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Jを目指せ! by 木次成夫

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第65回「白熱必至! 北信越リーグ展望 まずは長野パルセイロから」
by 木次成夫

MIOびわこ草津(関西)、ファジアーノ岡山(中国)、ニューウェーブ北九州がJFLに昇格した今季、北信越リーグは日本ダントツの群雄割拠になりました。昨季の上位4チーム(松本山雅、長野パルセイロ、ジャパンサッカーカレッジ=JSC、ツエーゲン金沢)を中心に、全国地域リーグ決勝大会出場枠「1チーム」を争う“超”激戦区。熾烈な戦いに期待する一方で、JFAの方々には、是非、「地域決勝」特別出場枠を検討してほしいとも思います。

現時点で最大の驚きは“前Jリーガー”宇野沢祐次(24歳、前・福岡)と富岡英聖(23歳、前・甲府)のJSC加入。専門学校チームとは思えない、破格の強化です。昇格2チーム、「グランセナ新潟」と「サウルコス福井」の戦いぶりも注目です。特に後者は福井県初の「Jを目指す」クラブ。地元の盛り上がりも気になります。

というわけで、まずは……ということで、2月17日、長野パルセイロ対立正大学の練習試合に行ってきました。パルセイロは3日(日精樹脂工業=千曲市にて)、10日(FC岐阜=大垣市にて)と2週連続で雪のために試合中止になっていたので、待望の今季初試合。岐阜戦に至っては、「Jと試合をする機会は、あまりないですし、前日入りしていたので残念でした」(土橋宏由樹・写真)。バスで往復したガソリン代と宿泊費も無駄になった点も、クラブとしては「痛かった」でしょう。ちなみに、立正大学は東京都大学リーグ1部所属ですが、監督派遣などでジェフ千葉と提携するなど、強化に積極的です。試合会場は埼玉県熊谷市にある同大学グラウンド(人工芝)。恵まれた環境に驚きました。

この日、最大の注目はMF土橋宏由樹(30歳)。昨季は山雅主将として優勝に貢献しながら「コーチ就任をオファーされた」(土橋)ため、現役続行を目指して退団。そして、2月5日にパルセイロ加入発表。以来、動向が気になっていました。残念ながら試合には出場しませんでしたが、例えば、試合後には籾谷真弘(26歳、前・草津)に具体的なプレーを例にアドバイスするなど、持ち味を発揮。山雅在籍時は、ファンや下部組織の子供たちに抜群の人気があった選手ゆえ、リーグ戦は得失点差の差で2位ながら、人気面では“かなり”山雅に劣るパルセイロを、どう変えていくかという点でも楽しみです。

試合を見て、プレー面での土橋への期待も高まりました。昨季、パルセイロはFW要田勇一(30歳、前ジェフ千葉)、ボランチ貞富信宏(28歳、前アルテ高崎、元・湘南など)、CB籾谷真弘を軸にチームを作りました。登録選手は“わずか”19人。限られた予算をいかに使うかという点でも、興味深い強化策でした。

基本フォーメーションは3-4-3。スピーディで攻撃的ながら、大雑把なサッカーになりがちな点が気になりました。トップ下に土橋のように“溜め”が作れる上に、ワンタッチでリズムを変える能力のある選手がいれば、はるかに良いチームになるのではないか――。昨季感じた印象は、現在もかわりません。サイドからの“しかけ”が得意な要田、ミドルレンジの“散らし”が魅力の貞富に土橋が加われば……。少なくとも、見ていて楽しそうです。

土橋の他にもパルセイロは効果的(と感じる)強化をしています。まず、新加入「第1号」はCB丸山良明(33歳、前・仙台)。籾谷は闘志溢れ(すぎ)るゆえか、安定感に欠ける面もあった上に、昨季の主力DF1人が退団したので、“わかりやすい”補強です。帝京高校時代は小峯隆幸(FC岐阜)と共に活躍し、横浜FM、山形でもプレーした経験があります。昨年12月の「第1回Jリーグ合同トライアウト」にも参加していました。チーム関係者いわく「獲得の決め手は頭の良さ。他のクラブにとられたくないので、トライアウトでの出来が悪いことを期待していたんですよ(笑)」。立正大学戦では3本目のみの出場でしたが、早速、持ち前の統率力を発揮していました。

薩川了洋(35歳、前・柏レイソル)のコーチ就任も「大ヒット」かもしれません。現役時代のポジションはCB。全日空→横浜フリューゲルス→柏でプレーし、Jリーグ通産311試合出場。若手からの人望が厚い上に、ファンサービスにも気を配る選手でした。05年シーズン終了後に引退してレイソル・フロント入り。昨季まで普及部コーチを務めていました。パルセイロへはレイソルから“出向”、つまり、レンタル移籍みたいなものですが、「話があったのは1月になってから」(薩川)。柏としては将来の幹部候補生ゆえ“勉強して来い”ということでしょうが、急な話です。立正大学戦では、マメにメモをとっている姿が印象的でした。土橋いわく「バドゥ監督(ブラジル人、98年“ジョホールバルの奇跡”時のイラン監督)は普段、英語で話すので伝わりにくい面もあるんです。だから、(薩川コーチは)選手とのコミュニケーションという点で大活躍ですよ」。

開幕まで、あと約2カ月。立正大学戦時点で新加入5人。退団選手は7人ゆえ、まだ足りません。同大学戦では“テスト生”数人がプレーしました。今後、左サイドアタッカーが獲得できればベターだと思います。主力の高齢化を考慮すれば、20代中盤以下がベスト。言い方をかえれば、サイドで良い人材を獲得できなければ、あるいは既存選手がサイドで新境地を発揮しなければ、土橋らの持ち味も出し切れない(かもしれない)上に、リーグ随一の高齢チームになってしまいます。

いずれにせよ、山雅との信州ダービーは昨季以上に盛り上がるでしょう。せっかくですから、クラブ幹部の方は地元出身他県在住者も潜在的なファンであるということを“もっと”意識すれば良いのに、と思います。“里帰りダービー観戦”をPRして、ついでに“高校OB戦大会”を企画するとか、信州名物販売フェア(スポンサーのひとつ、唐辛子はいうまでもなく)をスタジアム脇でするとか。土橋らの加入で昨季よりも人件費は増えるでしょうから、観客増対策は重要な問題のはずです。

ところで、先週末、長野県は「ロゴとキャッチフレーズ(つらなる つながる信州)」を発表しました。「松本山雅FCと似た」緑色、と白で構成されている点が気になります。

<写真説明>長野パルセイロ、新加入のMF土橋宏由樹

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。編集部事情により更新が遅れましたことをご報告致します。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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