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Jを目指せ! by 木次成夫

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第107回「JFLガイナーレ鳥取の“逆転”はあるか」
by 木次成夫

 「Jリーグ参入圏」争いが激しくなってきました。後期14節(11月8、9日)終了時点で、1位=Honda(勝ち点69=優勝決定)、2位=栃木SC(同58、+23)、3位=カターレ富山(同57、+24)、4位=ファジアーノ岡山(同55、+18)、5位=ガイナーレ鳥取(同54、+21)、6位=横河武蔵野(同53、+12)……。

 中でも、前期12節(5月17、18日)終了時点で12位に低迷していたガイナーレの健闘には驚いています。“4位以内は他力本願”ながらも、0-1で辛勝した14節(9日)のジェフリザーブズ戦の出来と、残り3試合の対戦相手を考慮すれば、「逆転もありえるのでは?」と、思うほど――。

15節
佐川印刷(11位)対ガイナーレ、横河対ファジアーノ
16節
ガイナーレ対TDK(12位)、ファジアーノ対栃木
17節(最終節)
流通経済大学(7位)対ガイナーレ、カターレ対ファジアーノ

ジェフ戦のガイナーレ・メンバーは以下の通りでした。一見して、人口約60万人の鳥取県から「Jを目指す」理想と現実のハザマの中で、試行錯誤した成果といっても過言ではない布陣でした。小さな県≒小規模な経済圏→限られたクラブ予算→人件費抑制→戦力外Jリーガー獲得、Jリーガー・レンタルなどコストパフォーマンス重視の強化→?
要は、いかに金をかけずに強いチームを作るかが、手腕の見せ所です。

<スタメン>
※フォーメーションは3-4-3
GK、井上敦史(31歳=2年目、前・横河武蔵野、元・札幌)
右DF、加藤秀典(27歳=7月に鳥栖からレンタル加入)
CB、小村徳男(39歳=今季加入、前・横浜FC、元・日本代表)
左DF、小原一展(28歳=今季加入=前・三菱水島FC)
右MF、冨山達行(26歳=今季加入←Jリーグ合同トライアウト参加、前・湘南)
ボランチ、吉野智行(28歳=今季加入←トライアウト参加、前・横浜FC)
ボランチ、鈴木健児(27歳=9月にFC東京からレンタル加入)
左MF、尾崎瑛一郎(23歳=今季加入、前・新潟シンガポール)
右FW、太多和 卓(27歳=今季加入、前・横河)
CF、田村祐基(22歳=8月にFC岐阜からレンタル加入)
左FW、鶴見聡貴(21歳=湘南からレンタル2年目)

<サブ>
GK修行智仁(24歳=2年目、前・立命館大学)
DF水本勝成(18歳=今季加入、前・ルーテル学院高校)
MF中垣雅博(26歳=4年目、前・専修大学)*74分に尾崎と交代出場
MF小井手翔太(27歳=今季加入←トライアウト参加、前・鳥栖)
MF実信憲明(28歳=6年目、東京農業大学)*64分に太多和と交代出場
FW小澤竜己(20歳=今季レンタル加入、前FC東京)
FWハメド(21歳=コートジボワール人=今季レンタル加入、前・チョンブリFC=タイ)※69分に鶴見と交代出場

 試合は、お互いにポゼッションを重視した展開になりました。前半のシュート数は、ガイナーレ2本、ジェフ1本。パスを“つなぐ”ばかりで積極性が足りないという見方もあったでしょうが、ガイナーレのポゼッション・サッカーは進化していると感じました。走力などフィジカル面でも相対的に優れた“途中レンタル・トリオ”が加わった結果、攻撃面では吉野の“溜め”とパス・センスが、いっそう活きるようになり、守備面では前線から相手を外(ライン際)に追いやる組織的“寄せ”が機能。全体的な印象としては、J1予備軍のエリート集団、ジェフリザーブズが“教えられたサッカーから脱却できない”のに対して、ガイナーレは“組み立てに苦労しつつも、想定内”という感じ。隣県、島根出身の元・日本代表、いわば“山陰の宝”である小村が主将として、守備ラインを統率している様も印象的でした。

<得点>
46分(後半1分) 0-1
大多和 卓(ガイナーレ)=太多和が右から内にドリブルで切れ込み、田村を“くさび”にして、ゴール“ほぼ”正面から豪快なミドル・シュート

その後、ガイナーレは57分(後半12分)に田村が2枚目のイエローカードで退場。終盤は守勢一方になりましたが、えてして、勢いのあるチームには運も味方するものです。後半のジェフ・シュート10本のうち、2本はゴールポスト直撃、1本はGKがスーパーセーブ、でした。

「さすがは鳥取県初のJリーガーだった塚野真樹社長らの“見る眼”と人脈あってこその低コスト補強」と賞賛したいところですが、経営難が明らかになった以上、期待と現実にギャップがあったということになります。ただ、ジェフ戦では、地元TV、地元新聞などの取材陣がいるなど、以前とは比べ物にならない“熱”を感じました。危機的状況が明らかになり、“やっと火が付いた”ということかもしれません。

 いずれにせよ、今季の結果に関係なく、現在の勢いを将来に、つなげてほしいものです。また、今後「100年構想」を体現できないようでは、サッカー・ファン以外から見れば、税金(公金)の無駄遣いになってしまいます。ガイナーレに限ったことではありませんが……。

 相対的弱小チーム(あるいは、下位リーグ)のサッカーを楽しむ「世界標準的観点」のひとつは、“勝敗を超えた”美学(だと思います)。例えば、ピカソの絵を見て“わかった気分になる”ように、多少は無理しても「ポゼッション・サッカーは楽しい」と思い込むようにすれば、やがて、心から楽しいと感じるかもしれません。また、弱小なりに魅力がなければ、例えば、FIFAランク最下位付近の国は、サッカーをやめているはずです。

<写真説明>“山陰の宝”元日本代表DF小村の応援旗。39歳になったいまもプレーを続ける、その他写真は最新NEWS


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