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Jを目指せ! by 木次成夫

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第44回 町田ゼルビア「全国地域リーグ決勝大会」展望&JFL栃木対鳥取
by 木次成夫

11月4日 
KSL(関東サッカーリーグ)カップ・プレ大会決勝。
FC町田ゼルビア対クラブ・ドラゴンズ

来季から公式戦にする予定ゆえ、今回は「プレ」だとか。1部と2部の全16チームが参加しました。ゼルビアの対戦相手、クラブ・ドラゴンズは関東大学リーグとJFLに所属する流通経済大学のリザーブ・チーム、いわば「3軍」です。

 ゼルビアは1977年に町田市内の「少年選抜」チームとしてスタートしたクラブです。89年にトップチーム「FC町田」が発足し、95年に「町田ゼルビア」と名称変更。地域の支援が高まったのでしょうか、この数年で急速に台頭してきました。

03年=東京都リーグ1部7位
04年=東京都リーグ1部3位
05年=東京都リーグ1部優勝
06年=関東リーグ2部優勝

 ゼルビアを初めて見たのは昨年の全国社会人選手権(秋田県開催)でした(PhotoNewsでアーカイヴ公開)。2回戦で東北1部所属のNECトーキンに4-1で圧勝(3回戦で、優勝したV・ファーレン長崎に1-2で惜敗)。サイドアタックをベースにした質の高いサッカーに驚きました。中でも目立ったのは右MF酒井良(30歳、前・草津)とFW柏木翔一(22歳、帝京高校卒)の果敢なアタック、ボランチ杉本圭(25歳、前・湘南)の展開力、FW竹中穣(30歳、前・横浜FC)の闘志溢れるプレー。「町田だと思って戦え」という垂れ幕などを掲げて熱い応援をするファンの一団がいた点も印象的でした。近場の「J1」FC東京ではなく、秋田県にかほ市まで「全社」を見に来るなんて……並のファンではありません。

 今季は大学新卒ら若手中心の補強をしました。北信越リーグ優勝の松本山雅、九州リーグ優勝のNW北九州も同様の手法で良い結果を残しています。今後、多くのクラブが真似るでしょうが、ゼルビアは強豪大学が近隣にある上に、相対的に雇用状況の良い東京にある点で、地方クラブよりは地理的には有利だと思います。

 KSLカップ・プレ大会決勝スタメンは、以下の通り。

GK白子哲平(23歳・帝京大学卒)
右SB掛川暢矢(21歳、東海大菅生高校卒)
CB雑賀(さいか)友洋(23歳、法政大学新卒)
CB福田雄一(23歳、東洋大学新卒)
左SB津田和樹(25歳、前V甲府)
ボランチ杉本 圭
ボランチ茂木祐一(23歳、国士舘大学新卒)
右MF中村友昭(21歳、前・湘南ユース)
左MF石堂和人(25歳・前・松本山雅=新加入)
FW柳崎祥兵(23歳・駒澤大学新卒)
FW船山 翼(23歳・駒澤大学新卒)

 結果は、前半14分に船山、後半5分に石堂が得点し、2-0でゼルビアが優勝。交代出場した竹中、酒井らを含め、JFL昇格を賭けた「全国地域リーグ決勝大会」(一次ラウンド、11月23日―25日)での健闘が期待できる内容でした。

 ゼルビアの対戦相手はバンディオンセ神戸(関西優勝)、静岡FC(東海優勝)、ノルブリッツ北海道(北海道優勝)。3チームとも、昨年度も出場した実績があります。

23日、ゼルビア対バンディ、静岡対ノルブリッツ
24日、ゼルビア対静岡、バンディ対ノルブリッツ
25日、ゼルビア対ノルブリッツ、バンディ対静岡

 いうまでもなく、最も大事なのはバンディ戦。森岡茂(34歳、前・G大阪、アトランタ五輪代表)はじめ、元・Jリーガーを多数擁しています。3年連続出場という経験値も、侮れません。ゼルビアの左アタッカー石堂とバンディ右SB神埼亮祐(25歳、前・川崎F、2年連続関西リーグMVP)の駆け引き、森岡のピンポイントクロスなど相手の穴を見逃さないセンスに対する雑賀(昨年は法政大学の守備の要)の統率力などが鍵を握るでしょう。

