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Jを目指せ! by 木次成夫

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第18回 JFL 栃木SC
by 木次成夫

 ロッソ熊本、ガイナーレ鳥取、FC岐阜と並ぶ「Jリーグ準加盟」クラブです。前身は1953年発足の栃木教員クラブで、94年に現在の名称になりました。JFLに昇格したのは2000年で、
同年12チーム中11位。
以後、
01年16チーム中13位。
02年18チーム中12位。
03年16チーム中8位。
04年16チーム中9位。
05年16チーム中4位。
06年18チーム中7位。
 この7年の間に「Jリーグ入り」という点では、ザスパ草津(04年JFL昇格。同年3位で05年J入り)と愛媛FC(01年JFL昇格。05年1位で06年J入り)に追い抜かれました。
 成績だけ見ると停滞していますが、地道な活動があったからこそ今があるとも言えます。保守的な栃木県にやっと火がついたかも、という印象です。昨年6月にクラブを株式会社化し、天皇杯3回戦ではJ2の東京Vを1-0で破りました。この快挙がファンあるいは地元の人々のサッカー熱を一気に高めたようです。地元の支援が活性化し、今年2月には「Jリーグ準加盟」が承認されました。栃木県は関東地方で唯一Jリーグクラブがない県という事情も、支援上昇の要因かもしれません。ちなみに昨年はU-15が高円宮杯でベスト8に進出しました。あまり報道されませんでしたが、例えば今季J1に昇格して絶賛された横浜FCがなしえていない大快挙です。

 こんな栃木SCの地道な努力を象徴する1人が監督の高橋高(タカハシタカシ)氏です。同氏は63年生まれの43歳。地元の宇都宮農業(現・宇都宮白楊)から当時は日本随一の名門だった国士舘大学に進学。同学年にはミッシェル宮沢氏(元・日本代表、現・解説者)がいました。クレバーな守備で“大学ナンバーワンDF”として注目されていたスイーパーのミッシェルの前方で、実直なストッパーをしているのが高橋監督でした。ストッパーというのは今や死語に近いですが、体を張って相手CFを抑えるのが「仕事」でした。
 1学年下には後に日本代表に主将になった柱谷哲二がいました。もっとも、大学時代の柱谷は守備には縁のない攻撃的MFでしたが……。他の大学を見ると、2学年上に鈴木淳(筑波大学。現・新潟監督)と関塚隆(早稲田大学。現・川崎監督)、2学年下に長谷川健太(筑波大学、現・清水監督)、大榎克己(早稲田大学。現・同大学監督)、堀池巧(順天堂大学。現・解説者)の“清水三羽ガラス”がいました。サッカーのプロリーグなど夢にも思わなかった時代、大学サッカーにスターが集まった時代でした。
 高橋監督は大学卒業後、地元に戻って中学校教諭になりました。現役時代を含めて「栃木SC22年目」になるそうです。同世代にはJリーグバブルで年収1億円以上すら経験した人がいる中、地道に頑張っている人がいるからこそ、今の日本サッカー界があるのだと痛感しました。
今季、栃木SCはFW山下芳輝(29歳、元・柏など)、MF小林成光(29歳、元・FC東京など)ら6人が新加入しました。ちなみに小林選手は佐野日大高校時代に全国高校選手権に出場したこともある「地元のスター」です。

 5月6日、第10節のホーム、対ロッソ熊本戦を見ました。雨にも関わらず、観客は約3000人。大人のファンが多い点に、“ただのブームでない”栃木県サッカーの歴史を感じました。例えば80年代前半には今市高校が華麗な攻撃サッカーで高校選手権を沸かせたこともあります。日本代表選手としては宇都宮学園出身のFW黒崎久志が有名です。
 この試合、栃木は0-2で敗退しました。完全な力負けでした。ロッソは昨季、Jリーグ入りを目指しつつも5位に終わったクラブ。今季はDF上村健一(33歳。元・広島など。アトランタ五輪代表)を獲得するなど、「背水の陣」という感じでした。
 栃木は第8節のFC岐阜戦に続く2敗目。これで通算6勝2分2敗の5位(1位=佐川急便、2位=ロッソ、3位=FC岐阜、4位=YKK AP)。栃木ファンの中には怒っている人も多数いました。ふがいない展開に「勝ち負けの問題じゃない。走れ!」「足がつっても走りきるのが栃木のサッカーだろ!」など、魂がこもった叫び声がありました。
 改めて、さすがは「サッカー熟知県」だと思いました。でも、その一方で現在の成績は冷静に見れば順当ともいえるのに……とも。サッカーを知っているなら、頑張ろうにも何もできないふがいなさはわかると思います。実際、栃木の選手の中には試合後、ロッカールームの外で、頭を抱えている選手が複数いました。
 だからこそ、未来を感じました。クラブの代理で言い訳を書くつもりはないですが、例えば、栃木は練習が「夜」中心です。地域リーグの長野パルセイロ、ツエーゲン金沢などが「昼間」練習に切り替えている中、ベストの強化方法を実施できていません。プロとアマチュアが混在するチームとして、“栃木なりに”現状=限界なのではないでしょうか。
 と書きつつ、JFLは長期戦ですから、まだまだ栃木には可能性はあると思っています。ロッソ、FC岐阜に比べると、栃木の方がはるかに経験豊富です。高橋監督ならではの手腕に期待したいです。

PS Jリーグを目指す他のクラブの動向
JFL アルテ高崎
 5月6日 第10節 ホームでホンダFCに1-2で敗退。18チーム中17位。

JFL FC岐阜
 5月6日 第10節 アウェーで横河武蔵野FCに1-1の引き分け。3位に後退。新参者の連戦ゆえの疲労か。

関西リーグ FC Mi-Oびわこ草津
 5月6日 第4節 三洋電機洲本に8-1で勝利。4連勝で首位。

中国リーグ ファジアーノ岡山
 5月6日 第5節 レノファ山口に3-0で勝利。通産無失点で5連勝の首位。“強すぎ”です。

北信越リーグと九州リーグは5月5日&6日の週は休み

<写真説明>5月6日、ゴール裏スタンドの栃木ファン

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