)のホーム、北九州市本城陸上競技場(及び、隣接した運動場)で行われました。集中開催は長崎(島原)、沖縄、鹿児島に続き、今季4度目。結果論になりますが、NWにはラッキーな日程でした。

20週終了時点の順位は、
首位=ホンダロック(勝ち点49。残り2試合)
2位=NW北九州(同48。残り2試合)
3位=V・ファーレン長崎(同47、残り1試合)

結果は、
10月27日
NW北九州 4-0 熊本教員蹴友団
ホンダロック 3-1 新日鐵大分

10月28日
海邦銀行SC 0-4 NW北九州
 試合Photo
V・ファーレン長崎 2-1 ホンダロック
 試合Photo

NWに優勝をもたらしたのは、試合前に3位が決まっていた長崎の執念でした。
前半35分 0-1 PK=前田悠祐(ホンダロック)
後半2分 長崎=選手1人交代(FW首藤啓祐からFWブルーノ・カルバリョ)
後半28分 長崎=選手2人交代(FW有光亮太からMF石川高大、MF竹内栄哉からMF小田幸司)。岩本文昭監督から「まだ15分あるぞ」という叫び声!
後半36分 1-1 ブルーノ(アシスト=原田武男)
後半38分 2-1 PK=佐野裕哉

 岩本監督は全国社会人選手権ベスト4で敗退した際、「他のチームの試合結果に関わらず、最後は勝って、次につなげたい」と語っていました。選手、そして、スタジアムで熱い応援を続けた数十人のファンの思いも同じだったのでしょう。

最終順位は以下の通りです。
優勝=NW北九州(勝ち点54)
2位=ホンダロック(同52)
3位=V・ファーレン長崎(同50)
4位=新日鐵大分(同37)
5位=ヴォルカ鹿児島(同32)
6位=沖縄かりゆしFC(同32)
7位=三菱重工長崎(同26)
8位=OSUMI NIFS(同19)
9位=海邦銀行SC(同15)
10位=熊本教員蹴友団(同6)
11位=七隈トンビーズ(同6)

 NWは一昨季6位で、昨季3位(優勝=長崎、2位=新日鐵大分)。今季就任した与那城ジョージ監督(前・FC琉球監督)はじめ、チーム強化が成功したことになります。3年目の小野信義(33歳、読売ユース出身、前・横浜FC)、2年目の桑原裕義(36歳、広島―新潟)らベテランが軸になり、若手も活躍した点では、来季以降にもつながる優勝です。

 例えば、海邦銀行SC戦のスタメンは、以下の通り。
GK 水原大樹(32歳、前・東京V。新加入)
DF 市村 瞬(21歳、前・堀越高校)
DF ドグラス(20歳、前・山形。新加入)
DF 永野 諒(22歳、前・福岡教育大学。新加入)
DF 森田真司(20歳、前・堀越高校)
MF 桑原裕義
MF 小野信義
MF 森本惟人(25歳、前・アルエット熊本=ロッソの前身)
MF 古賀宗樹(23歳、前・阪南大学)
FW 藤吉信次(37歳、前・FC琉球、元・読売クラブなど。新加入)
FW 中嶋雄大(23歳、前・福岡教育大学。新加入)

 「Jリーグを目指す」クラブにとって重要なことのひとつは、予算内で最上のスカウティングだと思います。NWを含めて今季は、経験豊富な「元Jリーガー」を軸に、アマチュア契約で大学新卒など若手を補強したチームが複数、良い結果を残しまた。

 シーズン通産59得点(長崎の79、ホンダロックの76に次ぐ3位)、8失点(1位。2位は17失点の長崎)。堅い守備をベースにしつつ、右SBの市村が再三オーバーラップするなど流動的な攻撃も魅力的でした。

 ちなみにNW強化部の千疋美徳氏(昨季までの2シーズンは監督)は九州共立大学(北九州市)出身、現役時代は読売クラブ(東京Vの前身)などで活躍した左SBです。NEC山形(現モンテディオ)、鳥栖、九州共立大学、堀越高校などでの指導歴もあります。NW選手の顔ぶれを見ると……なるほど、という感じです。

 今後の課題は、ファンをいかに増やすかでしょう。熊本教員戦の観衆は2203人、海邦銀行戦は2507人(ともに公式発表)。今季最高の4753人(9月11日のホンダロック戦=本城)には及びませんでした。人口約100万人の「北九州市のシンボルを目指す」クラブとしては、物足りな過ぎます。