試合写真 06年アーカイブ

<写真説明>町田ゼルビアFW船山 翼の先制ボレー・シュート
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11月3日
JFL後期13節
栃木SC対ガイナーレ鳥取

 栃木県総合運動公園陸上競技場に集まった観衆は3683人。ホーム開幕戦は1万人以上が集まったチームとしては「少ない」です。ただ、例えばJ2水戸の観衆が時には1500人を切り、同じ日に行われた岐阜対ソニー仙台戦が1954人だったことを考慮すると、「スゴイ」ともいえます。

 観衆の中に約40人ながらも鳥取のファンがいました。うち30人は、バスをチャーターして参じた「東京鳥取県人会」の方々。東京以外で開催される試合の応援は初めてだそうですが、お揃いの“赤い”ハッピに「気合い」を感じました。

 試合は栃木が2点先制したものの、鳥取が粘って2-2の引き分け。県人会パワーの賜物かもしれません。

前半5分 1-0(得点=横山聡=前・湘南=今季加入)
前半15分 2-0(得点=横山聡)
後半17分 2-1(得点=堀池勇平=前・佐川印刷=今季加入)
後半41分 2-2(得点=戸田賢良=前・湘南=今季加入)

 鳥取(13位)は、残り4試合全勝したとしても「5位以下」(来季もJFL)が確定しましたが、最後まで“つなぐ”サッカーを展開して、流れの中で2得点を奪ったことは「次につながる」と思います。また、引き分けを喜ぶ県人会の方々を見て、「Jリーグの存在価値」を再認識しました。Jリーグができる前、つまり多くの企業チームを企業関係者が中心になって応援していた時代と比べると、「地域」というつながりを“きっかけ”にサッカーを楽しめる人が増えたということですから。

 ところで、栃木(9位)はFC岐阜(4位)が“あと1勝”すれば「5位以下」確定という状況に追い込まれました。高橋高監督の辞任後、柱谷幸一監督就任、米田兼一郎(京都)らのレンタル獲得、アマチュア選手とのプロ契約など補強策を敢行したものの、成績は好転していません。果たしてクラブ首脳陣は、現状をどう見ているのでしょうか。試合後、多くのファンが怒りませんでした。場当たり的な強化(よく言えば、臨機応変)を批判するファンがいても不思議ではないのですが……栃木には優しい人が多いなあ、と思いました。

試合写真


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向
●JFL
後期13節(11月3、4、7日)
ロッソ熊本 1-0 FC刈谷
YKK AP 4-0 FC琉球
アローズ北陸 7-0 アルテ高崎
FC岐阜 3-2 ソニー仙台
横河武蔵野FC 2-0 ジェフリザーブズ
TDK 2-0 三菱水島FC(7日)

*天皇杯の関係で3試合(TDK SC対三菱水島FC=11月7日、Honda FC対流通経済大学=同28日、佐川急便対佐川印刷=同28日)が延期になったため、以下の順位は暫定。

首位=佐川急便(勝ち点73)、2位=ロッソ(同61)、3位=YKK(同54)、4位=岐阜(同53)、5位=アローズ(同52)、6位=Honda(同48)、7位=横河武蔵野(同45)、8位=ジェフ(同45、得失点差)、9位=栃木(同43)、10位=流経大(同41)、11位=佐川印刷(同39)、12位=TDK(同37)、13位=ガイナーレ(同36)、14位=三菱水島(同34)、15位=ソニー仙台(同34、得失点差)、16位=刈谷(同27)、17位=琉球(同23)、18位=アルテ(同6)

次節=14節(11月10、11日)の注目カード
佐川印刷対YKK(10日)
ジェフ対栃木(11日)
TDK対岐阜(11日)
琉球対ロッソ(11日)
ガイナーレ対アローズ(11日)
*残り4試合。佐川急便は引き分け以上(敗れた場合は、ロッソが引き分け以下)で優勝。YKK、岐阜、アローズの結果次第でロッソの4位以内が確定


※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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