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Jを目指せ! by 木次成夫

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第92回「バンディオンセ加古川“変貌中”」
by 木次成夫

昨年、バンディオンセ加古川は全国地域リーグ決勝大会(以下、地域決勝と略)で4位に終わりました。決勝ラウンド2日目終了時点で4チーム中2位ながらも、3日目(3戦目=最終日)にニューウェーブ北九州に敗退。どちらかというと組織力よりも「個の強さ」で勝負するチームでした。最大の武器は、森岡茂(35歳、今季リーグ最終戦で引退。アトランタ五輪代表。元G大阪など)の精度抜群のキックと、FW西村完爾(30歳)のフィジカル能力を生かしたピンポイント・プレー。しかし、西村は一次ラウンドで負傷。一次ラウンド3連戦後、中4日で、決勝ラウンド3連戦という過酷なスケジュールで、チーム全体が疲弊。控え選手層が相対的に薄いことも露呈するなど、「あの時は手の打ちようがないという感じでした」(今季が2年目の田中真二監督)

しかしながら、今季のバンディは、3年連続「地域決勝」出場の経験を生かして、大きく変わりつつあります。13勝1分の圧倒的強さで関西リーグ4連覇。2位のアイン食品との勝ち点差12。唯一の引き分けが、今季移転した加古川市ホームの対京都BAMB戦だったことは、痛恨でしょうが……。

8月24日
天皇杯兵庫県予選準決勝
バンディ対姫路獨協大学
(最新NEWS)

バンディのフォーメーションは3-5-2。
<スタメン>
GK山口篤史(28歳、今季加入=前・徳島)
右DF神崎亮佑(26歳=主将、前・川崎フロンターレ)
CB小林靖典(26歳、今季加入=前・三菱水島FC)
左DF清水 純(23歳、今季加入=前・亜細亜大学)
右MF木村卓也(28歳、今季加入=前・三菱自動車水島)
ボランチ岸田茂樹(29歳、今季加入=前・三菱自動車水島)
ボランチ片原 潤(22歳、今季加入=前・福岡大学)
左MF西村英樹(25歳、今季加入=前ガイナーレ鳥取)
トップ下、濱岡和久(27歳、今季加入=前・佐川印刷←愛媛FC←大分/写真)
FW角 廣介(23歳、今季加入=前・福岡大学)
FW松田喬志(25歳、前・東海大学)

<交代出場>
岸田→トップ下・川淵勇祐(22歳、前ジェフ千葉)
西村→左MF稲田瑞穂(22歳、今季加入=前・関西学院大学)
松田→FW河野将吾(24歳、今季加入=前ジェフ・リザーブズ)
角→FW西村完爾(30歳、前・セントラル神戸)

<得点経過>
36分 1-0(バンディ=角)
*華麗なボレーシュート
46分 1-1(獨協=光実伸吾)
*流れの中で、崩された失点
89分 2-1(バンディ=河野)
*ロスタイム。相手のクリアミスを拾った“幸運な”ゴール

関西大学リーグ1部に今季昇格したチームに2-1の辛勝。決勝点前には決定的ピンチもありました。つまり、よもやの屈辱的敗退からの逆転劇。ふがいない結果ですが、リーグ優勝後のプラスアルファが“ほぼ”なかった昨季に比べると、“地域決勝”までの成長が期待できる内容でした。中盤を厚くしたポゼッション重視のサッカーが、明らかに発展途上だったからです。

スタメン中、今季加入選手9人。格上のJFLで実績がある選手が揃ったわけですから、チームが強くなるのは当然ともいえますし、充実した補強ができたともいえます。

ピッチを幅広く使い、DF陣からトラップ&パスで“つなぐ”意図は、近年の流行言葉を使うなら、「世界標準」。課題は、ポゼッション状況から、相手守備陣の“いわゆる”門(DF間のスペース)を狙うタイミング。例えば、ドリブル突破とパスセンスで際立った濱岡の持ち味は“まだまだ”生かしきれていません。

個を生かしたシンプルなプレーをすれば、もっと簡単に勝てるかもしれない状況で、あえてポゼッションにこだわるのは、個の能力で勝ち、個の能力で敗れた昨季の経験ゆえの策でしょう。個の限界をカバーしてあまりあるのが、コンビネーションですから。

試合後、田中監督は、「いろいろなオプションが試せるチームになった」とポジティブに現状を語りました。例えば、FWの川淵をトップ下で投入して、濱岡をボランチに下げるなど、試合状況に応じた選手起用ができるようなった点は、補強の成果です。また、強引な突破が武器の河野、リーチの長さと高さが魅力の角ら、タイプの違うFWが加わり、多彩な攻撃が可能になりました。

果たして、“地域決勝”までの約3ヵ月で、どこまでチーム力をアップできるか――。

田中監督は「知名度アップのためにも、天皇杯でJクラブと対戦するところまで行きたい」と語りましたが、「今年は全社(全国社会人選手権)でも優勝を狙っています」(バンディ関係者)とか――。

すでに、加古川市役所HPにはバンディHPへのリンク設定されています。いわば、自治体の“お墨付き”。クラブからすれば大進歩です。クラブオフォスを加古川駅前の商業ビル1階に置いたため、サッカーに興味のない人でも“目に付く”ようになりました。この秋からは、加古川でも「子供向け」スクールを始める予定だそうです。とはいえ、ファンの盛り上がりという点では、例えば松本山雅や長野パルセイロの比では、ありません。

「(全社では)地域リーグ決勝大会で対戦するかもしれない相手を叩いておくという狙いもあるんですけどね」(同関係者)。

ということは……。例えば、“全社優勝狙い”の松本山雅との対戦を期待しているということでしょうか? 

ところで、バンディの田中監督は80年代の「日産自動車」黄金期を支えた左SBで、日本代表としても活躍しました。日本開催のWユースでは、浦和南高校時代の同級生、水沼貴史に日本唯一の得点をアシストした実績もあります。当時の日産を振り返ると、FW柱谷幸一(現・栃木SC監督)、右SB池田司信(現・ツエーゲン金沢監督)、MF金田喜稔(解説者)、MF木村和司(解説者)……、横浜FMを離れている人が多いです。低迷を打破すべく、“往年のスターが結集”となっても、面白いと思うのですが――。 ちなみに東京V監督の柱谷哲二氏、清水監督の長谷川健太氏も、もともとは日産です。

そして、加茂周氏は、現在、関西学院大学監督。天皇杯兵庫県予選準決勝で三洋電機洲本(関西1部3位)に敗れたため、決勝で「師弟対決」とは、なりませんでしたが――。


<写真説明>MF濱岡和久(27歳)。チーム浮沈のカギを握るゲームメーカー

▼Jを目指すクラブの動向

● 天皇杯東京都予選準決勝
(24日)
町田ゼルビア(関東1部優勝)0-1 国士舘大学
横河武蔵野FC(JFL)2-1 駒澤大学
*決勝は8月30日

●天皇杯高知県予選決勝
南国高知FC(四国リーグ)0-5 高知大学


JFL結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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