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Jを目指せ! by 木次成夫

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第89回「劇的“北信越ラスト3節”その2」
by 木次成夫

北信越リーグ
12節終了時点の順位
首位=ジャパン・サッカーカレッジ(31)得失点差+30
2位=長野パルセイロ(29)+42
3位=ツエーゲン金沢(27)+35
4位=松本山雅(21)

そして13節――
8月2日
パルセイロ 2-1 ツエーゲン
(観衆1386人)

前半は、ツエーゲン優勢でした。中でもFW永井健太(26歳、今季加入=前・栃木)のキレ味鋭い突破は圧巻。パルセイロは初先発のGKノグチピント・エリキソン(27歳、今季途中加入=前バリエンテ郡山=元・福岡など)がスーパーセーブを連発したものの……。

24分 0-1
(ツエーゲン権東勇介)

ところが、後半、ツエーゲンの勢いは続きませんでした。パルセイロの土橋宏由樹(30歳)と貞富信宏(29歳)の両ボランチの巧みな“パス散らし”と“いなし”に対応できずに、チーム全体が停滞してしまったという印象です。ツエーゲンは木村龍朗(24歳、前・広島=3年目)と並ぶ“二大エース”FW奈良安剛(25歳、昨季途中まで山雅、元・札幌など)が腰を痛めて欠場(ベンチ)したことも“想定外”だったはでしょうが……。

試合巧者になれない点は、ほぼ固定メンバーで、“個の強さ”を生かしてシンプルなサッカーで快進撃を続けてきたチームゆえの限界なのかもしれません。

60分 1-1
(パルセイロ佐藤大典)
84分 2-1
(パルセイロ栗原明洋=交代出場←佐藤)※写真

パルセイロの決勝点は土橋を基点に、いわば“教科書通り”のパスワークから生まれました。ちなみに栗原は神奈川県の桐蔭学園出身で、アルビレックス新潟(2シーズンは新潟シンガポール)を経て、昨季パルセイロに加入(23歳)。桐光学園出身の本田拓也(法政大学→清水)とは“同学年のライバル”。つまり、北京五輪世代です。今や“伸び悩み”ということになりますが、“再チャレンジの場”でもレギュラーになれないにも関わらず、頑張り、重要なゴールを決め、歓喜できたことは……、「Jを目指すクラブ」の存在意義を象徴していると思いました。

8月3日
山雅 2-1 ジャパンSC
(観衆2264人)

15分 0-1
(ジャパン=宇野沢祐次)
30分 1-1
(山雅=高沢尚利←柿本典明←大西康平のCK)
70分 2-1
(山雅=大西康平←川田和宏)

シュートは山雅8本(前半3本、後半5本)、ジャパン11本(前半6本、後半5本)。ジャパンのスタメン中、主将でボランチの森安洋文(23歳、前・清水Y)、FW明堂和也(22歳、前・アルビレックス新潟シンガポール)ら4人は、昨季最終節の山雅戦でもスタメンでした。森安の“散らし”をベースにしたアタッキングサッカーは完成度が高く、何度も“惜しい”チャンスまでは、行きました。

山雅の勝因は、チーム全体の集中力と献身的なプレー。お互いが“実力的にできないこと”を含めた個性を認識しあい、カバーしあうサッカーが、やっと、できるようになったということだと思います。CBコンビ三本菅崇(30歳)と矢畑智裕(27歳)の“反則気味のプレーを含めた”老獪な守備にも「経験の差」を感じました。

ちなみに、前節のツエーゲン戦に続いてゴールを決めた高沢(24歳、前・青山学院大学、加入2年目)は浦和レッズの下部組織出身で、メニコンカップ(U-15クラブユース東西対抗戦)出場経験もあります。つまり、ジュニアユース段階では日本トップクラスの有望株だったわけです。現在は、チームメイトの坂本史生と共にスポーツ用品販売チェーンの「ゼビオ」勤務。クラブ側や勤務先が、「山雅選手が勤務する店」といった感じで、積極的にPRすれば、地元のサッカー少年にとっては、例えばスパイク選びなどで、最高のアドバイザーになりえるし、選手本人も、仕事の“やりがい”が高まると思うのですが……。

13節終了時点の順位
首位=パルセイロ(32)+43
2位=ジャパンSC(31)+29
3位=ツエーゲン(27)+34
4位=山雅(24)+14

最終節は、9月7日。
パルセイロ対山雅
ツエーゲン対ジャパンSC

注目は、パルセイロが過大なプレッシャーの中で、どんな戦いをするかに尽きます。

1.ホームの“信州ダービー”(今季アウェーでは、引き分け)
2.山雅は過去3節連勝で勢いに乗っています。優勝の可能性は“ない”ゆえ、敗れても、失うものは“大して”ありません。
3.地元報道によれば、長野県サッカー協会幹部が、非公式ながらも「先にJFLに昇格したチームを支援する」と表明

