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Jを目指せ! by 木次成夫

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第74回「九州リーグ3節 V・長崎“今季初ホーム”編」
by 木次成夫

上の写真は、4月20日、V・ファーレン長崎対OSUMI NIFS UNITEDのハーフタイム・イベントです。長崎県出身の歌手、さだまさし氏の曲「がんばらんば」に、振り付けを創作した県民体操“がんばらんば体操”。去る3月に完成発表されたばかりで、今後、“県民スポーツ課”がPRしていくようです。是非、V・ファーレン選手にも覚えてもらい、アウェーを含めて、ピッチ練習前の「恒例」にすれば良いのでは? と、思いました。

V・ファーレンは昨季、ニューウェーブ北九州(06年3位、今季JFL昇格。以降NW)、ホンダロック(06年JFL最下位)に次ぐ3位。全国社会人選手権では準決勝でMIOびわこ草津に0-1で敗れ、全国地域リーグ決勝大会進出を逃しました。

06年は全国地域リーグ決勝大会4位。つまり、04年のチーム発足以来、初の“後退”でした。昨季のリーグ成績は16勝3敗1PK勝ち。NWには1PK勝1敗。ホンダロックには1勝1敗。2位のホンダロックとの勝ち点の差は、2(NWとは4)。アウェーの沖縄かりゆしFC戦で“まさかの”敗退を喫したのが、響きました。リーグ通算79得点、17失点。フィジカル面で相対的に優れた選手が多いためか、例えばNW(59得点、8失点)に比べると組織的“緻密さ”に欠けていたという印象があります。

今季は新加入選手10人。レンタルから完全移籍、1人。監督に東川昌典氏(43歳、前・愛媛FCユース監督)を招聘。現役時代はヤマハ発動機(→ジュビロ磐田)、ホンダでプレーした経験のある方です。また、強化育成部長には地元・島原商業出身で、アビスパ福岡監督経験がある中村重和氏が就任。
つまり、クラブ側はチームを3シーズン率いてきた岩本文昭氏(39歳、長崎銀行員、国見高校出身)では“無理だ”という判断をしたことになります。

ちなみに、岩本氏は勤務先からの”派遣“という形で事業部長に就任しました。OSUMI戦ではボランティアを含めたスタッフらに様々な指示しつつ、自ら率先してゴールやスポンサー・ボードの撤去作業をしていました。そんな様を見て、クラブの未来につながる「大ヒット」人事かもしれないと思いました。国見高校のスターが「地元のために頑張る」ことは、自治体あるいは財界トップダウンの「地域振興策」とは違った効果が期待できます。サッカーを知っている銀行員がスポンサー営業もしつつ、クラブ末端の仕事も経験すれば……将来的には、日本随一のGMになれるのでは?   

OSUMI戦のスタメン中、新加入選手は3人でした。フォーメーションは昨季途中から3-5-2でしたが、今季は4-4-2。

GK:近藤健一(24歳、国見高校出身、前FC東京) 
右SB:隅田 航(19歳=新加入、京都サンガからレンタル)
CB:久留貴昭(27歳、前・佐川急便大阪)
CB:伝庄 優(23歳、前・道都大学)
左SB:田上 渉(25歳、国見高校出身、前・大阪商大)
右MF:大塚和征(25歳=新加入、前・福岡)
ボランチ:原田武男(36歳、国見高校出身、元・横浜Fなど)
ボランチ:竹村栄哉(34歳、前・鳥栖)
左MF:川崎元気(29歳=新加入、前・バンディオンセ神戸)
FW :有光亮太(27歳、前・福岡)
FW:福嶋 洋(25歳、前・熊本)

主将の山形恭平(26歳=新加入、前・福岡)が竹村に代わった以外は、1節、2節と同様でした。結果は4-0で、V・ファーレンが開幕3連勝(選手写真は最新NEWS「04.20 V・ファーレン長崎選手特集」)。得点者は有光、福嶋(2点)、山形。最終的には地力の差が出ましたが、OSUMIの健闘も光った試合でした。同クラブは鹿児島県大隈半島が“ホーム”で、昨季8位。メンバーは鹿屋体育大学生が中心ですが、社会人やクラブ下部組織出身選手もいます。相手との力関係を理解した上で、ベターな守備的サッカーを実践した点に、日本サッカー全体の戦術理解度が高まっている「成果」を感じました。

V・ファーレンは“つなぐ”サッカーへの移行中ながらも、個々の能力が相対的に高いゆえに個人プレーに頼ってしまうこともある、という印象です。つまり、今後、チームとして強くなる余地だらけ。隅田がFWからSBにコンバートされたり、後半途中出場した園田清次(左SB=19歳、東京Vからレンタル。ルーテル学院=熊本=出身。元U―18日本代表)が左MFでプレーしたり、「若手Jリーガー」の再チャレンジも楽しみです。

ところで、この試合はV・ファーレン“今季初”ホームでした。V・ファーレンはホーム開催試合有料で、大人・一般800円(前売り600円)、中高生・一般400円(前売り300円)、小学生以下無料。会場の長崎県総合運動公園陸上競技場(諫早=イサハヤ=市)には、3267人(主催者発表)が集まりました。