 ところで、リーグ最終週で最も印象に残ったのは最下位の七隈(ナナクマと発音)トンビーズでした。福岡大学(福岡市城南区七隈)サッカー同好会で、1軍が「トンビーズ」、2軍が「カラス」。同大学サッカー部は現・浦和レッズの坪井慶介らプロ選手を多数輩出している名門です。つまり、トンビーズにはサッカー部に入れない(入らない)選手が集まるわけです。今年で創立37周年。昨季、初昇格を果たして10チーム中9位。当然ながら試合遠征などは自費ですが、OB達から合計100万円(昨季は200万円)の寄付があったとのこと。凄いOBがいるものです。トンビーズに比べたら「Jリーグ100年構想」は、まだまだ口先だけのトップダウンにすぎません。

 最終戦はヴォルカ鹿児島に0-2で敗退したものの、内容的には“ほぼ”互角(試合Photo)。トンビーズは守備重視の布陣ではなく、積極的に得点を狙いました。172cmのGK加藤公浩(監督&代表兼任=3年生)の果敢なセーブも圧巻。もっとも、数年前には元Jリーガーを獲得するなど積極的な補強で、リーグ2位まで上昇したこともあるヴォルカが、大学同好会に辛勝という点にも驚きましたが……。

 いずれにせよ、改めて、サッカーは相手がいてこそ、する側も見る側も面白くなるということを痛感しました。日本各地に「Jリーグを目指すクラブ」が増え、チーム間格差が広がっている地域も多いです。とはいえ、少数の「勝ち組」だけが生き残っても、日本サッカーは成立しません。JFAの方々には、是非、底辺維持のための策も考えてほしいものです。

 さて、「全国地域リーグ決勝大会」出場チーム、組み合わせが決まりました。

●一次ラウンド(11月23日-25日)
A組(広島県・広島スタジアム)
グルージャ盛岡(東北優勝)
ファジアーノ岡山(中国優勝)
ホンダロック(九州2位)

●B組(広島県・広島スタジアム)
矢崎バレンテ(東海2位)
NW北九州(九州優勝)
NECトーキン(東北2位)

●C組(愛知県・ウェーブスタジアム刈谷)
FC町田ゼルビア(関東優勝)
バンディオンセ神戸(関西優勝)
静岡FC(東海優勝)
ノルブリッツ北海道(北海道優勝)

●D組(長野県・松本市=アルウィン)
セントラル中国(中国2位)
FC Mi-OびわこKusatsu(全国社会人選手権優勝)
松本山雅FC(北信越優勝)
徳島ヴォルティス・アマチュア(四国優勝)

 各組1位が決勝ラウンドに進出(11月30日-12月2日=埼玉県・熊谷)します。一見して、NW北九州はラッキーです。その一方でC組はすべて地域リーグ優勝チーム。3年連続出場のバンディは、4チームの組(3日間連戦)ということも含めて「運が悪い」としか言いようがありません。

 また、松本山雅(ヤマガ)は出場チーム唯一、ホームで試合。リーグ戦最多観衆記録=6399人(対長野パルセイロ)を上回るファンを集めて、地元の盛り上がりをアピールしてほしいものです。

<写真説明>2列目右から2人目が藤吉、前列左端が小野

・今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
後期12節(10月27、28日)
アルテ高崎 0-1 栃木SC
ガイナーレ鳥取 2-2 横河武蔵野FC 
三菱水島FC  2-3 FC岐阜
ジェフリザーブズ 0-1 ロッソ熊本
FC刈谷 1-2 YKK AP
FC琉球 1-3 佐川急便SC

首位=佐川急便(勝ち点73)、2位=ロッソ熊本(同58)、3位=YKK(同51)、4位=岐阜(同50)、5位=アローズ北陸(同49)、6位=Honda(48)、7位=ジェフ(同45)、8位=栃木(同42)、9位=横河武蔵野(同42、得失点差)、10位=流通経済大学(同41)、11位=佐川印刷(同39)、12位=ガイナーレ鳥取(同35)、13位=TDK(同34)、14位=三菱水島(同34、得失点差)、15位=ソニー仙台(同34、得失点差)、16位=刈谷(同27)、17位=琉球(同23)、18位=アルテ高崎(最下位、同6)
※アルテは最下位決定。

次節の注目カード
11月3日 栃木SC対ガイナーレ鳥取
11月3日 ロッソ熊本対FC刈谷
*鳥取は勝たない限り、5位以下確定。ロッソが引き分け以下に終われば、佐川急便の優勝決定。佐川急便は天皇杯の関係で、次節試合延期(11月28日、対佐川印刷)。

東北リーグ2部?牝醉ゾ〃萃蠕鍜10月28日)
ビアンコーネ福島 0-2 FC秋田カンビアーレ
*カンビアーレの一部昇格決定。ビアンコーネは入れ替え戦へ(詳細未定)

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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