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Jを目指せ! by 木次成夫

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第9回 北信越リーグ1部「ツエーゲン金沢」
by 木次成夫

 北信越リーグは日本全国の「地域リーグ」の中で、「Jを目指すクラブ」が多い点で最大の激戦区です。第3回で紹介した松本山雅FCをはじめ、1部リーグ8クラブ中、半数以上がJリーグ入りを目指すことを表明しています。
 ツエーゲンは56年発足の金沢SCから発展したクラブで、昨年、現在の名称になりました。昨季の成績は1部4位。ちなみに1位はジャパンサッカーカレッジで、2位=松本山雅、3位=長野エルザ(今年から長野パルセイロに改名)。ツエーゲンと長野との勝ち点差は12もあり、1位しか地域リーグ決勝大会に出場できない北信越リーグの状況を考慮すれば、“先は長い”という印象を持っていました。

 ところが、来るシーズンに向けての積極的なチーム強化は、前回も紹介したファジアーノ岡山にも負けていません。クラブ首脳陣が危機感をもったのでしょうか、激戦区を一気に勝ち抜こうという意気込みが伝わってきます。新加入選手17人。監督には80年代後半、日産自動車(現・横浜FM)が加茂周監督のもと、木村和司、水沼貴史、金田喜実、柱谷幸一らを要して黄金時代を築いた当時の右DF、池田司信氏が就任しました。クラブのテクニカルディレクター、越田剛史氏(元・日本代表DF)とは日産時代の後輩にあたります。指導者としては日本女子代表を率いた経験もあります。

 新加入選手で注目株をあげるなら前・柏レイソルの広庭輝(ヒカル)選手です。千葉県内ではスポーツの名門として有名な柏日体高校出身。165cm、59kg。「パスセンスは際立っているし巧いが、小柄で華奢すぎる」という印象を持ったのですが、柏では出番に恵まれず、2年目には当時JFLの愛媛FCにレンタル移籍。J2を飛び越した“都落ち”には驚きましたが、リーグ戦29試合に出場し、愛媛のJFL昇格に貢献しました。ところが、昨季は同じ愛媛で、リーグ戦7試合出場のみ。このままではレイソルを解雇されるのでは? と思いきや、案の定、Jリーグの移籍リストに名前が掲載されました。
 以来、動向が気になっていたのですが、2月上旬にツエーゲンが入団を発表。さっそく、という思いで、2月11日に岐阜県大垣市で行われたFC岐阜との練習試合を見に行きました。クラブハウスも更衣室もなく、トイレは仮設。先頃、経営難が明らかになったFC岐阜の苦労が伝わってきましたが、そんな場所にも関わらず、ツエーゲンのファンが数人いた点にも驚きました。

 広庭はレイソル入団時とは比べものにならないほど、逞しくなっていました。ボランチの位置で的確にボールを裁き、状況に応じてはドリブルで攻撃参加するなど、いわば「攻守の要」。また、この試合、同じく新加入のMF金田隼輔(早稲田大学新卒)は持ち味の豊富な運動量を発揮し、トップ下でプレーした木村龍朗は昨季の北信越リーグ・アシスト王ならではのセンスを感じさせました。チーム全体的に見ても、“ほぼ新チーム”にも関わらず、非常に組織だっている点に驚きました。試合は45分X2本、プラス20分X1本という変則的な形式で行われたのですが、結果は岐阜が1-0で辛勝。岐阜は厳しいトレーニングによる疲労もあってか、動きが鈍かったです。

 試合後、広庭と話すと、レイソル解雇のショックを脱したのか、非常に朗らかでした。ツエーゲンとはアマチュア契約ではないそうですが、「そんなにもらっていないので、これからバイト先を探します」。肉体だけでなく、メンタル面でも逞しくなったようです。現在21歳。まだまだ伸びる世代ですから、期待したいです。

 北信越リーグは4月8日(日曜日)に開幕します。ツエーゲンの初戦の相手はフェルヴォローザ石川・白山FC(昨季、1部5位)。いきなり「石川ダービー」というわけです。そのうちに改めて紹介しようと思っていますが、フェルヴォローザもJリーグ入りを目指しているクラブで、積極的な強化をしています。

(文・木次成夫)

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