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Jを目指せ! by 木次成夫

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第10回 JFL開幕 FC岐阜「歴史的勝利」
by 木次成夫

 3月18日、JFL(ジャパンフットボールリーグ)が開幕しました。参加チームは18。うちロッソ熊本(昨季5位)、栃木SC(同7位)、ガイナーレ鳥取(同11位=当時はSC鳥取という名称)、FC岐阜(今季昇格)が「Jリーグ準加盟」クラブです。
 
 どこに行こうか悩んだ結果、昨季優勝のHonda FC(本田技研)対FC岐阜を見に、Hondaのホーム、都田サッカー場(浜松市)に行きました。HondaはJリーグ創設前のJSL(日本サッカーリーグ)時代からの古豪ですが、「Jを目指さない」クラブとして現在に至っています。かつては関塚隆(現・F川崎監督)、北沢豪(現・解説者)ら多くのスター選手を輩出しています。

 JFLは「Jを目指す」クラブと、Hondaのような「Jを目指さない」クラブ(チーム)が混在しています。「Jを目指さない」理由は、Jリーグ入りするにはトップチームの実力だけでなく、クラブとして下部組織を整備するなど様々な条件があるのに対して、JFLは単独チームでも参加できるため、財政的な理由も大きいようです。ちなみに「Jリーグ準加盟」クラブになるには、「条件は満たしたので、成績が良い場合はJリーグに入れてください」という趣旨の申請をしなければなりません。そして、この申請が条理されないと、JFLで何度優勝しても、Jリーグ入りはできません。
 また、「Jリーグを目指さない」といっても弱いわけではありません。昨季の順位を振り返ると、2位は佐川急便東京SCで3位が佐川急便大阪SC(両クラブは今季合併して佐川急便SCとして参加)、4位はYKK AP。「Jを目指す」クラブのひとつで、積極的な強化で話題になったロッソ熊本は5位に終わりました。矛盾しているようですが、プロが大勢いるチームよりも、アマチュアだけのチームのほうが、「プロ意識が高い」こともある点が、JFLの難しいところです。企業アマチュアは長い間、サッカーに限らずバレーボール、バスケットボールなど様々な日本スポーツの牽引者でしたが、バブル崩壊以降、廃部が進んでいます。サッカーも同様です。ですから、アマチュアも「生活がかかっている」わけです。例えば“落ちこぼれJリーガー”とは根性が違います。

 FC岐阜に関してはすでに紹介しましたが、昨季東海リーグ優勝を果たして、地域リーグ決勝大会に参加。TDKに次ぐ2位ながらも、JFL最下位のホンダロックとの入れ替え戦に勝って昇格を果たしました。FC岐阜にとっては、いきなり厳しい試合になったわけですが、今後の行く末を占うには絶好の機会ともいえます。

 試合は後半42分にボランチの佐藤聡(27歳)がゴールを決めて、FC岐阜が1-0で勝ちました。エースFWの片桐淳至(23歳)が粘ってあげたクロスがこぼれたところを狙った見事なミドルシュートでした。歴史に残る1勝です。
 とはいえ、FC岐阜の出来は良くありませんでした。Hondaはチーム完成度が高く、時にはサイドアタッカーが深くまで切れ込み、時にはアーリークロスという、シンプルながらも確固たる形がありました。それに比べてFC岐阜は中盤のスペースが間延びしてしまい、何度もピンチに陥りました。
 CB小峯隆幸(32歳、2年目=前・徳島)、昨季の地域リーグ決勝大会前にガンバ大阪からレンタルで加入し、今季完全移籍したGK日野優(24歳)と、今季名古屋グランパスから加入したCB深津康太(22歳)ら守備陣の頑張りでなんとか無失点に抑えたという感じです。結果論ですが、補強がうまくいったともいえますが……。
 コーチ兼選手の森山泰行は試合後「主導権を握れるところでサボった」と苦戦の理由を厳しい表情で語りました。普段以上に“コワモテ”。この試合を見る限り、個々の選手の能力という点では、岐阜は「格下」ではありません。チーム完成度が低いだけです。今後のチーム「修正」に期待しましょう。

 ところでFC岐阜は、選手への給料未払い、クラブの財政赤字などが表面化しました。結果的には、身の丈以上の選手強化をしてきたということですが、今季からGMに就任した今西和男氏が状況を公にすることで、遅ればせながらの金融機関からの援助や自治体の協力が徐々に決まって来ています。ホーム・スタジアムが永遠の大赤字というJクラブもある中、FC岐阜の赤字など、“ない”に等しいくらいです。
 是非、ファンの皆さんにはスタジアムに足を運んでFC岐阜をサポートしてほしいものです。JFLはホーム&アウェー方式の2回戦総当りで、最終節は12月2日。今季が駄目なら、来季。それでも駄目なら……昇格するまで。長い戦いです。

JFL第1節 他の試合結果
YKK AP 4-2 三菱水島FC
アローズ北陸 1-0 FC刈谷
佐川急便SC 1-0 TDK SC
ロッソ熊本 2-1 流通経済大学
横河武蔵野FC 2-1 佐川印刷SC
栃木SC 1-0 FC琉球
(得点者は前・柏の山下芳輝)
ソニー仙台FC 0-1 ジェフリザーブス
アルテ高崎 1-0 ガイナーレ鳥取

(取材・文 木次成夫)

<写真>Honnda戦の岐阜ファン。“熱い応援”はHondaファンを圧倒していた

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