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Jを目指せ! by 木次成夫

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第16回 北信越リーグ1部 ヴァリエンテ富山
by 木次成夫

 3週連続になりますが、北信越リーグを見にいきました。1部リーグ所属8クラブ中5クラブが「Jを目指す」最激戦区ながら、ヴァリエンテ富山だけホームで見たことがなかったからです。4月15日の長野パルセイロとのアウェー戦で10人に満たないながらも、「お前が大好きだ。いつでもついてるぜ。我らの愛するヴァリエンテ」と歌うなど、熱く応援するファンが印象的だったのも理由です。

 ヴァリエンテ富山の歴史は1971年に遡ります。当時の名前は「西友クラブ」。81年に北信越リーグに昇格したものの、95年に最下位になり、富山県リーグに降格。2000年に5シーズンぶりの北信越リーグ復帰を果たしたものの、04年に最下位になり、2部に降格(同リーグは04年から2部リーグ制に変更)。05年は2部3位ながら、昨年は見事優勝を果たし、3シーズンぶりに1部に戻ってきました。クラブ史上最高順位は02年の3位。ヴァリエンテ富山という名称になったのは99年のことで、ヴァリエンテはスペイン語で「勇敢な」という意味です。

 富山県にはJFL(ジャパン・フットボール・リーグ)所属クラブがふたつあります。YKK AP(昨季18クラブ中4位、黒部市)とアローズ北陸(北陸電力。同8位、富山市)です。共にJリーグを目指していません。つまり、ヴァリエンテ富山は実力的には県内3番目ながら、唯一の「Jリーグを目指すクラブ」なのです。
 ただ、今季を迎えるにあたり、大きな変革がありました。05年からクラブの運営母体になっていた会社との契約を解消したのです。今季の布陣を見る限り、親会社主導のもとで短期的にJリーグを目指す路線を加速化するのではなく、「地方クラブ」として着実に歩む道を選択したということだと思います。14人の新人選手のうち、半数以上は富山県内の大学あるいは高校出身者。ツエーゲン金沢、フェルヴォローザ石川・白山FCなど地域リーグとしては破格の補強をしたクラブと比べると、地味な選手揃いです。

 4月22日の今季初ホーム、松本山雅FC戦は1―5で完敗でした。前半10分にGK青木大悟が松本山雅FW、片山真人(近畿大学卒、G大阪Y出身)のドリブル突破をファールで止めて退場になったのは“いたしかたのないシーンだったとはいえ”痛かったです。松本山雅は、FW片山真人の他、ボランチの土橋宏由樹(前・V甲府)、左SBの吉田匡良(前・FC刈谷)、右サイドアタッカーの今井昌太(びわこ成蹊スポーツ大学卒)が得点。“どこからでも点が取れる”という感じです。改めて松本山雅の補強は成功していると実感しました。
 ヴァリエンテは、これで開幕3連敗。得失点差で8クラブ中6位ですが、今後も厳しい戦いの連続になるでしょう。木場昌雄(32歳・元G大阪など)をはじめ、主力は昨年も在籍していた選手たちです。富山第一高校出身のDF金森文洋(24歳・主将)とMF浅岡徹(21歳・第2節の長野パルセイロ戦で得点)をはじめ、地元出身選手が多い点は、ファンにとって魅力のひとつですが、松本戦のスタメンのうち新人は1人だけ(富山国際大学出身の森川雄二)。相対的に見て、戦力不足は否めません。とはいえ、長野パルセイロ戦にせよ、松本山雅戦にせよ、互角以上の試合運びができた時間帯もありました。最大の問題は技術面ではなく、チームとしての集中力。優勝は無理でも、クラブ史上最高順位は夢ではないと思います。

 ところで、富山には昨年からバスケットボールのbjリーグに参戦している「富山グラウジーズ」(昨季8チーム中7位)があります。4月28日開幕の北信越BC(ベースボールチャレンジ)リーグには、「富山サンダーバーズ」というチームが参加します。
 街中のコンビニにサンダーバーズのポスターと、プロ野球の交流戦の告知ポスターが張ってありました。富山駅近くには、「グラウジーズ」グッズを売っているスポーツショップがありました。現状では「サッカーのヴァリンテ富山」が一番、地味な存在です。

 とはいえ、野球、バスケットボールにはないサッカーの魅力のひとつは「世界とクラブレベルで繋がっている」点です。壮大な夢ですが、すべてのクラブがクラブワールドカップで優勝する可能性があるわけです。
 また、「Jリーグを目指すクラブ」ならではの魅力もあります。それは、選手とファンの“近さ”です。ヴァリエンテは松本山雅戦後、試合と同じピッチで“選手が指導する”子供のためのサッカースクールに開催しました。一時は大雨になった試合中、観戦したり、試合そっちのけで遊んだりして待っていた子供たちは大喜びで走っていました。TVで見る大スターよりも、一緒に”遊べる“地元のスターの存在は貴重です。
 日本全国の「Jを目指すクラブ」のすべてに言えますが、トップチーム強化、クラブ運営ともに、焦らず長い目で頑張ってほしいと思いました。

PS 今まで紹介した「Jを目指すクラブ」の動向

長野パルセイロ 22日、北信越リーグ3節、上田ジェンシャンに2-0で勝利。通産3連勝ながら松本山雅FCと得点、失点とも同数になり、単独1位から同率1位に。4月29日、アウェーの松本山雅戦は日本全国の地域リーグ屈指の注目カードです。

ツエーゲン金沢
 22日、北信越リーグ3節、新潟経営大学に3-0で勝利。通産3連勝ながら得失点差で長野パルセイロ、松本山雅FCに次ぐ3位。

フェルヴォローザ石川・白山FC
 22日、北信越リーグ3節、JSC(ジャパンサッカーカレッジ)に3-2で今季初勝利。通産1勝2敗で5位(4位は2勝1敗のJSC)。前・横浜FMの阿部祐大朗、初ゴール。

ファジアーノ岡山
 22日、中国リーグ2節 日立笠戸に8-0で勝利。開幕2連勝。リーグ随一の選手補強で、向かうところ敵なし状態?

FC Mi-Oびわこ草津
 22日、関西リーグ2節 アイン食品に3-0の勝利。開幕2連勝。昨季の王者バンディオンセ神戸(得失点差で現在1位)との「Jを目指すクラブ」対決(5月26日)に注目です。

ニューウェーブ北九州
 22日 九州リーグ5節 ヴォルカ鹿児島に3-0で勝利。通産4勝1敗で4位。

V・ファーレン長崎
 22日 九州リーグ5節 OSUMI NIFSに4-0で勝利。開幕5連勝で首位。(2位=新日鉄大分=昨季2位、3位=ホンダロック=昨季JFL最下位)
5月19日のNW北九州ホームのV・ファーレン戦は注目です。

FC岐阜
 22日、JFL7節 流通経済大学に3-0で勝利。通産6勝1分け。前節終了時点で得失点差で首位だった栃木SCがアローズ北陸と引き分けたため、首位奪回。4月29日、アウェーの栃木SC戦は「Jリーグ準加盟クラブ」対決は、優勝戦線を占う意味で注目です。

※ヴァリエンテ富山対松本山雅の試合写真は最新NEWSに掲載。

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