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Jを目指せ! by 木次成夫

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第90回「JFL後期7節 栃木SC対横河武蔵野FC」
by 木次成夫

8月9日
栃木SC 0-1 横河武蔵野FC

キックオフは17:00。幸いにも、猛暑ではなく、過ごしやすい夕方でした。後期6節終了段階で栃木SCは、勝ち点52の1位。以下、2位=Honda(同48)、3位=ファジアーノ岡山(同43)、4位=カターレ富山(同42、+16)、5位=横河武蔵野(同42、+16)、6位=FC刈谷(同37)……。

栃木は横河にアウェーで0-1の苦敗を喫しています。マッチデー・プログラム(合計4ページ)の“PRIDE of TOCHIGI”と題した文面からも、意気込みが感じられました。

栃木SC3つのプライド
1.同じ相手には二度負けない!
2.ゴールラッシュで最多総得点!
3.常に観客入場者数JFL No.1!


しかし、結果は0-1で敗退。観衆は4307人(主催者発表)。同節8試合中トップでしたが、前期16節の対ファジアーノ岡山戦の7253人には、遠く及ばず。地元TVで生中継した他、近隣の小山(おやま)市で花火大会があったことも影響したのでしょうが……。

サッカーの醍醐味を堪能できた試合でした。敗れたとはいえ、後半のいわゆる“パワープレー”の迫力は、相対的に優れた個人を揃えた栃木SCならでは。横河はホームで勝った試合同様、持ち前の粘りに加え、運にも恵まれ、なんとか守りきったという印象です。

決勝点は、後半5分。右サイドの深い位置でパスを受けた横河FW岡正道(19歳、今季加入=前・湘南Y)のセンタリングを、MF加藤正樹(22歳、今季加入=前・駒沢大学)がヘディング・シュート。この試合、岡は前半からキレ味抜群で、何度かチャンスを演出していました。アシストになったプレーも圧巻で、栃木CB鷲田雅一(29歳、今季加入=前・山形)と対峙した後、ステップと上半身を使ったフェイントでかわした末のピンポント。

身長165㎝の「高卒1年目=アマチュア」が「全員プロ」相手に決定的仕事をしたシーンを目の当たりにし、改めて「再チャレンジ」の場としての「Jリーグ以下のチーム」の存在意義も、実感しました。

ちなみに、この試合、“大田原市デー”と題し、同市長がハーフタイムに挨拶した他、同市名産の“とうがらし”を使った軽食が販売されました。「全県区」クラブならでは、です。小山市ともコラボして“サッカー&花火満喫デー”にできれば、最高だったのですが……。

「Jを目指すクラブ」のある地域を訪れた際、度々、感じることがあるます。それは“プレーする”サッカー、つまり、文部科学省マターの「教育としてのサッカー」と厚生労働省マターの「健康のためのサッカー」に比べて、自治体主導の「サッカーを見る文化」普及活動が不十分ではないかということ。サッカーをきっかけに“いかに”地元で(他県ではなく)金を使ってもらうかとか、ライバルはレジャー産業だとか、商業的観点も足りないと思います。

例えば、高校など学生の大会(試合)は土曜日、大人の大会(試合)は日曜日にするなど日程調整をすれば、観客が増える可能性がある上に子供たちはプレー面を学べるのに――。

例えば、「XX高校デー」と題して、場内アナウンスは放送部、ハーフタイムイベントはダンス部(応援部)などにまかせたり、運営を含めて学生が関われるようにすれば、価値のある「課外授業」になるのでは?

例えば、自治体職員サッカー部の試合を前座にして、プレーした後に「Jを目指すクラブ」運営を手伝う策もアリでは?

