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Jを目指せ! by 木次成夫

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第1回 中国リーグ「ファジアーノ岡山」
by 木次成夫

 Jリーグを目指すクラブが増えています。Jリーグ・クラブになるには、各県の下部リーグからスタートして、日本全国9つの地域リーグ(北海道、東北、関東、東海、北信越、関西、中国、四国、九州)を経てJFL(日本フットボールリーグ)に昇格する必要があります。かつて横浜FC、ザスパ草津などが通過してきました。そこで、日本サッカーを応援するゲキサカは、「Jリーグを目指すクラブ情報」を連載でやっていくことにしました。是非、読者のみなさん、地元情報をお願いします→情報メールはこちら

まず第一回は中国リーグの「ファジアーノ岡山」

 地元クラブ・リバーフリーキッカーズ(岡山県リーグ1部)を母体に04年から本格的にJリーグを目指し、04年岡山県リーグ優勝。05年中国リーグ準優勝。06年中国リーグ優勝、全国地域リーグ決勝大会3位。2位のFC岐阜がJFL入れ替え戦を経て、今季のJFL昇格を決めた今、最もJFLに近いクラブのひとつです。
 昨季、そんなファジアーノが気になって、中国リーグのホーム最終戦を見に行きました。数少ないながらも、熱い声援を送るファンがいました。家族連れで、ゆったりと観戦しているファンもいました。世代は様々ですが、みんなサッカーを楽しんでいました。そんな中、記憶に残ったのが「キャプテン、カズマサ」というフレーズでした。精度の高いFKと、パスセンスで際立っているレフティ、藤井一昌選手(26歳・写真)のことです。日本トップレベルの選手と比べると、機能的にプレーしている時間や瞬間的なスピードなど劣っている部分はありますが、巧い選手です。例えばTVで見る中村俊輔と、近くで見る藤井選手を比べたら、僕は「藤井選手を見てごらん」といいます。身近に見ると、蹴る瞬間の音が聞こえるし、カーブの弾道が見えます。
 ちなみに藤井選手は、今年の高校選手権準優勝の作陽高校出身です。地元出身の選手がサッカーをしている姿を見るのは嬉しいものです。逆の例をいえば。Jリーグを制した浦和レッズの主力には、埼玉県出身のスターはいません。ワシントン、三都主(現ザルツブルク)ら「他クラブで活躍した」あるいは、静岡出身の長谷部、鈴木(啓太)、山田など他県の学校出身者が多いです。下部組織からレギュラーになった選手がいない点ではJリーグ・クラブ随一です。
 サッカーの見方は人様々です。クラブ経営も様々です。僕は、資本力ではかなわない面もあるけど、地元なりに頑張って“今は弱いけど、夢に向かって頑張る”クラブが好きです。後に知ったのですが、ファジアーノで昨季プロ契約をしていたのはCFのジェフェルソン(ブラジル人)という選手だけ。藤井選手はじめ、それぞれが仕事の後に練習に励んだわけです。その事実を知り、改さめて感動しました。JFL入りをかけて戦う今シーズン、はたしてどんな戦いを見せてくれるか、楽しみです。

 この原稿を書いた後、すぐにレッズファンの方からメールがありました。山岸、内館ら「埼玉県出身の選手もいる」と。その通りです。彼らもファンの方々からすれば、「主力のスター」だということも理解できます。ユースから昇格した選手もいます。でも、下部組織が良い成績を残しているのに、トップチームのレベルが高いゆえに、レギュラーに定着できない選手が多いのは事実です。それは、J開幕当時からかわっていません。資金力を生かして強いチームを作ることは、ひとつの策です。J開幕当時、2部降格時には、近年の強さは想像できませんでした。でも、僕は、下部組織出身の選手や、地元出身選手を起用することで、多少は弱くなったとしても、そういうクラブに愛着を感じます。例えば、数年前の柏レイソルです。浦和レッズにしても、福田正博が「うち、給料低いんですよ」といいながら、頑張っていた時代(Jバブルの中で、地道にやっていた時代)が好きでした。浦和ファンなら全員が知っている広報の方と、オランダのスタジアムを回ったことがあります。彼はドイツキャンプの後に、“せっかくドイツまで来たのだから、見たい”ということで、アヤックス、PSV、フェイエノールトのスタジアムを見ました。スタジアム見学の時間をできるだけ多くとるため、「夕食はおごるから、昼食はごめん、適当に済ませて」といわれ、鉄道駅で、乗り換えの間にオランダ名物のコロッケを食べました。そして、アウェー席の配置など、じっくりと見ている姿に感動しました。そんな頃を思い出すと、「今のレッズは強いけど、変わったなあ」とは思います。

<写真>地元岡山の作陽高校出身の藤井。1980年9月26日生まれ、176cm72kg。

(文・木次成夫)

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