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Jを目指せ! by 木次成夫

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第102回「全国社会人選手権“特別編”PART3」
by 木次成夫

松本山雅、奇跡的辛勝!
[10/20 全社3回戦(ベスト8)]
ジャパン・サッカー・カレッジ 1-2 松本山雅FC
最新NEWS,2

 勢いがあるチームは、幸運を呼び寄せるものなのでしょうか? あるいは、疲労を補って余りある自信と“ノリ”の賜物でしょうか? 絶体絶命状況からの逆転劇でした。

<山雅スタメン>
GK原 裕晃
右SB金澤慶一
CB矢畑智裕
CB坂本史生
左SB阿部琢久哉
右MF鈴木亮平
ボランチ斎藤智閣
ボランチ川田和宏
左MF今井昌太
トップ柿本倫明
トップ竹内優

<ジャパン・サッカー・カレッジ=以下JSCと略=スタメン>
GK小林大海(20歳、前Y.S.C.C)
右SB飯沼洋介(21歳、前CUPS NIIGATA=JSC下部チーム)
CB数馬正浩(26歳、前・仙台)
CB阿達亮介(23歳、前ガンジュ岩手)
左SB黒永恵志(26歳、前ザスパ草津チャレンジャーズ)
右MF蒲谷広樹(25歳、前・長野パルセイロ。横浜FMユース出身)
ボランチ森安洋文(23歳、前・清水ユース)
ボランチ瀧瀬英次郎(24歳、前・NIIGATA J・S・C=JSC下部チーム)
左MF池川修平(19歳、前・静岡学園高校)
トップ明堂和也(22歳、新潟シンガポール)
トップ宇野沢祐次(25歳、前・福岡)

 山雅が2回戦のスタメンを4人入れ替えたのに対して、JSCは1回戦でベンチスタートだった明堂を除く10人が3戦連続スタメン。どちらの疲労度が激しいかというと、結果的には(天皇杯も戦った後の)山雅だったと思います。

 序盤、山雅は今井、柿本が切れ味の良いプレーでチャンスを作るなど、比較的上々のリズムで試合を進めました。しかし、JSCも「サッカー専門学校」らしい、組織的サッカーで対抗。今季のリーグ戦で1勝1敗“ならでは”の拮抗した展開になるかもしれないと思いきや……。

28分:1-0(JSC)
宇野沢祐次=FKを直接ゴール

 この得点で、山雅は一気に停滞。攻撃は単調になり、まるで別のチームのように変貌していきました。そして、鈴木に代えて大西康平を投入するなど、気持ちも切り替えて臨んだ(であろう)後半、予期しない事態に陥ります。

45分(=後半5分)
山雅ボランチ斎藤が2枚目のイエローカードで退場!

 決定的ピンチではない状況でした。悪質でもなく、どちらかというと勢い余っての“痛恨”。とはいえ、山雅選手の蓄積疲労を考慮すれば、未だかつてない危機的状況でした。JSCは試合開催地の新発田市の隣、聖籠町にあることもあり、スタンドではチームメイトが多数応援。平日ゆえ、山雅ファンは、せいぜい30~40人。一見して、2回戦の3~4分の1。といいても、それだけ“いた”ことも驚きですが、JSCの応援で、山雅の鳴り物付き応援が聞こえなくなることもある“JSCホーム”状況も、悲観的な気分にさせる要素でした。

しかし――

52分(=後半12分)
1-1(山雅)
矢畑智裕=左→右→左と3回続いたCK。大西がファーサイドに上げたボールを、ドンピシャ・ヘッド。なぜか、矢畑はフリー(マーカー不在)でした。

 その後、山雅は55分に竹内に代えてボランチ高沢尚利を投入。当然ですが、守備は安定する一方で、攻撃は薄くなります。その上、連戦の蓄積疲労が徐々に山雅の選手たちからキレ味を奪っていきました。しかし、再び、奇跡が――。

77分(=後半37分)
1-2(山雅)
矢畑智裕=CKを相手がクリア→こぼれ球を川田がクロス。同点ゴールのシーンと同じような位置で、なぜか“またもや”矢畑がフリー→トラップ後、右足で豪快かつ的確にシュート。

 その後、山雅は79分(後半39分)に今井に代えてCB三本菅崇を投入。なんとか、JSCの攻撃を、凌ぎきりました。中でも、GK以外では唯一人、天皇杯3回戦から4戦連続フル出場を果たした阿部琢久哉は、“壊れない”のが不思議なくらいです。

 試合後、歓喜する山雅ファンを見て、思いました。専門学校としてのジャパン・サッカー・カレッジは、トップチームを市民クラブ化しても良いのではないか、と――。新潟県はアルビレックスが突出した存在で、その下のクラブ・チームは北信越1部のグランセナ新潟(新潟市)です。底辺からトップまでの図式という点では、理想的では、ありません。

 その一方で、今大会は来年の国体リハーサル大会ということもあり、ボランティアの方々が多数、運営に関わっています。溌剌と頑張っている姿が印象的です。シャトルバスのスケジュールを臨機応変に変更してくれたこともありました。駅から会場までの案内看板も多く、助かります。「見る側」を意識したホスピタリティがしっかりしている点では“異例”と言っても過言ではないほどです。

 もし、JSCトップチームが市民クラブ化すれば、JSC卒業生を含めた地元選手の“受け皿”になる上に、地域スポーツ文化振興と同時に今大会ボランティアの方々の“日常の”楽しみにもなるのではないでしょうか。また、新発田駅前のアーケード街(一見して、隣駅にある大規模商業施設のダメージを受けているとしか思えない現状)を含めた地域活性化にも“つながる”のでは?

<他3試合の結果>
V・ファーレン長崎 1-2 NECトーキン

ホンダロック 2-0 ヴォルカ鹿児島

佐川急便中国 0-4 長野パルセイロ

<準決勝=21日=対戦カード>
ホンダロック(九州リーグ3位) - パルセイロ(北信越1部優勝)

NECトーキン(東北1部2位) - 山雅(北信越1部4位)

 所属リーグ成績で全国地域リーグ決勝大会出場権を獲得しているのはパルセイロだけです。つまり、もし準決勝でパルセイロが勝てば、NECトーキンと山雅の勝者は決勝を待たずに“地域決勝”出場権を得ることができます。

<写真説明>まさに「足に魂込めました」の矢畑の“2点目”シュート

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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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