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Jを目指せ! by 木次成夫

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第68回「JFL展望」
by 木次成夫

Jリーグには、J2を“まずは”18チーム、“将来的には”22チーム程度まで拡大する構想があります。基本的には、経営面で安定したクラブが「Jリーグ準加盟」承認後にJFL4位以内になれば、「J参入」できます。

現在、「準加盟」は5クラブ。栃木SC、ガイナーレ鳥取(ともに昨季開幕前に承認)、ファジアーノ岡山(昨季途中に承認)、カターレ富山、ニューウェーブ北九州(ともに今年2月に承認)です。

地域リーグ所属クラブを含めて、J参入“早いもの勝ち”競争の様相を呈してきました。やがて、J2とJFL間の「昇降格」規定を決めなければならない時期が訪れるでしょう。“定数に達したので、倒産、統合などでチーム数が減少した場合だけ、募集する”というわけにはいかないでしょうから……。

JFLは3月16日に開幕します。以下、注目チームなど――。

●カターレ富山(昨季4位のアローズ北陸と、同6位のYKK APが統合)

ベースになった2チーム以外からの新加入選手は5人(すべて前Jリーガー)。戦力的には「4位以内」になって、当然。注目は観客数。昨季のホーム平均はアローズ=649人、YKK=745人。「Jを目指す」ヴァリエンテ富山(昨季北信越1部6位)は無料にも関わらず、“せいぜい”数百人でした。“相対的に強い”チームが「Jを目指す」ことで、一大ブームが訪れるでしょうか。

●横河武蔵野FC(同7位)

JR三鷹駅(東京都武蔵野市)近くにある横河(ヨコガワ)電機の社員と、一般アマチュアの混合チーム。夜間練習にも関わらず、昨季は「Jを目指して」積極的強化を進めた栃木SC、ガイナーレ鳥取よりも好成績を残しました。下部組織もあり、昨季から始まった「U-13 Jリーグ」にも参加しています。三鷹駅、吉祥寺駅付近の商店街にはクラブの小旗が掲げられています(写真)。「Jリーグの理念」はJFLでも十分に体現できるのかもしれないとすら感じさせるクラブです。小粒な選手揃いながらも、見ていて楽しい“つなぐ”(昨季の)サッカーは、小規模ながらも個性のある飲食店や商店が多い「地域」と似た魅力がありました。主力2人がガイナーレに移籍した今季は、戦力ダウンも懸念されますが、どこまで“相対的”ビッククラブに対抗できるか、注目です。「Jは目指す価値があるのか」という点でのバロメーター的存在としても――。

●栃木SC(同8位)

一昨季(7位)まではアマチュアチームでしたが、昨季からプロ契約を導入。今季は柱谷幸一監督(昨季途中就任)のもと、選手、コーチングスタッフ全員がプロ契約。選手28人中、新加入は20人(前Jリーガー10人、元Jリーガー1人、前JFL所属1人、大学新卒8人)。加入3年目以上の選手は、わずか3人。スポンサーをはじめ支援が飛躍的に高まったということでしょうか、大改革です。ちなみに、昨季のホーム平均観客数は4457人で1位(2位=ロッソ=3568人、3位=岐阜=3529人)。今季は観客倍増、ダントツ人気での「J参入」となれば理想的なのですが……。

●ガイナーレ鳥取(同14位)

昨季は全員プロ化、平日練習に移行する大勝負に出たものの低迷。今季は、いっそうの強化を敢行。小村徳男(38歳、前・横浜FC、元・日本代表)、吉野智行(27歳、前・横浜FC、ユース時代は日本を代表するスター)ら12人が加入しました。また、ホームを米子市から鳥取市へ移転。昨季のホーム平均観客数は5位の1755人(4位は琉球=2443人)。チーム強化とホーム移転が、人気増にどれだけ結びつくでしょうか。

●FC琉球(同17位)

元・日本代表監督のトルシエ氏が総監督に就任し、監督は同氏の“知り合い”ラピエ氏(フランス人)。新加入23人。“トルシエ効果”を早く見たいです。

以下、昇格3チーム。昨季の実力は“ほぼ”互角。今季に向けて、それぞれ大補強はしませんでした。“期待はずれ”と感じたファンも多いかもしれませんが、昨季のチームがベースということは、完成度が高いということ。“予想外に”健闘するかもしれません。

●ファジアーノ岡山

補強は大学新卒中心に10人。FW小林康剛(29歳、前・徳島)を除くと、試合出場メンバーは昨季と“ほぼ”同様のスタートになるでしょう。とはいえ、FW喜山康平(20歳、東京Vからレンタル2年目)、MF小野雄平(22歳、前・東京V=2年目)ら、成長段階世代が多いので、チーム力アップは十分に期待できます。昨季の佐川急便中国戦(入場料無料)では9252人が集りましたが、実は「集計ミスで、1万人以上いた」(関係者)そうです。入場料有料の今季、“財布のヒモがかたい”といわれている岡山県民の判断が気になります。

●ニューウェーブ北九州

新加入は“わずか”4人で総勢23人。就任2年目の与那城ジョージ監督のもと、FW藤吉信次(37歳、元・読売クラブなど)、MF小野信義(33歳、元・V川崎など)、DF桑原裕義(36歳、元・広島など)ら、昨季活躍したベテラン中心です。ファジアーノ同様、成長段階世代が多いので、今後、良い形で世代交代していくことが、重要テーマでしょう。相対的に見れば、自治体を含めて地元の支援に恵まれたクラブゆえ、地域全体が盛り上がるかという点も注目です。

●MIOびわこ草津

新加入は11人ながら、主力は“ほぼ”昨季同様。現役引退1年目の平岡直起(34歳、前・岐阜、元G大阪など)新監督の采配ぶりが楽しみです。昨季途中に戸塚哲也氏が監督就任した後は、地域リーグ随一の“つなぐ”華麗なサッカーを展開しましたが、平岡監督も“つなぐ”サッカーを志向しているようです。ホームは近隣の湖南市「市民グラウンド」。昨季は“サッカーの質の高さ”と“ファンの少なさ”のギャップという点で日本随一でしたが、待望の“太鼓を打ち鳴らして、応援コールをする”ファンも登場したとか。


3月16日、JFL第1節の対戦カードは以下の通り。
キックオフは全試合13:00

SAGAWA SHIGA 対MIOびわこ草津(佐川守山)
滋賀ダービー! です

カターレ富山対NW北九州(富山)

Honda FC対ファジアーノ岡山(都田)

横河武蔵野FC対アルテ高崎(国立)
クラブ初の国立競技場開催!

栃木SC対FC琉球(栃木G)

ジェフリザーブズ対FC刈谷(中台=成田)

流通経済大学対三菱水島FC(カシマ)

ソニー仙台FC対ガイナーレ鳥取(ユアスタ)

佐川印刷SC対TDK SC(太陽が丘)


※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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