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Jを目指せ! by 木次成夫

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第64回 「Jの未来は岐阜しだい」
by 木次成夫

 昨年1月にGMに就任した今西和男氏が、J昇格(入会)後、代表取締役GMになりました。つまり、もはや「契約請負」ではなく、「人生を賭けた大仕事」。同氏はサンフレッチェ広島で日本サッカー界“元祖”GMをとして名を馳せた人物ゆえ、よもや、FC岐阜が再び経営難に陥れば、“あの今西さんでもダメなのか”となってしまいます。「地方クラブの失敗例」ではすまされないでしょう。「リーグ拡大」路線のJリーグにとっても、大きなイメージダウンですし、今西氏自身のサッカー人生に汚点を残すことになりかねません。

 年齢的には勇退してもおかしくない67歳。改めて、凄い人だと思います。

 今季の新加入選手は現時点で15人。茶髪(金髪など染髪)、長髪、ピアス、刺青(タトウー)は相変わらず禁止。最年長は31歳の藪田光教(前・横浜FC)で、最年少は高卒(予定)3人。一般的に、高卒選手は1人暮らしとコンディション維持の両立が難しいゆえに、寮を持つクラブを除けば、獲得を躊躇することが多いのですが、岐阜は寮こそないながらも「新卒(予定)選手は、スポンサーの協力で集団生活できる環境を整備できた」(クラブ関係者)とのこと。食事の“まかない”がない点が課題ですが、近年はJ1クラブでも即戦力重視の傾向がある中、志の高さを感じます。

 また、アマチュア“2軍”チームの「FC岐阜Second」は、去る10日に岐阜県2昇格を決めました。ジェフ千葉にとってのジェフリーザブズに相当するチームで、今季からトップチームコーチ兼任で辛島啓珠氏(前・松本山雅FC監督)が監督を務めています。

 短期的結果が期待されがちな時期に、地味ながらも長期的構想も感じられるチーム作りを目指す点には、“腰をすえて頑張る”という強い意思を感じます。あとは、どれだけホームタウンの人々に「FC岐阜と共に歩む生活の楽しさ」を伝えていくか。昨季の最多観衆は、J昇格争いの終盤戦ではなく、8月のロッッソ戦で記録した7688人。名古屋のベッドタウンという側面もある地域ゆえ、スポーツ観戦も生活も「名古屋向き」という人も多いからでしょうか、「一気にブーム」とは、いきませんでした。

 2月11日、FC岐阜のファン感謝イベントに行く“ついでに”町を歩いてみました(写真はこちら)。結論からいえば、“サッカーの町”という雰囲気は“ほぼ”ナシ。さすがの今西氏も、J昇格(入会)と経営改善で手一杯だったのかもしれませんが、見方をかえれば、大いなる可能性が残されているということです。

 まず、岐阜駅前は陸橋など大規模な再開発中です。(是非、計画修正して、FC岐阜カラーの緑色に塗装してしいものです。エコの時代にも合います).

 昨季は、JR岐阜駅ビルにチケットやグッズを販売するためのクラブ直営店舗があり、営業する日もあったのですが、他の業者が入っていました。メインではないながらも改札口の脇という立地条件は、クラブPRにつながると期待していたのですが……。(家賃を他に使うということでしょう)

 駅に隣接した高層ビルには、「スノーボードFISワールドカップGIFU/GUJO大会}(2月22日―24日)を告知する大きな垂れ幕。ちなみに、隣の各務原市では男子ホッケー五輪予選開催予定です。(なぜか、地方自治体の多くは短期的国際スポーツ・イベント好きです)

 岐阜駅付近には繊維問屋が多く、かつて栄えた「繊維産業の町」の面影を感じます。もっとも、近年は中国製など割安製品の影響で不況に悩んでおり「テナント募集」という紙が張られた店舗も多数散見しました。(地域活性化は大事な問題です)

 問屋街の先は商店街と飲食店街。日本の地方都市には“よくある”光景ですが、パブ&スナックなど小規模の店の多さには驚きます。(祝杯あるいは苦杯をあげるファンが増えれば、多くの店が潤うということです)

 FC岐阜を応援する横断幕などは、「FC岐阜後援会サロン」と市庁舎以外では、発見できず。その一方で「商店街40周年」小旗は多数。(せっかく記念イヤーなら、よけいに“もったいない”と思いました)

 有名百貨店の表壁には、プロ野球オープン戦を告知する垂れ幕が――。中日ドラゴンズ(中日新聞)文化圏らなではと思いきや、巨人対埼玉西武戦の垂れ幕も。ファン感謝イベント会場(で愛ドーム=体育館)付近でも、同様の光景。隣接した野球場開催だとはいえ、ポスターが掲示されていただけのFC岐阜とはPR効果がまるで違います。FC岐阜のメイン・ホームは野球場の奥なのですが……。

 結局、最も“民間”支援を感じたのは岐阜駅近く、細い通りの入り口付近にあるラーメン屋。2月24日のプレシーズンマッチ「対グランパス戦」の告知ポスターが表壁に張ってある上に、店の前には、「Football Street」いう“手作り”標識(写真)。もっとも、その通りを、延々に歩いても、FC岐阜を感じることは“ほぼ”ありませんしたが……。(今後の楽しみが増えました)

 ところで、「ファン感謝イベント」(写真はこちら)。前座(?)として、岐阜県イベント・スポーツ振興事業団主催で県内の小学生クラブを招いた「サッカー教室」が開催されました。FC岐阜は監督、スタッフ、選手総動員。効果的かつ効率的な指導も見て、プロクラブの存在価値を改めて痛感しました。

 約1時間の練習後は、子供(8人)対FC岐阜選手(5人)でミニゲーム。片山真人(前・松本山雅FC)が持ち前のキャラを”いきなり“発揮写真はこちらするなど、新加入選手にとっては、今後に向けて、良いアピールの場にもなったようです。

「ファン感謝イベント」では、サイン会、記念撮影会、チケット&グッズ販売、選手の私物オークションなどが行われました。サッカー教室と合計で1200人が参加。半数以上がサッカー教室参加の子供と、その親など引率関係者。事前告知しだいでは、もっと一般ファンが集まっただろうに“もったいない”と思いつつ、これ以上増えたら、サインをもらえないファンが出るかもしれないから“ちょうど良いのかも”とも思いつつ……。若手選手が“慣れない?”サインをする様を松永監督が後方から見守り、ファンが持参したシャツを引っ張って、サインをしやすくするなど「指導?」している点が印象的でした。

 ところで、岐阜といえば、自民党所属国会議員2人が有名です。結局、「かつての刺客」佐藤ゆかり氏が東京に転出することになり、「地元出身」野田聖子氏が単独リスタートすることになりました。森山泰行から「(野田氏は)サッカー経験者なんですよ」と聞き、地方活性化が大きな課題である日本国にあって、苦境の自民党にあって、FC岐阜が大事な時期であることは、大チャンスなのに――と、思いました。

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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