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Jを目指せ! by 木次成夫

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第108回「松本山雅 全国地域リーグ決勝大会“出場”の謎」
by 木次成夫

 上の写真は、10月21日の全国社会人選手権(以下、全社と略)準決勝で松本山雅に勝った後、歓喜するNECトーキン(全社2位)の選手です。「実は会社の業績が良くないこともあって、サッカー部の存続が微妙な状況なんです。だからこそ、選手は高いモチベーションを持って大会に臨みましたし、結果的に、(地域決勝)出場権を得ることができました」(NECトーキン・サッカー部・関係者)。

 まさか、その10日後に“地域決勝”を辞退することになるとは……。そして、NECトーキンの代わりに出場するのは全社4位の松本山雅。なぜ???? 疑問を感じたので、JFA(日本サッカー協会)及び全国社会人サッカー連盟に問い合わせてみました。

<疑問1>“地域決勝”大会要項には、“全社枠2チーム目”に関して、以下のように記されていました。

対象チーム:各地域リーグから出場権を得ていない2位チーム。但し、2位チームが出場権を得ている場合は、各地域リーグで出場権を得ていない3位チーム

つまり、「4位チームにも適用される」という趣旨の記載はナシ。“文面通りに”解釈すれば、全社枠で出場できるのは、3位のホンダロックだけで、NECトーキンの代替は前年度全社連登録チーム数の比率順に優先順位が決まっている「枠」から決定されて、しかるべきです。つまり、関東(2位=栃木UVA)、東海(2位=矢崎バレンテ)に次いで優先順位「3番目」の北海道リーグ所属チーム(2位が辞退したら、3位)から。そして、もし北海道が辞退したら、北信越、四国、東北という順で――。


<答>
「全社枠で“地域決勝”に出場するチームが辞退したのは、想定外。緊急理事会で審議をした結果、順位決定戦(3位決定戦)もしたことだし、全社枠で2チーム出場させたらどうかいう意見が大勢になり、山雅を繰り上げることにしました。大会要項などの記載が十分でなかったことは、反省材料なので、来年度からは是正します」
「(今回の決定に関して、関係クラブからの抗議は)受けていません」

<疑問2>各チームから全国社会人連盟への出場申請締め切りは10月27日(月)だったにも関わらず、山雅への通知は11月3日(月)、つまり、天皇杯4回戦(神戸戦)の翌日。時間がかかりすぎでは?

<答>「NECトーキンから、社長以外が判断できる案件ではないので、10月31日(金)まで待ってほしいという連絡があったので、了承しました」

 会社側の判断を待つ選手を想像するだけで、悲しい気分になります。企業の福利厚生としてのサッカー部ゆえ、経営状況に左右される面は致し方ないとはいえ、なぜ、“地域決勝”を最後にできなかったのか? 一般社員としての道を歩むことを選択する選手にとっては“良い思い出”になり、退社してでも挑戦したいと思う選手にとっては、各地のクラブに向けた自己PRになったはずなのに――。

<疑問3>山雅が出場するなら、一次ラウンドはホンダロックがNECトーキンの位置(C組)にスライドし、山雅は当初のホンダロックの位置(A組)になって、しかるべきでは?

<答>「全社枠を優先順位1位と2位に分けて抽選しているわけではないので、(ホンダロックの位置は)そのままにしました」

 ちなみに“地域決勝”大会要項には、組み合わせは「全国社会人連盟が決定する」と記載されていますが、優先事項もある抽選で決めたそうです。

<優先事項1>「一次ラウンド開催地域のリーグ1位チームは、その地域に組み込みました」

<結果>
北九州(A組)=九州1位=沖縄かりゆしFC、鳥取(C組)=中国1位=レノファ山口、高知(B組)=四国1位=カマタマーレ讃岐

<優先事項2>「前年度大会で決勝ラウンドに進出した地域(関西、中国、九州)の2チームは同組にならないように配慮しました」

<結果>
関西1位=バンディオンセ加古川(A組)、関西2位=アイン食品(B組)、九州1位=かりゆし(A組)、九州2位=V・ファーレン長崎(B組)、中国1位=レノファ(B組)、中国2位=佐川急便中国(D組)

“なるほど”……、と納得しつつ、リーグ成績を反映させるシード規定もあるのでは? とは思いました。例えば、A組とC組はリーグ1位が3チームで、B組は同1チームでは、偏りすぎです。

<疑問4>そもそも、大会開催地はどのように決まるのか?

「地域の社会人連盟に立候補を募って、決めています。例えば、今年度の場合、決勝ラウンド立候補は、石垣島開催案の九州連盟だけでした」

見方を代えると、チームの勢いを見計らって地域連盟が立候補すれば、“ホームの利点”を享受できる可能性があるということですが、「まだ公表する段階ではありませんが、すでに来年度の大会開催地は決まっています」。つまり、タイミングがズレる可能性も、あるわけです。例えば、今大会A組は、今季JFL昇格を果たしたニューウェーブ北九州(以下NWと略)のホーム開催。そのため、NWは後期16節の横河戦(23日=今季最終ホーム)を、“第2”ホームの鞘ケ谷競技場で開催せざるをえない状況になりました。もちろん、“昇格が1年遅れていたら最高だったのに”と思うファン、関係者は皆無でしょうが……。

 いずれにせよ、JFA首脳の方々には、下々(参加チーム)の声を聞いて、状況次第ではトップ・ダウン支持をしてほしいものです。あるいは、遠征経費の一定額以上はJFAが負担するとか――。現在、多くのクラブが、石垣島に向けて、募金活動を行っている状況です。今後、“予算が足りない”などの理由で選手のモチベーションが下がるチームがあっても……誰も驚かないでしょう。

 ところで、“地域決勝”に向けて、去る9日、KSL(関東サッカーリーグ)カップの町田ゼルビア対厚木マーカスを見に行ったら、ゼルビアは控え選手中心のメンバーでした。「昨日(8日)、甲府と練習試合をしたんですよ」(戸塚哲也監督)。

“地域決勝”に関しては「鳥取と石垣島の気候差が気になるので、一次ラウンド後、早めに石垣島入りして、調整する予定です」(戸塚氏)。

 さすがは昇格請負人! 鳥取では、解禁したばかりのカニを楽しみつつ……という感じになるのでしょうか?

<写真説明>歓喜するNECトーキン、小山大輝。後方は山雅の川田和宏


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