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Jを目指せ! by 木次成夫

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第5回 九州リーグ「ニューウェーブ北九州」
by 木次成夫

 Jリーグ所属のクラブ同様に、新シーズンに向けて「Jを目指すクラブ」も動き始めました。そんなわけで、この連載も更新ペースを早めようと思います。今の週一回ペースでは、すべてを紹介する前に今年は終わってしまいそうなので……。

 第5回は九州リーグのニューウェーブ北九州です。

 クラブの前身は1947年(昭和22年)に地元企業チームとして結成された「三菱化成黒崎サッカー班」(後の三菱化学FC)に遡ります。つまり、静岡県から移転したアビスパ福岡、サガン鳥栖とは“根っこ”がかなり違います。「Jリーグを目指すべく」、本格的に活動を始め、ニューウェーブ北九州という名称になったのは2001年。昨年は九州リーグでV・ファーレン長崎、新日鐵大分に次ぐ3位でした。
 僕がニューウェーブを初めて見たのは昨年10月に秋田で行われた全日本社会人大会でした。準決勝で静岡FCに1-2で敗退しましたが、まとまりのあるサッカーをしているのが印象的でした。ただ、FW池元友樹が際立っている点が良くも悪くも気になりました。そして、池元は今季、柏レイソルへ完全移籍。地域リーグのクラブからJFL、J2を飛び越えてJ1へ移籍することは大快挙ですが、ニューウェーブの07年はどうなるのか。クラブ運営という点で、注目していました。

「Jリーグを目指す」九州リーグ所属クラブとしては、すでにロッソ熊本とFC琉球(ともに06年JFL昇格)に抜かれています。ロッソは05年発足ながら1年目でいきなりJFL昇格を決めました。FC琉球にいたっては04年に沖縄県リーグに所属していたクラブ(同年ニューウェーブは九州リーグ6位)です。さらには昨季の九州リーグ王者のV・ファーレン長崎は05年発足。つまり、またもや抜かれる可能性があるわけです。日本人はブーム好き。熱しやすい反面、飽きる(あきらめる)のも早いといわれています。北九州の方々がそうではないことを期待しつつ、このままではクラブが停滞してしまうのでないかという懸念もありました。

 実際、クラブ関係者の方々も危機感を持ったのかもしれません。今年は勝負に出ました。まず、監督にはFC琉球を沖縄県リーグからJFLまで導いた与那城ジョージ氏が就任し、10人の選手が新加入しました。与那城氏は現役時代、読売クラブ(現・東京V)の攻撃的MFとして大活躍し、“ミスター読売”と評されたスターです。直線的なドリブル突破と多彩なテクニックでファンを魅惑しました。選手の中で注目はまず、「読売クラブ」育ちのFW藤吉信次(36歳・前FC琉球)です。92年バルセロナ五輪代表〔アジア予選敗退〕で、Jリーグ開幕の頃はカズ〔三浦知良〕、武田修宏らの“スーパーサブ”として活躍しました。繊細なボールタッチが魅力のドリブラーでした。その後、京都、仙台を経て、中国リーグでもプレーした経験があります。過去3シーズンはFC琉球に所属。つまり、少年の頃の憧れである与那城氏についていきたわけです。

 2月12日、北九州市の百貨店、井筒屋の屋外スペースで新体制並びに新加入選手発表会が行われたので、見にいきました。井筒屋はニューウェーブのユニフォーム胸スポンサーです。だからこそ実現できたのでしょうが、客が多い休日に屋外(道ばた)で発表会をする作戦は素晴らしいです。サッカーに興味のない人たちの目にも触れるわけですから。
 その発表会で藤吉は、読売クラブ時代に“都並敏史(現C大阪監督)宴会部長の後継者”といわれた逸材(?)ならではの「持ち味」を発揮して、一躍人気者になりました。また、新加入選手の中には、昨年度のインカレ(全日本大学選手権)でベスト8に進出した福岡教育大学の川村旬記、永野諒(ともにDFで地元、北九州市出身)もいます。かつて、JリーグあるいはJFLに入れない大学生は卒業後に会社員あるいは公務員(教師)を目指すのが一般的でした。大卒がリスクを覚悟でサッカーに打ち込もうという思いには感動します。ちなみにニューウェーブには藤吉らプロ契約選手もいますが、半数以上がアマチュア契約です。是非、頑張って、自らの力で「プロ選手だけで成立するクラブ」を作ってほしいと思います。

PS 発表会で初めて聴いたのですが、ニューウェーブの応援歌は、昔の”青春ドラマ“風というか、人気アニメの”エースを狙え”風というか、非常に良いです。クラブのHPでダウンロードできますので、是非、視聴ください。

<写真説明>新加入発表会での藤吉。いきなり手振り付きで「乳首をクリック!」と意味不明なフレーズを発し、場を沸かせた。本人いわく「沖縄では浸透してきたんですが、これからは北九州でも流行らせたい」。4月には37歳になりますが、ノリはかわっていないようです。

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(文・木次成夫)

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