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Jを目指せ! by 木次成夫

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第7回 西日本社会人大会特別編 その1
by 木次成夫

 2月23日から25日まで山口県維新百年記念公園(陸上競技場、ラグビー・サッカー場)で第26回西日本社会人サッカー大会が行われました。
 出場チームは8。昨季の関西、中国、四国、九州リーグの上位2チームです。つまり、関西1位のバンディオンセ神戸、同2位のFC Mi-Oびわこkusatsu、中国リーグ1位のファジアーノ岡山、同2位のセントラル中国。四国リーグ1位のカマタマーレ讃岐、同2位の南国高知FC。九州リーグ1位のV・ファーレン長崎、同2位の新日鐵大分です。3日間で3試合(1日=1試合)というハードなスケジュールでした。結果は、1位=Mi-O、 2位=バンディオンセ、3位=V・ファーレン、4位=ファジアーノ、5位セントラル、6位=カマタマーレ、7位=新日鐵、8位=南国高知。Jリーグ入りを目指しているクラブの新シーズンを占う意味で重要な大会だと思って、最初の2日間だけ行ったのですが、楽しかったです。このコラムで今までに紹介したクラブも随分状況が変わっているので、何回かに分けて書きます。

 まずは、優勝したMi-Oです。初日はカマタマーレ相手。昨季の地域リーグ決勝大会では6-0と圧勝したのですが、今回は3-2の辛勝。カマタマーレはすでに紹介しましたが、昨年度の良さであったチーム完成度の高さを維持しつつ、今季、愛媛FCからCB泉谷光紀(23歳)が移籍したおかげで守備力がアップしていました。それに比べると、Mi-Oはチーム一体となったプレッシングなど勤勉なサッカーを実践しつつもメリハリに欠けていました。4-4―2でサイドアタッカーが攻撃の基点になるスタイルですが、サイドで優位に立てないと停滞してしまいます。これは、レベルの差に関係なく、イングランドのチェルシーや、スペインのバレンシア、そしてオランダ代表などと似ています。解決策としてまずあげられることは、2人のボランチのいずれかが状況に応じてポジションを上げる(あるいは2トップのいずれか1人が下げる)かして攻撃にアクセントを作ることですが、できませんでした。
 そして2日目の相手はファジアーノ。積極的な強化で昨季とはまるで別のチームになり、初日は新日鐵に8-1と圧勝していました。両チームの初戦を見て、選手個々人の能力の差ではファジアーノが勝ると感じていたのですが、結果は2-1でMi-Oの勝利。プレッシングの勤勉さと、サイドの攻防で競り勝ったのが勝因です。初日の結果を克服しつつ、対戦相手を研究した結果だと思います。
 両クラブとも「Jリーグ入り」を目指しているのですが、選手強化という面で多少違う点も、試合を面白く見た理由でした。ファジアーノは昨季の主将・藤井一昌選手はじめ10人以上が退団し、半数以上が“新人”でした。Mi-Oも状況は似ているのですが、主将の根岸誠貴選手他、チームの前身である佐川急便京都サッカー部の選手が何人か残っています。新人にしても北大津高校出身のMF浦島貴大(18歳)、草津東高から清水、新潟シンガポールを経たMF前田高孝(23歳)といった“地元”選手が活躍しました。勝てば官軍のファンは別ですが、僕のような田舎者には地元出身者の活躍は嬉しいことです。

 Mi-Oは決勝でバンディオンセに1-1からPK戦の末に勝利しました(試合は見てはいませんが)。バンディオンセは2日目のV・ファーレン戦を見ましたが、昨季、天皇杯で横浜FCに勝っただけのことはあり、完成度が高かったです。そういう意味で、来るシーズンの関西リーグは楽しみです。いい訳ですが、なぜ25日の西日本大会を見なかったかというと、その日のFC岐阜と松本山雅の練習試合を見たからです。結果は、3-1で岐阜の勝利。近々、詳細、書きます。

 ところで、この西日本大会。プログラムを見て、今回が26回目と知りました。ボランティアの方々の頑張りは“偉い”と思いつつ、苦言です。23日、つまり試合当日の地元新聞には「試合予定」が小さく掲載されていただけです。最寄り駅は無人駅で、スタジアムに行っても、大会の看板はナシ。これでは、僕のように「絶対に行く」という人間以外は、行けません。新聞(あるいはTV)を見て、楽しそうだから行こうか、というファンが生じえません。僕は初日にラグビー・サッカー場に行ったのですが、取材陣は僕を含めて、おらそく5人以下。関係者以外のファンは50人以下(ちなみに、観戦は無料)。2日目は陸上競技場に行きましたが、取材陣はこれまたたぶん5人以下。土曜日に関わらず、ファンはおそらく100人以下(うちV・ファーレンのファンは3人)。儲かったのはスタッフ用の“仕出し弁当屋さん”だけではないでしょうか。

 これが「Jを目指すクラブ」ムーブメントの現状なのかと思いつつ、悲しくなりました。地元新聞(あるいは地方新聞)で目立つのは、ゼロックス杯と、“バルサ敗退”の記事。そんな記事は、地方で金を払って読みたいとは思いません。それぞれのクラブあるいは、サッカー協会、マスコミ関係者の方々には、もっと地元のことを宣伝してほしいと思いました。大会運営費は自治体が負担するのでしょう。でも、それは、税金です。スタジアム建築費も税金です。無駄遣いとは言いたくありません。せっかくの機会、もっと未来に向けて、ポジティブにやりましょうよ、と言いたいです。僕のように、初めて山口県を訪れ、開催スタジアムから徒歩30分以内(鉄道駅で、ひとつ)の湯田温泉を知り、機会があったら、また来たいと思った人間もいるのです。

<写真説明>FC Mi-Oの左サイドアタッカーの荒井太輔(背番号18)。クラブの前身である佐川急便京都サッカー部時代からの生え抜き

(文・木次成夫)

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