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Jを目指せ! by 木次成夫

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第115回「全国地域リーグ決勝大会“決勝ラウンド”2日目」
by 木次成夫

 J2参入が3チームの場合、JFL昇格も3チームです。つまり、決勝ラウンド出場チームにとって、最低限の目標は「3位以内」。決勝ラウンド2日目、最大の注目は、この点でした。

<第1試合>
ホンダロック 2-0 レノファ山口

 勝敗を決した要因は、選手個人の経験と、チームとしての完成度と経験の差。ホンダロックが“全員社員のサッカー部”なのに対して、“練習は週に3日(うち2日は夜間)”のアマチュア・クラブという点を考慮すれば、レノファは初戦のゼルビア戦に続いて大健闘したと思います。
 また、昨日のドーナツ(など)に続くサプライズも、ありました。鳴り物と声援のないレノファを“判官びいき”したのか、観戦に訪れていた地元チームの子供たちが「頑張れ、山口」と応援し始め、徐々に声が大きくなったのです。さらには、「負けるな、山口」というパターンも――。中々、経験できない(かもしれない)微笑ましい光景でした。

<得点経過>
42分 1-0
FW原田洋志(23歳、前・九州保健福祉大学)

87分 2-0
FW浅田祐史(25歳、前・東京農業大学)

<第2試合>
V・ファーレン長崎 0-0(PK3-5)町田ゼルビア


先蹴りのゼルビアが5人とも“決めた”に対して、後蹴りのV・ファーレンは4人目の隅田航(20歳、前・京都)のシュートをGKが好セーブ。

 第1試合の結果、第2試合は“PK戦にもつれこめば”両チームの「3位以内」が確定する状況でした。つまり、敗れたとはいえ、V・ファーレンも“悲願の昇格”確定を喜んでしかるべきなのですが、そんな雰囲気は皆無。ゼルビア選手、スタッフ、そしてファンが歓喜したのとは対照的で、意外でした。“まだ確定ではない”という判断で自重したのでしょうが、内容的にはゼルビアが圧倒していたことも、“喜べなかった”理由のひとつかもしれません。

「今日は内容が悪すぎました。簡単なミスを何度も犯してしまいました。(パスカットされたというよりは)相手にボールを渡したという感じです」(V・ファーレンの東川昌典監督)

 そこまで言わなくても――と思いつつ、納得。FW福嶋洋(26歳、前・熊本)は前日のホンダロック戦に比べると“サイドに流れたまま”のことが多く、“怖さ”が激減。同じくFW有光亮太(27歳、前・福岡)は、なんとシュート0本。さらに、右サイドアタッカーの大塚和征(26歳、前・福岡)は、監督が56分(後半11分)に交代させるほどの出来でした。

 それも、いわば“力ずく”のプレーではなく、基本的には、的確なポジショニングと“読み”で、一見、気軽にカットされたのですから、東川監督が“渡す”という表現を使ったのも、決して“卑下しすぎ”ではないと思います。ちなみにゼルビアの戸塚哲也監督いわく「フィード力も違ったでしょう?」。

 確かに――。

 シュート数はV・ファーレン8本(前半5本、後半3本)に対して、ゼルビア12本(前半5本、後半7本)。数少ないカウンターのチャンスを生かしてV・ファーレンが1-0で辛勝しても、ゼルビアが0-3で圧勝しても不思議ではない内容でした。ただ、決定力不足というよりは、ゼルビアのゲームメイク能力が“地域決勝”レベルを超越していたというのが、率直が印象です。スタメン中、V・ファーレンが前・所属=Jクラブ7人なのに対して、ゼルビアは2人(前・大学、8人)。選手の成長も指導者の“見る目”も様々ですが、ゼルビアの出来は“戸塚マジック”としか言いようが、ありません。

 今季のゼルビアは4-4-2フォーメーションながら、FW奨・津季22歳=今季加入、前・桐蔭横浜大学)は両サイドに流れるプレーが得意ゆえ、実質的にはFW山腰泰博(23歳=今季加入、前・神奈川大学)のワントップです。そして、右MF酒井良(31歳、前・草津)、左MF蒲原達也(25歳=今季加入、前・鳥栖)はドリブル突破が大きな武器。つまり、左右両サイドから果敢かつ分厚いアタックができるのが“魅力のひとつ”なのですが、焦ったり、急いだりすると単調なサッカーに陥ることもあります。レノファ戦は、その典型でした。

 では、良いリズムの時との違いは何か? 戸塚監督が攻撃的ポジションからボランチにコンバートした柳崎祥兵(24歳=2年目、前・駒澤大学)と石堂和人(26歳=2年目、前・山雅)がチーム全体の「サッカーの質」を大きく左右することに、V・ファーレン戦で気づきました。例えば、「クロス→シュート」の間に“飛び出し”が得意の柳崎がからめば、“線”が“三角形”(トライアングル)になります。石堂のパス・センスを生かして、「ドリブル→(石堂へ)パス→フリー・ランニング→(石堂から)パスを受ける」というパターンも効果的。ちなみに、石堂は左足の精度という点でも貴重な存在です。「MIO監督時代に見た時、“あいつ(石堂)だけにはボールを取られるな!”と指示したことがあります」(戸塚監督)とか。監督自身が現役時代は「史上最高の天才」と評された人物ゆえに、相対的に際立ったセンスを見抜けるのかもしれません。

 試合後、同監督に「今のメンバーでも十分にJFL上位を狙えると感じたのですが、どうでしょうか?」と訊ねると、答えは「そう思います」。また、「今日は昨日よりも良かったけど、もっと良くなれますよ」とも――。

 是非、来季は現在のメンバーをベースにして“どこまで通用するか”チャレンジしてほしいものです。短期的な“J参入”だけではなく、サッカーの質にも“こわだる”のがゼルビアの魅力ですし、相対的に強いチームは“すでに”複数ありますから。言い方を変えると、今後“いかに”資金力のあるスポンサーがついたとしても、勝利至上主義に変貌したら、それは「現在に至るプロセスを否定する」ことと同義だとすら思います。

<2日目終了時点の順位>
1位=ゼルビア(勝ち点5、+2)
2位=V・ファーレン(同4、+5)
3位=ホンダロック(同3、-3)
4位=レノファ山口(同0、-4)

<3日目の対戦カード>
ホンダロック対ゼルビア
V・ファーレン対レノファ

<写真>試合後、ファンに向かって歓喜するゼルビアMF石堂和人

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