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Jを目指せ! by 木次成夫

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第114回「全国地域リーグ決勝大会“決勝ラウンド”1日目」
by 木次成夫

 28日、石垣島でJFL昇格をかけた最後の戦い、全国地域リーグ決勝大会決勝ラウンドが開幕した。

<第1試合>
ホンダロック 0-5 V・ファーレン長崎

 ホンダロックは九州リーグ3位、V・ファーレンは得失点差で同2位。お互いに熟知しているという面もあるでしょうが、序盤は“見せ場のない”展開でした。リアクション・サッカーのホンダロックは想定内としても、持ち味であるサイドアタックが鳴りを潜めてしまった点でV・ファーレンは予想外。右SB隅田 航(20歳、前・京都)が一次ラウンド初戦、対アイン食品戦で負傷し、以後、欠場していることが影響したのかもしれません。決勝ラウンド初戦でつまづいた06年大会の経験があるゆえに、“堅くなった”選手もいたのかもしれません。少なくとも、東川昌典監督は、“バランスを重視して、攻撃を自重しろ”という指示をしたわけではないそうですから。

<得点経過>
14分 0-1
FW福嶋 洋(26歳、前・熊本)
※右MF大塚和征(26歳、前・福岡)が“落とした”ボールを豪快にダイレクト

38分 0-2
FW福嶋 洋
※左SB田上 渉(26歳、前・大阪商業大学)→左MF竹村栄哉(34歳、前・鳥栖)→福嶋と“ゆったり”したパスがつながった後、福嶋が一気にリズムを変えて内にドリブル突破を敢行。相手マークを振り切って、先制点以上に豪快なミドルシュート。

75分 0-3
FW有光亮太(27歳、前・福岡)

79分 0-4
田上 渉

89分 0-5
右SB立石飛鳥(25歳、前・鳥栖)

 ちなみに前半のシュート数はV・ファーレン3本で、ホンダロック8本。苦労しつつも、数少ない決定機を活かせたのは、相対的に際立った上に、加入2年目ゆえにコンビネーションも良い2トップ(福嶋と有光)を擁するV・ファーレンならでは――。後半、大差がついたのは、ホンダロックがリスク承知で得点を狙いにきたのも理由ですが、東川昌典監督の指示も効いたようです。

 「相手がパワー・プレーをしてきても、落ち着いてパスをつなぐように指示しました」(同監督)

 実際、後半のV・ファーレンは今まで見た中で稀と感じるほど、安直(よく言えば、セイフティ・ファースト)なクリアや、スペースへの大雑把なパスが少なかったです。

「慌てなければ、チャンスも大きくなると思っていたので、5得点は想定内です」(同監督)

 ところで、この試合、平日にも関わらず、一見して30~40人のファンが応援に訪れ(来ることができないファンの寄せ書きをロープに多数ぶら下げ)たことも、V・ファーレン選手たちの“励み”になったでしょう。ちなみにホンダロック・ファンは数人。“少ない”のではなく、企業サッカー部ながらも熱心なファンがいることに驚きました。

<第2試合>
レノファ山口 0-2 町田ゼルビア

 地域リーグ随一のファン数を誇る松本山雅が一次ラウンドで敗れたため、大会を盛り上げるという点で最も注目していたのは、ゼルビアのファン数でした。結果は、一見して40~50人。一方のレノファ・ファンは、鳴り物と声援はナシ。クラブ・マフラーを試合前に掲げた人は、いました。

<得点経過>
2分 0-1
ボランチ石堂和人(26歳、前・松本山雅←長野エルザ=現パルセイロ)
※直接FK。さすがは“地域リーグ随一のファンタジスタ”という感じでした。

8分 0-2
CB中川勇人(25歳、前・神奈川大学)
※右MF酒井 良=主将(31歳、前・草津)のクロスを、ゼットプレー後ゆえに前線に残っていたCB中川がヘディング・シュート。

 ちなみに中川は、シーズンを通して不動の存在だった(はずの)雑賀友洋(24歳、前・法政大学)からレギュラーを奪取した選手です。さすが戸塚哲也監督は”見る眼が違う“という感じですが、その後、大差になるかと思いきや……、レノファが大健闘しました。

 一次ラウンドのグルージャ戦でも感じたのですが、レノファ選手は粘り強いというよりは、スロー・スターターです。ゼルビア情報は「(同じ中国リーグ所属で、一次ラウンドはゼルビアと同組だった)佐川急便中国さんから聞きました」(宮成 隆監督)とか。つまり、予算的な問題もあってか、ビデオ持参のスカウティングなどは、していないということ。いわば現場対応、“ぶっつけ本番”ゆえにスロー・スターターになるという理由もあるのでしょう。

 とはいえ、練習は週3日間だけ、それも平日は夜間にも関わらず、この試合も、運動量が落ちませんでした。それどころか、プレッシングなど組織プレーは徐々に良くなったほど。
つまり、適応能力は高いということです。パワー・プレーをせずに、最後まで“つなぐ”サッカーを志向している点など、“まだまだ”成長するチームだという印象を受けました。

 では、ゼルビアはどうだったかというと――、好調時はパスが“華麗に”数本つながるのが魅力なのですが、この試合で目立ったのは、個人能力の高さだけ。決定的なスルー・パスを狙いすぎたり、ドリブル突破後のクロスが大雑把だったり――。魅惑的サッカーをする点は地域リーグ随一という印象を持っていたので、“これほど良くないこともあるのか”という意味で、驚いたほどです。

「勝利を意識しすぎると、自分たちのリズムを作れなくなってしまう。落ち着いて普段のプレーをすれば、もっと楽な試合ができたと思います」(戸塚哲也監督)

2日目の対戦カードは
第1試合
ホンダロック対レノファ
第2試合
V・ファーレン対ゼルビア

 JFLからJ2に参入するのは、クラブ経営面など順位以外で問題がない限り、3チーム。つまり、“地域決勝”決勝ラウンド出場4チーム中3チームがJFL昇格できる可能性が高いということ。戸塚監督は「(第1試合でV・ファーレンを見て)この3年間で一番、仕上がりが良いという印象をうけました」と言いつつも、その表情には余裕が感じられました。

 ところで――。

 決勝ラウンド会場の、“サッカーパークあかんま”には、スタンドがありません。名前の通り“パーク”です。石垣島中心街から自動車で約20分(タクシーで約2500円)。バスは1日4本。豊かな自然の中に、ピッチが3面。一見して、合宿に適しています。また、クラブハウス内に喫茶店があるのですが、大会中は、関係者専用。つまり、一般客は利用できません。

 ここまでは、想定内ゆえ驚きませんでしたが、なんと……、ピッチ脇の特設売店では、一見して“人の良い”民間の方々が沖縄風ドーナツやパンなど“地元ならでは”の食品などを販売していました。沖縄限定カップヌードル(沖縄ソバなど)もあったので「お湯を含めて、いくらですか?」と聞いたところ、「寒いので良いだろうと思って、今、出したばかりなんですよ。いくらにしましょうか?」という答え。実際、気温は16~17度という予想外の寒さ。全社や“地域決勝”で様々な飲食品を販売しているだけでも“かなり”驚きなのに――。臨機応変な上に、大らかな応対には、感動しました。

<写真>快勝後、ファンに応えるV・ファーレン主将、原田武男(37歳、元横浜Fなど、バルセロナ五輪代表)

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