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Jを目指せ! by 木次成夫

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第77回 「北信越3節 松本山雅対ヴァリエンテ富山」
by 木次成夫

 当たり前のことですが「強いチームを作るのは難しい」と痛感します。例えば――。

10日
JFL11節
横河武蔵野1-0栃木SC

「全員アマチュア」の武蔵野が、39分にゴールを決めて「全員プロ」の栃木に勝利。それも、滅多に見られないといっても過言ではないほど「教科書通り」の得点でした。まず、左MFの林俊介(22歳=今季加入、前・東京学芸大)が左サイド自陣ライン際から縦へロングフィード。サイドに流れてパスを受けた高橋周大(FW)が、内の太田康介(ボランチ)へパス。大田が“さらに”内へ流し、走りこんだ林が豪快にシュート。後半、栃木の「個の力」を活かしたパワープレーに苦戦したものの、しのぎ切りました。

11節を終え、武蔵野は勝ち点29で首位。以下、2位=Honda(同27)、3位=ファジアーノ岡山(同26)、4位=栃木(同25))、5位=刈谷(同18)、6位=MIO(同18)、7位=SAGAWA SHIGA(同17)、8位=ニューウェーブ北九州(同17)、9位=カターレ富山(同15)……12位=ガイナーレ鳥取(同11)、13位=FC琉球(同11)。


11日
九州リーグ5節
V・ファーレン長崎 0-0(PK8-9)沖縄かりゆしFC

V・ファーレンは昨季3位で、かりゆしFCは同6位。昨季のアウェーに続き、今季はホームで“痛恨の”敗退。ちなみに九州リーグは、90分で勝敗がつかない場合、PK戦に突入します。そして、PK勝ち=勝ち点2、PK負け=勝ち点1。当然ですが、PK戦の有無は戦い方に大きな影響を与えます。なぜ、“独自ルール”なのか、疑問も感じます。

11日
北信越リーグ3節
松本山雅 3-2 ヴァリエンテ富山

昨季の王者、松本山雅が苦戦しています。開幕のサウルコス福井(昨季2部2位)戦、2節のグランセナ新潟(同2部1位)戦に連続引き分け。そして、ヴァリエンテ(同1部6位)戦も大苦戦。山雅ファンには申し訳ないですが、ヴァリンテの健在を嬉しく感じた試合でした。

昨季は「Jを目指して」1部に昇格したものの8チーム中6位に低迷。シーズン中に主力の木場昌雄(元・G大阪など)がMIOびわこ草津、三好拓児(元・アローズ北陸など)がFC琉球に移籍した他、選手登録料支払いが遅延するなど、クラブ運営でも苦戦しました。そして、今季は同じ富山県のYKK AP(昨季JFL6位)とアローズ北陸(=北陸電力、同4位)が統合して“ビッグクラブ”カターレ富山が誕生。例えば、11日の流通経済大学戦は観衆2008人と、成績だけでなく、観客動員という点でもカターレは苦戦していますが、地域を代表する企業が多数、スポンサーになっています。つまり、ヴァリエンテは昨季以上に地味な存在になり、「Jへの道」も“いっそう”遠くなったわけです。

福島県に同じスペル(VALIENTE)ながらカナ表記が違う、バリエンテ郡山が誕生(今季、県3部に参戦)したことも、動向が気になっていた理由ですが、山雅戦のスタメン(以下、参照)を見て、衰退の道を歩むどころか、選手の“受け皿”としての役割など存在価値は“逆に”高まるのではないか、と感じました。

GK青木大悟(28歳、前・アローズ)
DF前原雄太(23歳=2年目、前・富山国際大学)
DF永田智彦(22歳、前・履正社FC)
DF金森文洋(25歳=主将、富山第一高校出身)
DF関 隆宏(23歳=2年目、前・富山国際大学)
MF田中智博(24歳=2年目、前・富山国際大学)
MF四十万 拓(23歳、前・アローズ、横浜FMユース出身)
MF前田剛史(28歳=今季加入、前・富山新庄クラブ=昨季北信越2部、元アローズ)
MF今井健太(25歳、前・ウッドペッカー函館)
FW小林羊汰(26歳=今季加入、前・アローズ、磐田ユース出身)
FW松井良太(25歳、前・富山国際大学)

富山県といえば、柳沢敦(京都)を輩出した富山第一高校が名門として知られていますが、全国レベルの強豪大学は、ありません。多くのカターレ選手は県外出身。その一方で、ヴェリエンテに次ぐ社会人チームは富山新庄クラブ(昨季北信越2部最下位=県リーグ降格)。もし、今後、ヴァリンテが「2番手」として定着でもすれば、才能の県外流出を防ぐことにもつながるでしょう。