例えば、同じ日に開催されたJFLのNW対FC刈谷戦の観衆は725人。大人・一般1000円とはいえ……、JFL昇格が人気上昇に結びついていません。その一方で、MIO対アルテ高崎戦は1860人。昨季は無料でも観衆200人程度だったクラブが、です。

OSUMI戦では選手入場に合わせて、クラブ・カラーのボードを掲げる“初めての”ビジュアル・サポートが行われました(最新NEWSに掲載)。試合中には、Jリーグでは禁止しているクラブもある“トランペットを使った”応援も! ファンの要望を聞いた岩本氏が関係者と交渉して、OKしたのだとか。「高校サッカーの試合ではブラスバンドなど楽器を使った応援は盛んなのに、地域リーグではダメだとはいえない。理由を説明できません」(岩本氏)。熱血系の岩本氏らしいです。

偶然ですが、“長崎と歴史的関係が深い”オランダで、トランペットを使った応援に遭遇したことがあります。プレーのリズムが停滞する中、トランペットの音が鳴り響き、その音に呼応し、スタジアム全体が手拍子で活気付いていったのです。ロッテルダム・マラソンでは、各地から集まった少人数編成のマーチング・バンドを多数、見たことがあります。

いわば「オランダ名物」トランペット&マーチ。今後、V・ファーレン「名物」にするのも良い策では? 

ところで、V・ファーレンにはクラブ公認ライセンス商品があります。例えば、この試合から「V・ファーレンスナック第2弾」が発売。全国的に有名な“ベビースター・ラーメン”風スナックの「皿うどん」版で、クラブ・スポンサーのひとつ、東洋軒(本社=諫早市)が製造、販売しています。選手写真付きトレカが1枚入っている点も特徴です(最新NEWSに掲載)。

このトレカは試合後の即席サイン&交流会でも役立ちます。“シャワーを浴びる時間もないのでは?”と思うほど、選手たちが短時間で登場したことに驚きましたが、恒例のことだとか。ファンからすれば、待ち時間が少ない点で、幸いの策です。汗臭さを嫌う人はファンになっていないでしょうし……。

昨季JFL昇格を逃したことは痛恨でしょうが、見方を変えれば、V・ファーレンを追い抜いた「先陣」を見て、学ぶ時間があるということ。それは、トップチーム強化だけでの問題ではありません。ハーフタイム・イベントなど、いかにV・ファーレンを利用するか。いかに試合を盛り上げて、新たなファンを呼び寄せるか。様々な人の様々なアイディアがあってこそ、試合プラスアルファの魅力が生まれ、クラブは「地域密着していく」のだと思います。

そういう意味で、初ホームは楽しかったです。帰路、空港でスナックはじめ、V・ファーレン関連商品を売っていなかったのが、“想像通り”で、残念でしたが……。「一度来れば、ある程度満足する」名所と比べると、「もう1回(何回も)来たくなる(かもしれない)」点で、V・ファーレンの“存在”はチャンスだと思います。


Jを目指すクラブの動向

●関東リーグ
(3節、19日)
町田ゼルビア(昨季優勝) 3-2 さいたまSC
*ゼルビア3連勝

●北信越リーグ1部
(2節、19、20日)
サウルコス福井(昨季2部2位) 3-4 長野パルセイロ(同1部2位)
グランセナ新潟(同2部1位)1-1 松本山雅(同1部1位)
フェルヴォローザ石川・白山(同1部5位)0-4 ジャパン・サッカーカレッジ(同1部3位)
ヴェリエンテ富山(同1部6位) 0-2 ツエーゲン金沢(同1部4位)
*山雅“まさかの”2連連続引き分け。パルセイロ、ジャパンSC、ツエーゲンは連勝

●北信越リーグ2部(2節、20日)
アンテロープ塩尻(昨季4位)3-1 丸岡フェニックス(昨季6位)

●四国リーグ
(3節、20日)
ベンターナAC 0-5 カマタマーレ讃岐(昨季2位)
しまなみFC 0-0 徳島ヴォルティス・2nd(昨季優勝)
南国高知FC 6-0 昭和クラブ
*讃岐3連勝で単独首位。南国高知は今季初勝利(1勝1分け1敗)

●関西リーグ
(2節、19日)
阪南大クラブ 1-4 バンディオンセ加古川(昨季優勝)
*バンディ連勝

●中国リーグ
(1節、20日)
デッツォーラ島根(昨季2位) 3-1 JFE西日本(同7位)
レノファ山口(同3位)1-1 ヤーマン宇部(今季昇格)
*デッツォーラは前「セントラル中国」

●九州リーグ
(3節、20日)
ヴォルカ鹿児島(昨季5位) 3-2 沖縄かりゆしFC(同6位)
ホンダロック(同2位)6-0 海邦銀行SC(同8位)
新日鐵大分(同4位)5-0 三菱重工長崎(同5位)
九州INAX(今季昇格) 0-2 ヴァンクール熊本(今季昇格)
*ヴォルカ、ホンダロック、新日鐵、V・ファーレンが3連勝

▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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