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Jを目指せ! by 木次成夫

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第47回 全国地域リーグ決勝大会特別編「一次ラウンド」初日
by 木次成夫

[11月23日 A組 グルージャ盛岡 1-2 ファジアーノ岡山]

「本命」ファジアーノが苦戦しました。試合開始1分もたたないうちに、FW朝比奈祐作(24歳・東海大学出身)が先制点を決めたもの、その後は26分の朝比奈「2点目」のみ。後半25分にはDF伊藤琢矢(33歳、前・佐川急便東京)がPKをとられ、グルージャMF上村愛史(24歳、前・コバルトーレ女川)が得点。ファジアーノのシュートは合計12本(グルージャは9本)。中国リーグで14戦全勝(77得点、3失点)、その後のプレーオフでも3連勝、と、圧倒的な強さを誇ったチームとは思えないほどの出来でした。

逆説的な言い方になりますが、ファジアーノの弱点は中国リーグで際立っていたことかもしれません。スタメン平均年齢は23.5歳(21歳以下が4人)。地域リーグとしては優れた選手が揃っているとはいえ、修羅場経験が不足しています。また、朝比奈、あるいはエースFWの喜山康平(19歳、東京Vからのレンタル)が個人で状況を打開できる力を持っているゆえに、中盤のゲームメイクが大雑把に陥ることがあります。

25日に対戦するホンダロック(九州2位)は、地味な選手揃いながらも、豊富な運動量と組織的かつ勤勉なプレッシングが武器のチームです。今大会は90分で決着がつかない場合は延長戦を行わずに即PK戦。つまり、守備的なサッカーをして、イチかバチかのPKに賭ける作戦もありえます。もしかしたら波乱も、と考えるのは悲観的すぎかもしれませんが・・・・・・。

ところで、対戦相手のグルージャは、03年に「Jを目指して」発足したチームです。
同年、東北リーグ2部北ブロック4位
04年、同、優勝
05年、同1部優勝。全国地域リーグ決勝大会出場=一次ラウンド敗退

「地域決勝」出場までは、さながら“ザスパに追いつけ、追い越せ”。ところが同大会後、クラブ経営難が公になり、内紛へ発展。首脳陣の一部が「ガンジュ岩手」(今季、岩手県3部リーグ)をたちあげる一方で、グルージャは短期強化路線から一転、「地道なクラブ」としてリスタートし、現在に至っています。

現在は、ほとんどの選手がアマチュアで、練習は平日夜間。例えば、自治体から練習場使用を優遇されているわけでもなく、「他の多くのアマチュアクラブと同じように、予約日に並ぶ」(チーム関係者)そうです。一瞬のキレ味(相手の動きへの反応を含めて)に、現状ゆえの限界を感じました。同時に、「できることをする」(奇跡に期待するようなプレーはしない)という点を含めて、しっかりしたサッカーをしているとも感じました。もっとも、そんなグルージャ相手に苦戦したからこそ、「J準加盟」ファジアーノがイマイチに見えてしまったのですが・・・・・。

ちなみに観衆は452人(主催者発表)。開催地の広島が岡山から比較的近いからでしょうが、半分以上は「クラブ主催日帰りバスツアー(3台)」客を含めたファジアーノ・ファンでした。対するグルージャファンは20人程度。少ないというよりは、遠隔地の広島まで来たファンがいることを、クラブの未来につながてほしいと思いました。


[11月23日 B組 矢崎バレンテ 2-2(PK2-4) ニューウェーブ北九州]

ファジアーノ同様「本命」ながら、ニューウェーブ(以下、NW)はファジアーノ以上に苦戦しました。矢崎バレンテは「矢崎総業」のチームで、東海リーグ2位。スタメン中、身長170cm以下が5人もいる小柄なチームでしたが、豊富な運動量、組織的プレッシング、そしてスタミナという点ではNWに勝っていました。スタメン平均年齢28.0歳。東海地域の大学出身者が多いためか、チームとしての”まとまり”もありました。また、全国社会人選手権で準優勝した経験も自信につながっているのでしょう。対するNWはSBを含めた持ち前の流動的かつ積極的なサイドアタックが不発。試合を優勢に運びながらも、怖さのないサッカーを展開してしまいました。

前半8分  0-1 NW=小野信義(33歳、MF=元・読売クラブなど)
前半40分 1-1 矢崎=大森敬之(25歳、DF=前・バンディオンセ神戸)
後半43分 1-2 NW=中島雄大(23歳、FW=前・福岡教育大学)
後半44分 2-2 矢崎=渡邊 俊(25歳、MF=前・浜松大学)

矢崎が同点においついたのは、ほぼ”ラストプレー”。ゴール前に引いたNW守備陣をあざ笑うかのような、左足での華麗なループシュートでした。NWがPK戦で勝てたのは、GK水原大樹(32歳、前・東京V)の存在感ゆえか、九州リーグが今大会と同じルールゆえに慣れているためか・・・・・・。いずれにせよ、(良く言えば)主将の桑原裕義(36歳、元・広島など)ら軸となるベテランがの重要性も、改めてわかった試合でした。

NWは25日にNECトーキン(東北2位)と試合をします。


*他組の試合結果
C組 町田ゼルビア 0-1 バンディオンセ神戸
   静岡FC 3-1 ノルブリッツ北海道

D組 セントラル中国 1ー9 FC Mi-OびわこKusatsu
   松本山雅FC 4-0 徳島ヴォルティス・アマチュア


<写真説明>NW北九州FW宮川大輔(右側)と歓喜する藤吉信次

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