実際、山雅戦では”受け皿”効果が如実に出ました。若手が成長して世代交代が進んだチームに、経験豊富な前田と小林が加わった結果、全体のバランスが向上。カウンター攻撃の形など、チーム完成度という点では山雅以上。中でも、JFL出場100以上の実績がある小林は効いていました。

対する山雅は、矢畑智裕(27歳、元・鹿島など)、三本菅崇(29歳、元・浦和など)がケガで欠場。本来SBの吉田匡良(25歳、元・京都など)と阿部琢久哉(23歳=今季加入、前・TDK)をCBにコンバートする緊急事態。調整が遅れていたFW柿本典明(29歳=今季加入、前・湘南)はリーグ初出場をスタメンで果たしたものの、吉田賢太郎(27歳=今季加入、前・栃木SC)はコンディション不良でベンチ外。開幕戦に比べると、攻撃の形ができてきたともいえますが、パスが大雑把で、流動性にも欠けていました。

16分 1-0(山雅)
川田和宏(25歳=今季加入、大分からレンタル)がCKを直接ゴール

41分 1-1(富山)
山雅のFKへの対応ミス。永田がヘディングシュート

66分 1-2(富山)
カウンター。前田のクロスから、ゴール前で混戦になり、金森がシート。

81分 2-2(山雅)
大西康平(25歳=今季加入、前YKK AP)のクロスを、柿本がシュート

82分 3-2(山雅)
阿部孝(21歳=今季加入、前・大原学園JaSRA、後半交代出場)のクロスに山雅の大西と富山の関がからみ、流れたボールを、走りこんだ今井昌太(がシュート。(写真は、ゴール後の歓喜)

“産みの苦しみ”は続いていますが、チームの危機を救ったのが、唯一の長野県出身で、昨季は“ほぼ”レギュラーながら、今季は“控え”の今井昌太(23歳=2年目、前・びわこ成蹊スポーツ大学、後半交代出場)だった点は幸いでした。全体のモチベーションを高めるためには、“これ以上はない”結末です。また、もはや1試合も気が抜けない「サッカー・クラブがある」新たな生活を楽しめる点で、今や山雅ファンは日本随一の幸せ者だと思います。

▼Jを目指すクラブの動向

●北信越リーグ1部
(3節、11日)

長野パルセイロ(同2位)8-0 フェルヴォローザ石川・白山(同5位)

ジャパン・サッカーカレッジ(同3位、以下JSC)3-5 グランセナ新潟(同2部優勝)

ツエーゲン金沢(同4位)5-1 サウルコス福井(同2部2位)

ジャパン・サッカーカレッジ(昨季3位) 3-5 グランセナ新潟(同2部1位)

*JSC敗退も大番狂わせ!


3節終了時点の順位

1位=ツエーゲン 勝ち点9(3勝、得失点差15)
2位=パルセイロ 同9(3勝、得失点差11)
3位=ジャパンSC 同6(2勝1敗)
4位=山雅 同5(1勝2分け)
5位=グランセナ 同4(1勝1敗1分け)
6位=サウルコス 同1(1分け2敗)
7位=ヴァリエンテ 同0(3敗)
8位=フェルヴォ 同0(3敗)

●北信越リーグ2部

アンテロープ塩尻 3-0 新潟医療福祉大学

*アンテ3連勝=首位

●東北リーグ2部南ブロック
(3節、11日)

コバルトーレ女川(今季昇格)0-2 福島ユナイテッドFC(昨季2位) 

*福島ユナイテッドは、旧・ペラーダ福島(昨季2位)=開幕3連勝=首位

●関東リーグ
(6節、11日)

ホンダルミノッソ狭山 1-5 町田ゼルビア(昨季優勝) 

*ゼルビア6連勝=首位 

●関西リーグ
(5節、10日)

ASラランジャ京都 0-5 バンディオンセ加古川(昨季優勝)

*バンディ5連勝=首位

●中国リーグ
(5節=11日)

佐川急便中国 0-0 デッツォーラ島根 

レノファ山口 2-2 NTN岡山

*島根は、旧・セントラル中国。首位=レノファ(勝ち点11)。2位=宇部ヤーマン(同8)、3位=デッツォーラ(同8、得失点差)

●四国リーグ
(5節、11日)

南国高知FC 0-3 カマタマーレ讃岐(昨季2位)

讃岐5連勝=首位

●九州リーグ
(5節、11日)

ホンダロック 5-1 三菱重工長崎

V・ファーレン長崎 0-0(PK8-9)沖縄かりゆしFC

新日鐵大分 1-1(PK4-2)ヴォルカ鹿児島

OSUMI NIFS 1-2 九州INAX

海邦銀行SC 2-1 ヴァンクール熊本

ホンダロックが5連勝で単独1位。V・ファーレンは4勝1PK敗

<写真説明>決勝点を決めた今井昌太(中央下=仰向け)ら、歓喜する山雅イレブン


▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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