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Jを目指せ! by 木次成夫

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第70回「JFL前期第3節 MIOびわこ草津」
by 木次成夫

JFLは3節を終えた時点で、ファジアーノ岡山、MIOびわこ草津(以下MIO)、そしてニューウェーブ北九州(以下NW)の「昇格3チーム」が大健闘しています。

●第1節
(3月16日)
SAGAWA SHIGA FC(昨季優勝)1-2 MIO
カターレ富山 2-2 NW
Honda FC(昨季5位) 2-3 ファジアーノ
※カターレはアローズ北陸(昨季4位)とYKK AP(同6位)の統合チーム。

●第2節
(3月20日)
MIO 1-1 佐川印刷SC(同12位)
ファジアーノ 3-2 カターレ
NW 1-1 SAGAWA SHIGA

第3節(3月23日)
MIO 1-0 NW
SAGAWA SHIGA  1-2 ファジアーノ

ファジアーノ=3勝=2位(1位は得失点差で栃木SC)、MIO=2勝1分け=4位。NW=2分け1敗=11位。

それぞれ初ホームだった2節の観衆はMIO=687人(主催者発表、以下同)、ファジ=3025人、NW=959人。3節のMIO対NWは780人。

MIOの“多さ”には驚きです。昨季は入場料無料にも関わらず、せいぜい200人だったのですから。今季のチケット料金は、

一般・高校生
1000円(前売り800円)
小中学生
500円(前売り400円)

JFL18チーム中、ファジアーノ、NWを含む14チームが「一般1000円(当日)」です。ちなみに、ファジアーノは高校500円(前売り400円)で小中400円、NWは小中高500円(前売り300円)。つまり、MIOの高校生料金は「昇格3チーム」では“割高”です。

MIOは今季、草津市の東南に位置する湖南(コナン)市の「湖南市市民グラウンド陸上競技場」を使用しています。湖南市は人口約5万6000人(草津市は約11万8000人)。競技場最寄り駅はJR草津線三雲で草津から約20分。競技場は、“湖南工業団地”内にあり、三雲駅からコミュニティバス“ふれあい号”で約10分。1時間に1便しかないのが、今後の課題ですが……。3月23日、対NW戦では、予想以上の光景に驚きました。

まず、約10人ながらも、太鼓を打ち鳴らして選手コールをするファンがいました。初登場は「2月の西日本大会(22日―24日)」(MIO関係者)だとか。

開幕前に作られた“MIO応援歌”も流されていました。ノリの良い曲です。

特設の売店もありました。焼きソバなどの飲食物、クラブ公式グッズの他、地元土産も販売(上の写真)。平成16年に石部町と甲西町が合併して、湖南市になったのですが、石部は東海道五十三次の「宿場」のひとつ。湖南市という「自治体」の存在を含めて、MIOを“きっかけ”にPRしようということでしょう。

さらには、昨季はなかったスポンサー・ボードも多数ありました。うち、ひとつは昨季のユニフォーム胸スポンサーで、今季の胸スポンサーはナシですが……。JFL昇格効果という点では、MIOほど変わったチームは近年、稀だと思います。

幸いにも、MIOはホーム初勝利を飾りました。NWの“高い位置からのプレス”に苦しんだものの、後半36分にFW内林広高(24歳、元・G大阪など)が決勝ゴール。MIOにとっては後半唯一(通算4本目)のシュートでした。対するNWのシュートは合計13本。MIOは攻撃の中心、MF冨田晋矢(27歳、前・京都など)が出場停止だったため、劣勢は予想していましたが……、内林の勝負強さには驚きました。

内林は湖南市出身で、草津東高校時代は全国選手権でも活躍した選手です。地元のスターがチームをホーム初勝利に導いたわけですから、MIO関係者にとっても、ファンにとっても“最高の結果”でしょう。

