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Jを目指せ! by 木次成夫

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第49回 全国地域リーグ決勝大会特別編「一次ラウンド」最終日
by 木次成夫

11月25日 第2試合 FC Mi-OびわこKusatsu対松本山雅FC

ホームの山雅が2連勝と、勢いに乗っていたためか、観衆は今大会最高の3631人(公式発表)。うちMi-Oファンは、せいぜい20人。Mi-Oも2連勝ながら、MF若林令緒(29歳、前・バンディオンセ神戸)が出場停止(前日のヴォルティス・アマ戦でレッドカード)。中心選手の1人ゆえ、戦力ダウンが懸念材料でした。

山雅は序盤から積極的に攻撃をしかけました。決定的チャンスもありました。”惜しい”プレーの連続にスタンドのファンは一喜一憂。盛り上がるばかり……でしたが、得点には至りません。そんな光景を見ていて、ふと、“何かが今までとは違う”と感じました。早めにクロスをあげるなど、急ぎすぎているのではないかと思ったのです。そもそも、Mi-OのCB、石澤典明(22歳、V神戸からレンタル)と田尾知己(24歳、JFL鳥取からレンタル)は「高さ」と「フィジカルプレー」に強いタイプ。結果論になりますが、真っ向勝負をかけるよりも、時には2人がサイドにスライドせざるをえないようなプレーをすれば、チャンスが広がったかもしれません。

結局、前半は0対0。山雅のシュートは6本、Mi-Oは1本。シュート数以上に、山雅の攻勢が目立ちました。ところが、後半は……、
予想外のようで、サッカーではありがちな展開になりました。

後半3分 1-0 Mi-O=MF内林広高(24歳、前・ロッソ熊本)

前半の「攻め疲れ」と、後半開始直後の「一瞬の隙」というしかありません。左サイドでボールを受けた内林がスピードに乗ったドリブルでDFをかわしてシュート。内林の「一芸」といっても過言ではないほど「得意な」形でした。この失点で気落ちしたのでしょうか、その後、山雅の勢いは一気に落ちていきます。

後半28分 2-0 Mi-O=MF内林広高

右サイドから大江勇詞(21歳、V神戸からレンタル)がフリーでグラウンダー・クロスを入れ、内林がダイレクトシュート。山雅守備陣は複数いたものの、カットに入るのが、わずかに遅れました。

結果、2-0。

北信越リーグで良いパフォーマンスを発揮していた時と比べると、「攻撃のオプション」という点でも疑問が残った試合でした。というのは、最初は1トップ(4-2-3-1)で、ドリブルで切り込むプレーを得意にしている白尾秀人(27歳、元・甲府など)を途中投入するのが定石のひとつだったのですが、今大会は最初から2トップ(4-4-2)。これまた、最初から真っ向勝負をしてしまった、という印象です。

対するMi-Oは、自分が「できる」ことと「できない」ことを相手との力関係を考慮した上でベストを尽くす点で、普段通りでした。中でも、左SBの根岸誠貴(27歳、前・佐川急便京都)が“内にしぼったり”、ボランチの浦島貴大(19歳、北大津高校出身)が引いたり、山雅の攻撃を複数で囲い込む様は、チームワークで勝ってきたチームならでは、でした。

“わかっていても、多くのDFがひっかかる”内林の「一芸」で勝った点もMi-Oらしいです。プレーにムラがある上に、スタミナ的な課題もありますが、左右両サイド際から、左右にフェイントを入れて相手を抜き、左右両足でシュートを打てる点は、際立っています。いわゆる“消えている時間”が多いため、スタメン出場しても「スーパーサブ」みたいな選手です。

ちなみに、内林は出場停止の若林の代わりにスタメン出場しました。それまでの2戦は交代出場だったためか、この試合は何度もキレ味鋭いプレーを披露。停滞したリズムをかえられなかった山雅の選手たちとは対照的でした。

また、Mi-Oは2年連続出場(昨年は一次ラウンド敗退)で、戸塚監督も2年連続の采配(昨年はFC岐阜をJFLに昇格させた)。対する山雅はチ-ムとしても、辛島啓珠監督自身も初出場。「経験の差」も大きかったということでしょう。


以下、「一次ラウンド」の試合結果
A組 ファジアーノ岡山 3-1 ホンダロック
1位 ファジアーノ 2勝(勝ち点6)
2位 ホンダロック 1勝1敗(同3)
3位 グルージャ盛岡 2敗(同0)

B組 ニューウェーブ北九州 1-0 NECトーキン
1位 NW北九州 2勝=うち1PK勝(勝ち点5)
2位 矢崎バレンテ1勝1PK敗(同4)
3位 NECトーキン 2敗(同0)

C組 町田ゼルビア 6-0 ノルブリッツ北海道
   バンディオンセ神戸 3-1 静岡FC

1位 バンディ 3勝(勝ち点9)
2位 ゼルビア 2勝=うち1PK勝ち1敗(同5)
3位 静岡FC 1勝2敗=うち1PK敗(同4)
4位?務て察 。廓圜同0)

D組 セントラル中国 0-6 徳島ヴォルティス・アマチュア
   Mi-O 2-0 山雅

1位 Mi-O 3勝(勝ち点9)
2位 山雅 2勝1敗(同6)
3位 徳島 1勝2敗(同3)
4位 中国 3敗(同0)
*セントラル中国は3試合1得点19失点という悲惨な結果に終わりました。守備の絶対的中心選手、CBの渥美高二(29歳、前・静岡FC)がケガで欠場した点も大敗の要因でした。また、なぜか監督は大会に参加せず、主将の庄司孝(36歳、元・柏など)が兼任。ただ、クラブ代表と監督が同一人物で、強化スタッフもいなければ、下部組織もない単独チームが「大会に出場できたこと自体が立派」ともいえるのではないでしょうか。時には、センスを感じさせるプレーもありました。徳島が小粒揃いな上に、意外性のないサッカーをしていたからでしょうか、より思いました。セントラルのような個性的なチームがあった方がサッカーは面白くなる、と――。是非、JFLクラブがない島根県サッカー界の未来にためにも、頑張ってほしいものです。

決勝ラウンド(11月30日ー12月2日、埼玉県熊谷市)進出=ファジアーノ、ニューウェーブ、バンディオンセ、Mi-O

<写真説明>先制ゴールを決めて歓喜するMI-OのMF内林広高。手前は山雅GK三栗寛士

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