さらには、全国社会人選手権・北信越大会(8月15日―17日)の結果しだいで、さらにプレッシャーが、かかるかもしれません。パルセイロは1回戦でツエーゲンと対戦します。リーグ優勝の可能性が消滅したツエーゲンにとっては、“絶対に負けられない”試合です。

ところで、2日夜は「松本ぼんぼん」、「長野びんづる」、「茅野どんぱん」、「小諸ドカンショ」、「千曲どんしゃん」など、長野県内各地で夏祭りが開催されました。

例えば、「松本ぼんぼん」は今年が34回目。盆踊りをして、街中を練り歩く祭りで、グループ(連という呼称)単位で参加する形態です。

小学校、野球で甲子園出場した松商学園高校のチアリーダー、外国人留学生団体、地元企業、役所関係など様々な“連”の中には、“山雅サポーター連”も――。といっても、参加連も沿道の観客は多く、発見するまで時間がかかりましたが……。翌日の地元新聞記事によると、「ぼんぼん」は300連、約2万6200人、「びんづる」は230連、約1万1000人が参加。台車などで“自分たちの飲み物”を運び、飲み終わった缶なども自分たちで持ち帰るのが「常識」のようで……、その点も素晴らしいと思いました。

山雅対JSC戦で観客が比較的多かったのは、「ぼんぼん」でのアピールも影響したのでしょうか。その一方で、パルセイロ対ツエーゲンは、「びんづる」優先で観戦を断念したファンもいたのかもしれません。

いずれにせよ、外様にとっても、サッカーの“ついでに”地域を感じられることは、前節、金沢での花火大会を含めて、楽しいことです。是非、日本各地のサッカー協会関係者の方々には、地元自治体の観光課などと連携してほしいと思います。

ちなみに、夏祭りに合わせて山雅とパルセイロがホームを組むべく調整したわけでなく、偶然だとか……。

<写真説明>パルセイロ対ツエーゲン戦で決勝点を決めた栗原明洋(中央)と土橋宏由樹(左)、要田勇一(右)の歓喜

▼Jを目指すクラブの動向

● 東北リーグ1部
(11節、3日)
グルージャ盛岡(昨季優勝)5-2 FCプリメーロ
*首位=グルージャ(9勝2分け)

● 関東リーグ1部
(後期6節、3日)
FC町田ゼルビア 6-0 ホンダルミノッソ狭山
*優勝=ゼルビア

● 北信越リーグ1部
(13節、3 日)*5位以下

フェルヴォロ-ザ石川・白山FC 0-2 グランセナ新潟 
ヴァリンテ富山 2-1 サウルコス福井 

5位=グランセナ(同17)
6位=ヴァリエンテ(同10)
7位=サウルコス(同6)
8位=フェルヴォ(同3)

● 北信越リーグ2部
(13節、3日)
上田ジェンシャン 3-1アンテロープ塩尻  
* 首位=ジェンシャン(勝ち点34)、2位=CUPS聖籠(同26)、3位=アンテ(同23)。
CUPSはジャパンSCの「2軍」。

● 中国リーグ
(3日)
レノファ山口 3-1 JFE西日本
首位=レノファ(勝ち点31=9勝4分け)

● 九州リーグ
(15節、3日)
ホンダロック 1-2 沖縄かりゆしFC 
V・ファーレン長崎 2-1 ヴォルカ鹿児島 
新日鐵大分 8-0 ヴァンクール熊本 
三菱重工長崎 1-1(PK3-5)九州INAX 
OSUMI NIFS 1-1(PK5-3) 海邦銀行SC

順位
首位=V・ファーレン長崎(勝ち点39)+50
2位=ホンダロック(同39)+47
3位=沖縄かりゆし(同38)
4位=新日鐵(同31)
5位=ヴォルカ鹿児島(同25)
6位=海邦銀行(同19)
7位=ヴァンクール(同15)
8位=INAX(同13)
9位=三菱重工(同4)
10位=OSUMI(同2)
*かりゆし大健闘で、上位3チームの優勝争いが熾烈な状況になりました。残り3試合。順当に進めば、最終節のホンダロック対Vファーレン戦が全国地域リーグ決勝大会出場枠“2チーム”を賭けた戦いになります。かりゆしは下位との戦いの連続ゆえ、V・ファーレンのプレッシャーは大きいはず。



JFL結果&順位表

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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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