beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第15回 人気上々!? 北信越リーグ第2節
by 木次成夫

“石川ダービー”に続き、北信越リーグを見に行ってきました。15日(日)は関西リーグ、中国リーグ、関東リーグの開幕日でしたが、長野県の盛り上がりぶりを人づてに聞き、興味を持ったしだいです。

 まずは、松本山雅FC(第3回で紹介。昨季2位)対フェルヴォローザ石川・白山FC(前回紹介。昨季5位)。松本山雅は今季、大学新卒を中心に10人の選手を補強しました。第1節は上田ジェンシャン(昨季7位)に6-0で圧勝。片山真人(近畿大学卒。G大阪Y出身)が3得点、佐々木惇(筑波大学卒)が2得点あげるなど、“大卒新人”が大活躍しました。そして、フェルヴォ戦は2-0で勝利。片山が先制し、昨季からのメンバー、白尾秀人(元・甲府など)が追加点をあげました。この試合のスタメンのうち、新人は5人。昨季のチームをベースにした上で、“大卒新人”を中心にした補強は現状では大成功です。  
 彼らに共通するのは豊富な運動量とハングリー精神。大学でコンスタントにプレーしていたため、試合勘もあります。例えば、フェルヴォの阿部祐大朗(前・横浜FM、元U-20日本代表、22歳)に比べると、片山のほうがはるかにキレ味鋭かったです。また、経験豊富でゲームメイクとパスセンスに長けたボランチ土橋宏由樹(29歳、前・甲府)が、インカレ風サッカーに「プラスα」のアクセントを加えている点も今季の松本山雅の魅力です。

“大卒新人”たちは長野県内で仕事をしつつ、アマチュアとしてサッカーを続けていくことを選んだそうです。いわゆる「Jターン」就職の新たな形態といっても良いでしょう。地元ファンには嬉しいことでしょうが、待望の「Uターン」選手もいます。中村俊輔を輩出した桐光学園高校から、びわこ成蹊スポーツ大学に進学したサイドアタッカーの今井昌太選手です。フェルヴォ戦でも闘志溢れるプレーで勝利に貢献しました。
 この日の試合の観衆は1840人(主催者発表・入場料無料)。2500人弱のファンが集まった第1節には及びませんでしたが、試合会場のアルウィンのアクセスの悪さ(最寄り駅から徒歩約1時間、バスは1時間に1-2本)と、桜満開の花見日和だったことを考慮すれば立派なものです。
 ちなみに松本山雅には、すでにU-18から小学生向けの“スクール”に至る下部組織があります。地元企業を中心にした支援も徐々に充実してきています。20社を越すオフィシャルパートーナーの他、小口の賛助会員(年会費3万円―10万円)は70社以上。有力企業から街中の歯医者、飲食店まで、多方面の理解を得た点は素晴らしいと思います。
 このコラムの第3回で紹介した際は「急ぎすぎている気がする」と書きましたが、比較的地味な補強と、地道な地盤作りに、良い意味での方向転換、地域密着を感じました。

 さて、続いて長野パルセイロ(昨季3位)。今季は要田勇一(前・ジェフ千葉)はじめ元Jリーガーを中心に8人を補強しました。そして第1節は新潟経営大学(昨季6位)に7-0で圧勝。第2節の相手は、これまたJリーグを目指す「ヴァリエンテ富山」(昨季2部優勝)でしたが、パルセイロが4-1で圧勝。この試合のスタメンのうち、新人は4人。松本山雅同様、昨季のチームをベースにした補強が成功したわけです。FWの兼子一樹はじめ長野県出身者が主力に数人いる点は松本山雅にない魅力です。ただ、3トップの攻撃的スタイルは面白いものの、松本山雅あるいはツエーゲン金沢に比べると、サッカーが大雑把だという印象を受けました。得点は前線の3人に“お任せ”という感じです。格下相手には通じても、ポゼッション重視の組織的サッカーをしてくる相手にどうなるか。そういう意味では、松本山雅やツエーゲン金沢との上位争いが、いっそう楽しみなのですが……。

 対するヴェリエンテ富山はDF木場昌雄(元G大阪など)を中心に粘りましたが、戦力不足は否めませんでした。今後も厳しい戦いになるでしょう。
 この試合の観衆は入場料有料(大人500円、子供200円)ながらも969人(主催者発表)。第1節の1358人には及びませんでしたが、一見して普通のおじさん、おばさんの姿も目立つなど、人々の興味が高まっていることが感じられました。高校サッカーが盛んだった歴史もないサッカー後進地域としては上々と言っても良いでしょう。
 ところで、4月29日には松本山雅と長野パルセイロの“信州ダービー”が松本ホームであります。果たして何人のファンが訪れるでしょうか。もともと長野県は野球が盛んだった県。28日から野球の北信越BCリーグの開幕する点でも注目です。

PS 今まで紹介した「Jを目指すクラブ」の動向
●ツエーゲン金沢
15日、北信越リーグ2節、上田ジェンシャンに2-1の辛勝。通算2連勝ながらも、得失点差で長野、松本、JSC(ジャパンサッカーカレッジ)に次ぐ4位。5月13日のホーム、対松本山雅戦は優勝戦線を占う意味で注目です。

●ファジアーノ岡山
15日、中国リーグ開幕 マツダSCに4-0の勝利。東京Vからレンタル移籍中のFW喜山康平が3ゴールの活躍。

●FC Mi-Oびわこ草津
15日、関西リーグ開幕 グラスポ柏原に4-0の勝利。

●カマタマーレ讃岐
15日、四国リーグ2節 徳島コンプリールSCに6-0で勝利。開幕2連勝。

●ニューウェーブ北九州
15日、九州リーグ4節 アウェーで沖縄かりゆしFCに2-0で勝利。通産3勝1敗で4位。

●V・ファーレン長崎
15日、九州リーグ4節 三菱重工長崎に6-1で勝利。開幕4連勝で首位。(2位=新日鉄大分=昨季2位、3位=ホンダロック=3試合のみ消化=昨季JFL最下位)。
5月19日のNW北九州ホームのV・ファーレン戦は注目です。

●FC岐阜
15日、JFL6節 アウェーのアローズ北陸戦で0-0の引き分け。通産5勝1分けで、栃木SCと勝ち点で並ぶも、得失点差で首位を奪われる。
4月29日、アウェーの栃木SC戦は注目です。

<写真>今年、松本市は市制100周年。マスコットキャラクターのアルプちゃんが、スタジアムに登場。そのほか今回取り上げた2戦の試合写真は最新NEWSに掲載。

●このコラムの感想、あなたの地元の「Jを目指す」クラブ情報をぜひこちらにお送りください!●


(取材・文 木次成夫)

TOP