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Jを目指せ! by 木次成夫

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第4回 四国リーグ「カマタマーレ讃岐」
by 木次成夫

 昨年は「うどん」ブームでした。「カマタマーレ讃岐」が誕生したのも昨年です。前身は高松FCというクラブで、03年四国リーグ6位、04年同3位、05年同4位という、どの地方にもあるような普通のクラブでした。ところが昨年、「Jリーグを目指す」活動を本格化。クラブ名もカマタマーレ讃岐と改称したわけです。そして見事、四国リーグ初制覇を達成しました。チーム名の由来は、カマタマ=釜玉(讃岐うどんメニューのひとつ)と、マーレ(MARE=イタリア語の海)を“くっつけた”造語です。そして、写真のように、クラブのロゴは讃岐ウドンに“釜玉”の卵をサッカーボールにデザインしたものです。まず、この地元らしさに僕は感動しました。

 昨年10月、クラブ名の“妙”と四国リーグの激戦状況に興味を持ち、四国リーグ最終戦を見にいきました。勝ち点差2で1位のカマタマーレ讃岐がアウェーで南国高知FCと戦う状況でした。つまり、引き分ければカマタマーレ優勝、負ければ南国高知優勝というわけです。ところが、試合開催地はC大阪などのキャンプで有名な高知市隣りの春野町ではなく、西に普通列車で約50分かかる佐川。これでは、ホームのメリットがないのでは? と思いきや、カマタマーレ讃岐のファンの方が熱い応援をしていました。後で知ったのですが、このグラウンドは国体で使用したとのこと。昨年、秋田(今年の国体開催地)に行った際も感じたのですが、国体で競技場を作ることを決定する地方自治体の“偉い方々”は、観客のアクセスをまるで考えていない人が多いのではないでしょうか? 02年W杯の仙台のスタジアムが典型例ですが……。第1回で紹介したファジアーノ岡山のホーム最終戦が行われた邑久グランドも国体で使用されたものでしたが、アクセスは不便でした。地方に人はよく「車がないと生活できない」といいます。でも、車のない人〔運転できない人〕はどうすればよいんでしょうか。地元以外のサッカーファンの観戦を期待していないとしか思えません。

 ところでその試合ですが、行った甲斐がありました。南国高知の前年度王者という意地もあってか、拮抗した展開になりましたが、なんとかカマタマーレが引き分けに持ち込みました。ただ、その後に出場した地域リーグ決勝大会ではFC岐阜(今季JFLに昇格)、FC Mi-Oびわこ草津(昨年度関西リーグ2位)、静岡FC〔昨年度東海リーグ2位〕に3連敗で最下位。四国リーグを見た時から、組織的なサッカーをしつつも小柄な選手が多いことが気になっていましたが、フィジカル面では太刀打ちできなかったようです。去る2月6日、C大阪との練習試合も見に行った際に感じたものもフィジカルの差でした。U-22日本代表の苔口のゴールが象徴的だったのですが、一瞬のスピードの差は歴然。ただ、言い方をかえるなら、戦術理解度と、個々の選手の能力を考慮した上での実践の度合いと言う点では決して劣っていませんでした。

 カマタマーレのホーム、高松市も訪れました。岡山から快速で約1時間。便利です。少なくとも僕が住んでいる千葉市よりも“華やか”な商店街があり、驚きました。駅前の再開発の激しさは“バブル”すら感じます。ただ、野球の四国アイランドリーグ、香川オリーブガイナーズに比べると、浸透度はイマイチだという印象を受けました。もともと野球の方が盛んな県だったし……とは思いつつ、頑張ってほしいです。

 持論ですが、サッカーの魅力のひとつは“ついでに”です。言い方を変えるなら「従来の名所観光だけではつまらない」から、「サッカーの“ついでに”観光したい」わけです。Jリーグ開幕当初を振り返ると、浦和レッズのファンが盛んにアウェーツアーをしていました。彼らも“ついでに”という思いがあったのかもしれません。僕はFCバルセロナなどスペインリーグのクラブが好きなのですが、その理由は「うまい酒、うまい料理、そして魅惑的なサッカー」が揃っているからです。サッカーの「三位一体主義」と言ったら、おおげさでしょうか

 カマタマーレは2月23日から25日にかけて行われる西日本大会に出場します。同大会はファジアーノ岡山(第1回で紹介)、FC Mi-O(第2回で紹介)など、昨年度の九州、四国、中国、関西の4リーグの上位2クラブが出場します。「Jを目指すクラブ」戦線を占うという意味で楽しみです。

PS 四国から帰る際、岡山に寄って、第1回で紹介したファジアーノ岡山の「フットサルパーク」(2月1日本格オープン)を訪ねました。フットサルコートを利用した子供向けのサッカースクール始まっていました。偶然ですが、僕が訪れた際、スクールの問い合わせに訪れた母親がいました。嬉しくなりました。スクールではファジアーノの選手(元・選手)が教えています。つまり、選手の雇用問題でも「好転」です。ゲーム業界の人には申し訳ないですが、「体を動かそうよ。その方が楽しいですよ」と言いたくなりました。

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(文・木次成夫)

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