ちなみにMIOの選手の多くはアマチュアで、練習は夜間です。Jクラブからのレンタル選手(石澤典明=ヴィッセル神戸、三戸勇志=京都)を除くと、プロ契約は高校新卒のブラジル人FW、アラン(日本航空二校=石川県)だけ。アランは第1節、第2節で得点を決めるなど大活躍していますが、去る1月の「JFLトライアウト」に参加した際、MIOの目にとまったのだとか。パスを受ける前の動きは、“ほぼ素人”ですが、パスを受けた後の突破力は抜群です。一般的にJFL以下のクラブは、“寮がない”などの理由で高卒選手獲得を躊躇することが多いのですが、幸いにもMIOには“賄い付き”の寮があります。寮長(?)の東広樹コーチいわく「自分が責任をもって面倒を見るから、アランを獲得してほしいとクラブ側にお願いしました」。

試合会場では、ベンチ入りしなかった選手がチケットやグッズ販売をするなど、運営を手伝っていました。そして、試合後には、即席サイン会。その近くでは、売店の焼きソバなどを食べる選手の姿も……。3節を終えて、勝ち点7。すでに昨季のアルテ高崎のシーズン通算勝ち点に並びました。今後、遠隔地でのアウェーが始まりますが、自前のバスではなく、飛行機での移動もできるようになったとか。

小さな町の小さなクラブが徐々に育っていくプロセスは、見ていて、楽しいです。福田首相にも是非、見てほしいくらいです。

新幹線や高速道路などの整備により、多くの歴史的「交通の要所」の状況が変わりました。
今後も、地域活性化どころか「どちらかというと、人や物が通りすぎるだけ」という町を生み出しかねません。富山でカターレ対NW戦を見た際にも感じましたが、「道路特定財源」よりも、「バス、普通列車、路面電車限定公共交通特定財源」を設けたほうが、はるかに人々のためになるのではないかと思いました。

ところで、「昇格3チーム」が健闘する一方で、カターレが苦戦しています。開幕前は「勝って当然」と書きましたが……。プレッシャーが要因のひとつかもしれません。チームは「Jを目指す」とはいえ、YKK APとアローズ(北陸電力)時代からの選手は「アマチュア登録」。主将の濱野勇気(29歳)に聞いたところ、「(YKK APから)出向です」。仕事とサッカーを両立させていた昨季までと比べると、サッカーに専念できる環境は“向上”ということになりますが、企業の福利厚生と“一気にJを目指す県民チーム”では、“背負うもの”が大きく違います。

JFL前期第3節
(3月23日)
カターレ富山 2-1 アルテ高崎
※観衆4048人。第1節のNW戦は10704人。激減が気になります。

Honda FC(昨季5位) 1-0 FC琉球(同17位)
※トルシエ総監督率いる琉球は、3連敗。

横河武蔵野FC(昨季7位) 2-2 FC刈谷(同16位)

栃木SC(同8位) 5-0 三菱水島FC(同15位) 
※観衆4275人。第1節は6338人。

流通経済大学(同10位) 1-1 TDK SC(同13位)
ソニー仙台FC(同11位) 5-1 佐川印刷SC(同12位)

ガイナーレ鳥取(同14位) 0-1 ジェフリザーブズ(同9位)
※観衆2156人(雨天)。第2節の初ホーム、流経大戦(3-1で勝利=3056人)。

MIOびわこ草津(今季昇格)1-0 ニューウェーブ北九州(今季昇格)
SAGAWA SHIGA FC(昨季優勝) 1-2 ファジアーノ岡山(今季昇格)

現在の順位
1位=栃木
(勝ち点=以下同=9)
2位=ファジアーノ(同9)
3位=横河武蔵野(同7)
4位=MIO(同7)
5位=ソニー仙台(同6)
6位=Honda(同6)
7位=ガイナーレ(同6)
8位=刈谷(同4)
9位=カターレ(同4)
10位=ジェフ(同4)
11位=NW(同2)
12位=流経大(同2)
13位=TDK(同2)
14位=佐川印刷(同2)
15位=三菱水島(同2)
16位=SAGAWA SHIGA(同1)
17位=琉球(同0)
18位=アルテ(同0)

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想をこちらまでお寄せください。

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