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Jを目指せ! by 木次成夫

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第51回 全国地域リーグ決勝大会特別編「決勝ラウンド」1日目
by 木次成夫

11月30日
[第1試合] 
ファジアーノ岡山対ニューウェーブ北九州

4チーム中上位2チームがJFL自動昇格。J2昇格が2チームになった場合は3位も自動昇格(1チームの場合はJFL最下位との入れ替え戦)。つまり、決勝ラウンド最下位にならなれば昇格のチャンスがあるのですから、リスクの少ないサッカーをするのは当然かもしれません。

ともにフォーメーションは4-4-2。どちらかというと、攻撃力はファジアーノが上で、「攻守のバランス」という点ではニューウェーブ(以下、NW)が上。ファジアーノの強力2トップ、喜山康平(19才、前・東京V)と朝比奈祐作(24歳、前・東海大学)は決定的仕事ができないものの、NWも守備と中盤の攻防で手一杯。良く言えば「拮抗している」ものの、見方を変えれば「決め手に欠く」展開。しかし、最終的には“これ以上はない”というほど、サッカーの醍醐味を感じさせる結果なったのですから、一期一会のサッカー観戦はやめられません。

前半42分=NW MFタチコ(26歳、元・沖縄かりゆしFCなど)が2枚目のイエロー・カードで退場。

後半13分=ファジアーノ、“174cmの” 朝比奈に代えて“188cmの”ジェフェルソン(26歳、元・横浜FCなど)を投入。

朝比奈からジェフェルソンへの交代は、ファジアーノの「定石」のひとつです。しかし、NWは落ち着いていました。数的優位を生かして、積極的にサイドアタックをかけるファジアーノに対して、ボランチの桑原裕義(37歳、元・広島など)を中心にした“熟練の試合運び”で対応。ベテランを軸にしたチームならではの戦い方でした。

後半29分=NW MF森本惟人(25歳、前・アルエット熊本)からFW楠 亮平(21歳、前・九州共立大学)に交代

後半33分=ファジアーノ サイドアタッカータイプの臼井仁志(19歳、前・神戸国際大学附属高校)から、ゲームメーカータイプの弦巻健人(20歳、前・東京V)に交代。

後半39分=ファジアーノ 1-0 得点=ジェフェルソン

CKから“つないだ”後、クロスに合わせたヘディング・シュートでした。それまで何度も「縦の突破」を止めたNW守備陣が「横のゆさぶり」に対応できず。ファジアーノのメンバー交代の成果であり、リスタートで一息ついたNWの「一瞬の隙」としか言いようがありません。

しかし、試合はそれで終わりませんでした。
後半41分=NW FW藤吉からFW宮川大輔(28歳、前・草津)、左SB吉野慎治からFW古賀宗樹(23歳、前・阪南大学)に交代

後半44分=NW 1-1 得点=小野信義=PK。前線を厚くした“パワープレー”の成果でした。

PK戦 4-3

後蹴りのNWは、3人目の小野信義が“まさかの”失敗。双方の5人目もはずしたため、ファジアーノが辛くも勝利。えてしてPKはキックが巧い選手が「はずす」ものです。例えばシドニー五輪の中田英寿同様、小野も例外ではありませんでした。

[第2試合]
バンディオンセ神戸対FC Mi-OびわこKusatsu

関西リーグ1位のバンディと2位のMi-O。リーグ戦はバンディの2勝ながら、今大会前のKSL(関西サッカーリーグ)カップではMi-OがPK戦の末に勝利しています。この試合、バンディはエースFWの西村完爾(29歳、前・セントラル神戸)がケガで欠場。対するMi-OはCB田尾知己(24歳、前・ガイナーレ鳥取)が出場停止でした。

試合はバンディ優勢ながらもMi-Oが粘る展開で進みました。Mi-Oは田尾の代役に、今季途中に北信越リーグのヴァリエンテ富山から移籍した木場昌雄(33歳、元・G大阪など)を起用。スピードへの対応などで危ういシーンもあったものの、ベテランならではのプレーも随所に披露しました。ところが、第一試合同様、前半終了間際にハプニングが起き、流れが変わったのです。

前半44分=Mi-O CB石沢典明(22歳、前・神戸)が2枚目のイエロー・カードで退場。

後半0分=Mi-O FW安部雄二郎(25歳、前・佐川印刷)からCB波夛野 寛(24歳、前・東海大学)に交代。

後半8分=バンディ 1-0 得点=松田喬志(24歳、前・東海大学)

「流れの中」でMi-O守備陣を崩した快心のゴール。ところが、この失点で勢いづいたのはバンディではなくMi-Oでした。

後半11分=Mi-O FW内林広高(24歳、前・ロッソ熊本)からMF劉敏哲(23歳、前・中央大学=韓国)に交代

後半19分=Mi-O 1-1 得点=波夛野 寛(22歳、前・天理大学)

FKに合わせたヘディング・シュート。Mi-Oは“いっそう”勢いづきました。ボランチの金 東秀(24歳、前・大阪商業大学)と若林令緒(29歳、前・バンディ)、左サイドの壽 建志(24歳、、前・近畿大学)、右サイドの大江勇詞(21歳、前・神戸)がドリブルをパスを織り交ぜて、果敢に攻撃。どちらが数的不利なのか、わからなくなるほどでした。

後半26分=Mi-O CB木場から左SB枡田雄太郎(22歳、前・大商大)に交代

後半31分=バンディ MF森岡茂からMF石田雄人(24歳、前・横浜FC)に交代

後半40分=バンディ FW川淵勇祐(21歳、前・ジェフ千葉)からMF秋田政輝(25歳、前・水戸)に交代

PK 5-4
先蹴りのバンディは全員が成功、Mi-Oは1人目の根岸誠貴(27歳=主将、前・佐川急便京都)が失敗。バンディは試合終盤に罵倒気味の指示が飛び交う中での辛勝でした。

試合後、戸塚哲也監督は不用意なミスとファール、そして消極的な守備などに対して、「自分がチームを見るようになってから、最悪の出来」とコメントしました。しかし、その一方で、後半、積極的にパスをつないで攻撃したことに関しては「もっと、できたと思う」と――。温和な口調から伝わってきたのは、「怒り」というよりは、選手の潜在能力への期待感でした。

結果的に2試合とも「10人になった」方が敗退。とはいえ、NWとMi-Oは対照的です。良いリズムで90分を終えたMi-Oに対して、一度はPKに救われるなど幸運も味方したNW。疲労を覚悟しても“勢い”を重視した戸塚監督と、手堅い試合をした与那城監督。果たして、この采配が、どんな影響を及ぼすでしょうか。

12月1日(決勝ラウンド2日目)対戦カードは、

ファジアーノ(勝ち点2)対バンディ(同2)
NW(同1)対Mi-O(同1)

初戦は勝ちきれなかったどうしの“切り替え”も注目ですが、与那城VS.戸塚、つまり往年の“読売クラブの師弟コンビ”対決が楽しみです。

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