例えば、地元飲食店とコラボして、試合後に無料シャトルバス内で、「祝勝会(残念会)ビール割引券」などを配布すれば、車利用のファンが減るエコ効果も期待できます。

例えば、大型商業施設デベロッパーと自治体がコラボして、試合前後に飲食やショッピングを楽しめるスタジアムが増えれば、「試合を見る1日」は、いっそう楽しくなると思います。

最近、栃木県では、陸上競技兼用“新”スタジアム建設が話題になっているとか。現在のグリーン・スタジアムはトラックがないゆえにピッチが近く、メイン側にしか座席はないものの、席配置の傾斜は、サッカー観戦に適しています。ピッチを幅広く使っていないシーンも、よく、見えます。もし、自治体幹部の方々が、同スタジアムの魅力を実体験していれば、陸上競技兼用案は出ないと思うのですが……。

ところで、栃木対武蔵野の翌日、福島市で東北リーグ2部南ブロックの試合を見ました。

8月10日
福島ユナイテッド 3-1 コバルトーレ女川

コバルトーレ女川(おながわ)は、今季昇格したチームです。人口約1万人の宮城県女川町が本拠で、06年に活動開始し、翌07年に県リーグ昇格、優勝。監督は70年代に日本代表の主将を務めたこともある藤島信雄氏。スタメン中、約半数が元Jリーガーのユナイテッドに比べると、相対的に無名選手が多いチームなのですが、大健闘。強い相手との戦い方という点で、経験不足が露呈したものの、今後の成長が期待できる出来でした。また、熱い応援をするファンの存在にも、驚きました。例えば、先日、ホームで見たアルテ高崎よりも多かったですから――。

12分 1-0
笹野天史(25歳、今季加入=前・徳島)
DFを背にして、パスを受けた後、相対的能力の高さを生かして、反転からシュート

23分 2-0
岡本勇輝(25歳、今季加入=前ガンジュ岩手←水戸)
GKのクリア・ミスをヘディング

35分 2-1
中島礼司=PK(29歳、フェルヴォローザ石川・白山=北信越1部←デンソー=JFL=当事←甲府)

44分 3-1
青柳雅信(22歳、今季加入、前・ガイナーレ鳥取←湘南)
CKから始まったゴール前の混戦で、こぼれたボールをボレー・シュート

この試合の結果、ユナイテッドは9連勝(残り5試合)。対するコバルトーレは5勝3敗。今後、順当にいけば、ユナイテッドは優勝。コバルトーレは2位狙いになります。

試合後、ユナイテッドは“ホーム恒例”の子供向けサッカースクールを開催しました。女の子も含め、楽しげにサッカーをしている様を見て、JFAアカデミーのようなエリート強化だけではなく、底辺拡大も大事だと痛感。ただ、スクールも“目当て”の親子に比べると、一般ファンが少ない点に、シニアを含めて“プレーする”サッカーが盛んな地域性も感じました。もっとも、だからこそ、多くのクラブが、“色がついていない”子供向けスケールを実施して、ファン拡大を目指しているのですが……。

ユナイテッド、コバルトーレ共に、23日から25日まで岩手県で開催される全国社会人選手権・東北大会に出場します。参加14チーム、全社・出場枠2チーム。東北に限らないことですが、日本全国のサッカー協会の多くは、大会「運営」だけで十分という判断でしょうが、“見る”ファン向けのPRには積極的ではありません。残念なことです。


▼Jを目指すクラブの動向

●九州リーグ
(16節、10日)
ヴォルカ鹿児島 1-1(PK4-5)ホンダロック
新日鐵大分 0-6 V・ファーレン長崎
九州INAX 1-6 沖縄かりゆしFC 
海邦銀行SC 2-4 三菱重工長崎  
ヴァンクール熊本 3-3(PK5-3)OSUMI NIFS

順位
首位=V・ファーレン長崎(勝ち点42)+56
2位=ホンダロック(同41)+47
3位=沖縄かりゆし(同41)+34
4位=新日鐵(同31)
5位=ヴォルカ鹿児島(同26)
6位=海邦銀行(同19)
7位=ヴァンクール(同17)
8位=INAX(同13)
9位=三菱重工(同7)
10位=OSUMI(同3)
*残り2節は、9月6,7日に集中開催。

9月6日 V・ファーレン対ヴァンクール、ホンダロック対新日鐵、かりゆし対海邦
9月7日 V・ファーレン対ホンダロック、OSUMI NIFS対かりゆし

順当に見れば、かりゆしの「2位以内」(全国地域リーグ決勝大会出場権獲得)が有力。2年ぶりの優勝を目指すV・ファーレンはプレッシャーが最大の敵か――。



JFL結果&順位表

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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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