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Jを目指せ! by 木次成夫

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第73回「北信越リーグ開幕」
by 木次成夫

4月13日、北信越リーグが開幕しました。JR松本駅の改札を出ると、松本山雅の旗が多数掲げられていました。「信州松本から目指せ! Jリーグ!!」。駅付近の繁華街も同様。サッカーに興味のない人でも、”山雅”の存在に気づく(可能性が高まった)という点で、PR効果は抜群だと思います。Jクラブのある町では珍しくない光景ですが、1年前の松本と比べると隔世の感があります。

第1節の結果は以下の通り。

松本山雅(昨季優勝) 0-0 サウルコス福井(同2部2位)

長野パルセイロ(昨季2位) 3-1 グランセナ新潟(同2部1位)

ジャパンサッカーカレッジ(昨季3位) 5-1 ヴァリエンテ富山(同6位)

ツエーゲン金沢(昨季4位)10-1 フェルヴォローザ石川・白山(同5位)

山雅が予想外の引き分け。つまり、サウルコス大健闘。サッカーの難しさと同時に醍醐味を感じさせる試合でした。

山雅はスタメン中、新加入選手7人。

GK原裕晃(前・栃木SC)
右SB金澤慶一
CB矢畑智裕
CB三本菅 崇
左SB阿部琢久哉(前・TDK)
右MF鈴木亮平
(前・モンデディオ山形)
ボランチ大西康平(前・YKK AP)
ボランチ川田和宏
(大分トリニータからレンタル)
左MF阿部 孝(前・大原学園JaSRA=北信越2部)
FW小澤修一
FW吉田賢太郎(前・栃木SC)

阿部孝以外は、いわば“格上”からの移籍です。対するサウルコスはスタメン中、新加入5人ながら、山雅に比べると、はるかに地味なメンバー揃い。「Jを目指す」クラブながら、現状は全員アマチュアで平日夜間練習。その上、冬場から春先にかけては、気候の関係で十分な練習ができません。ですから、たとえサウルコスが健闘したとしても、最終的にはスタミナなど地力の差で山雅が勝つだろうと予想していたのですが……。守備重視カウンター狙いのサウルコス“快心の”引き分け。山雅の出来が悪かったというよりは、サウルコスは個人能力の差を考慮した上でベストの戦術を模索し、全うできる“大人のチーム”でした。

ただ、山雅の今後を悲観的だとは思いません。それどころか、“つなぐ”サッカーをベースにしつつも、様々な策を試す様を見て、潜在能力の高さを感じたほどです。例えばCBからFWへのロングパス、あるいは(昨季に比べるとダイナミックな)サイドチェンジパスなど、相手守備陣への揺さぶり。もともと“引いたり”、サイドに“流れたり”するプレーが得意な2人がトップを組んだため「ボールが落ち着かなかった」のは事実ですが、“流動的なサッカーへの途上”と解釈することもできます。実際、フリーランニングでスペースを作り、他の選手が、そのスペースを狙うシーンもありました。

いわば今は、土橋宏由樹(現パルセイロ)が軸だった昨季よりもスケールアップしたチームになるための「産みの苦しみ」。個々の能力で長けた選手たちが、「1人に依存しない」多彩な攻撃を構築するための発展途上。昨季の王者ゆえに、今後も守備重視で臨んでくるチームが多くなる可能性を考慮すれば、長期的に見て価値のある「苦戦」だったとも思います。今後、控え選手のモチベーションが高まることは必至ですし、新加入“格上”選手も危機感を持ったでしょうから。

ところで、今季、北信越リーグは3クラブが試合有料になりました。料金と、第1節の入場者数は以下の通りです。

●ツエーゲン金沢(1515人)
一般=大人1000円(前売り800円)=昨季の2倍、高校生以下無料。

●長野パルセイロ(2061人)
一般=大人500円、小人200円=昨季同様。未就学児無料

●松本山雅(2405人)
一般=高校生以上600円(前売り500円)=今季から有料化、中学生以下無料。

まずは3クラブとも上々の結果ではないでしょうか。例えば山雅が試合をしたアルウィンは曇り時々小雨まじり。予想以上の多さに驚きました。“サッカーは(勝敗)結果がすべて”という人が多いですが、“強くなればファンが増えるとは限らない”ということは、「J参入」あるいはJFL昇格を果たしたチームが証明しています。

北信越3試合の観衆数の多さは、日本随一の“Jを目指す”群雄割拠ゆえの相乗効果の賜物だと思います。言い方をかえると、昇格に“多少”時間がかかったとしても、観戦文化熟成は、将来的にそれぞれのクラブの大きな財産になるのではないでしょうか。そういう意味では、“1部リーグ唯一の福井県勢”サウルコスの大健闘も幸いです。地元の潜在的ファンへの刺激にもつながったでしょうし……。

ただ、今年の問題のひとつは、全国地域リーグ決勝大会決勝ラウンドが沖縄県石垣島開催予定だということ。出場クラブにとっても、ファンにとっても移動経費という点で痛すぎます。また、「Jを目指す」ムーブメントが各地で盛り上がっている状況下、なぜ、多くのファンが行きにくい地を選んだのか、理解できません。


Jを目指すクラブの動向
●関東リーグ
(第2節、13日)

町田ゼルビア(昨季優勝) 3-2 クラブ・ドラゴンズ(今季昇格)

*ゼルビア2連勝も、予想外の苦戦。クラブ・ドラゴンズは流通経済大学のサード・チーム。

●四国リーグ
(第2節、13日)

昭和クラブ 3-10 カマタマーレ讃岐(昨季2位)

讃岐2連勝。昨季同様、ヴォルティス2ndとの“ダントツ二強”争いか?

●関西リーグ
(第1節、12日)

バンディオンセ加古川(昨季優勝)3-0 ディアブロッサ高田(今季昇格)

●北信越リーグ2部
(第1節、13日)

アンテロープ塩尻(昨季4位)2-1 CUPS聖籠(昨季5位)

※CUPSはジャパンSCのセカンドチーム

▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。このたび更新が遅れました。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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