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Jを目指せ! by 木次成夫

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第14回 北信越リーグ フェルヴォローザ石川・白山FC
by 木次成夫

 4月8日、「Jを目指す」最激戦区、北信越リーグが開幕しました。第1節の注目カードは、ツエーゲン金沢(昨季4位)対フェルヴォローザ石川・白山FC(昨季5位、以下、フェルヴォ)の“石川ダービー”。地元の盛り上がり具合も見るべく、行って来ました。
 フェルヴォは1973年設立の「松任オフサイドクラブ」から発展してきたクラブです。現在、会社自体は金沢市にありますが、もともとは旧・松任市(マットウと発音。“平成の大合併”で現在は白山市)がホームです。
 01年に石川県リーグで優勝し、02年以降は北信越リーグに所属。昨季は5位でした。僕が初めてフェルヴォを見たのは、昨年秋の全日本社会人大会でした。北信越リーグですら中堅にも関わらず、結果的に同大会を制したV・ファーレン長崎に2回戦で1-1の末にPK戦で敗れる大善戦を演じたのです。地味な選手揃いでしたが、非常にまとまりがあり、闘志溢れるチームでした。九州リーグを制して、「Jを目指す」クラブ随一の注目度だった“V・ファーレンもたいしたことない”と思ったほどです。
 石川県から大会開催地の秋田県まで熱いファンが応援にきていた点も驚きでした。30人くらいだったのですが、東北地方のチームを除けば、“最大規模”。「選手は疲れていますから、引っ張っていきましょう」などと、リーダーが指示をしてから、力強い声援をするスタイルに熟練を感じました。
 もっとも今季のフェルヴォは、その時とは“ほぼ”別のチームになっていました。ツエーゲン、松本山雅、長野パルセイロ同様、積極的な強化をしたからです。まず、監督にはスロベニアで指導経験のある濱吉正則氏を起用。桐蔭学園時代に“超高校級ストライカー”と表された阿部祐大朗(写真。22歳、元・横浜FM)を筆頭に、スロベニア人選手を2人獲得するなどした結果、ツエーゲン戦のスタメンのうち昨季のV・ファーレン戦に出場した選手は、わずかに2人でした。
 試合は0-1で敗戦。スタメンのほとんどが元・Jリーガーというツエーゲン相手に、フェルヴォはスロベニア人DFアンジェルコビッチを中心に粘りましたが、83分、木村龍朗にゴールを奪われました。同選手は元・サンフレッチェ広島所属で、昨季の北信越リーグ・アシスト王です。最も注意すべき選手に決められたという点で、痛恨です。
 その一方でフェルヴォ期待の阿部は、良い形でボールを受けることすらままならない状況で、持ち味を発揮できませんでした。ただ、1回だけカウンター攻撃からの惜しいチャンスがあり、それを決めていれば、フェルヴォにも勝機があったかもしれません。いわゆる“得点の嗅覚”には、元・U-20日本代表選手の片鱗を感じました。

 他の「Jを目指す」クラブの結果を見ると、松本山雅FCは6-0で上田ジェンシャンに、長野パルセイロは7-0で新潟経営大学に勝ちました。おそらく、今後、フェルヴォは厳しい戦いの連続になるでしょう。阿部という相対的に優れた選手を擁しながらも、カウンター攻撃の形がないのが、現状では致命的です。また、ツエーゲンにはユニフォームの胸スポンサーがありながらも、フェルヴォにはない点でも、クラブ経営の苦労を感じました。ファンの方々には是非、長い目で見てほしいと思います。もっとも、垂れ幕のひとつに「いつまでもどこまでも着いていく」と書いてあったほどのファンですから、「言われなくてもわかっている」という感じでしょうが……

 試合に勝ったツエーゲンも、「Jを目指す」クラブとしては、まだまだです。早稲田大学新卒のボランチ、金田隼輔を中心に完成度の高いポゼッション・サッカーを実践しました。木村龍朗という“クラブ最高のスター”のゴールという点では最高のスタートです。ただ、晴天の“ダービー”にも関わらず、観客収容人数が約3000人の金沢市民サッカー場が満員にはならなかった点に、「厳しい現実」を感じました。例えば金沢駅には、まるでサッカーの雰囲気は感じられませんでした。先週、九州リーグを見に行った際も感じましたが、「チーム強化」の派手さから感じるイメージからすると、ファンは少ないのだというのが率直な印象です。

(取材・文 木次成夫)

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